植物園「 槐松亭 」

バラと蘭とその他もろもろの植物に囲まれ、野鳥と甲斐犬すみれと暮らす

食べ物屋と屏風は、広げると倒れる

2020年01月16日 | 時事
「いきなりステーキ」が、大量閉店に追い込まれているそうでありますな。急激な拡大路線と、同じ系列の店舗競合が原因だそうです。

 当然でしょうね。すでにあふれるほどの外食産業がひしめき、あの手この手で利用客拡大に腐心しているというのに、新たに出店すれば売り上げが増えると考えるのは愚かとしか言えません。最初の数店で成功し味を占めると、店舗ネットを拡大しようという野望が芽生えるのです。店舗数×既存店の売り上げ(利益)が会社の見込みの営業成績になるという単純な計算は成り立ちません。
 店舗数が少ないから、その人気店に利用客が集中します。店が増え、時が経つと、珍しさ、ありがたみも薄れ食べにくる人は減ります。
 店舗を増やすと、不動産の賃借料・店舗建設・什器設備費などの初期コストは莫大になります。償却費・設備費・借入利息などで、会社の利益を圧迫します。さらに、新規にスタッフを集めなければなりませんが、料理の技術から接客サービスにいたるまで、一定の水準に達するのはなかなか容易いことではありません。創業者・経営者の目が届きにくくなるので、不正や低レベルのサービス・提供する料理の品質の低下も避けられなくなります。
 特に、新興の個人でやっていたような飲食店であれば、大将(店主)がいつのまにか大きな会社の社長におさまり、会社の経営ノウハウもないまま、大きな流れに運ばれているような状況になります。それまで、鍋をふるい、包丁を握っているのが日常で、おかみさんが売上金を管理するという程度であった人が、資金の調達、販路の拡大、仕入れ先の選定、多数の従業員の指導、税務・経理などの業務をすべて責任を負い監督することになるわけです。

 当地でも、評判のイタリアンのお店がありました。パスタが美味しく、予約が無いとすぐに食べられないレストランで、よく利用いたしておりました。茅ケ崎に姉妹店を出し、鎌倉にも出店しました。ところが、いつの時点からか、その味が落ちてきました。パスタの茹で方、味付け、魚介類の鮮度、どれもが不ぞろいになり少しづつ足が遠のいたのです。
 すると、地元の情報に精通した方(ワタシ達は、ほか弁デカと呼んでいます)からの話では、「あっちに客が全然来なくてー、こっちの売り上げが全部そっちに持ってかれてバイトの給料も払えないんだって」というでした。新たに出店した鎌倉店の売り上げが低迷し、本店の経営を圧迫してアルバイトの給料すら遅配となっているの意味ですね。鎌倉と言えば一流の飲食店が挙って狙う人気エリアです。舌の肥えた地元客からはなかなか受け入れられないでしょう。他地域の何倍もの賃料もかかるでしょうね。

 そういえば、マスター(創業者)の顔色が優れず、あまり顔も見なくなっていました。
 次にその店に入ったら、以前からマスターシェフの助手をしていた若手の男の子が「マスターは辞めました。自分が後を引き継ぐことにしました」とのこと。それから2年ほどで、この人気店は閉店し今は不動産屋が入居しております。離れた客は戻らなかったのですね。

 最近見つけた「食パン専門店」が国道沿いにあります。食パンのみで一斤800円ほど。繁盛しており、2度行って2回とも、予約でいっぱいなので次の焼き上がりの予約で、と言われました。幸い一度はちょっと潰れてよけてあったのが残っていましたのでそれを買って帰りました。ほんのりと甘みがあるふわふわの食感で、人気なのも頷けます。しかし、これとても、慣れてくると飽きられたり、拡大路線の店舗展開で、味が落ちたりすればどうなることかわかりませんね。

昔から、食べ物屋さんは店を拡張したり、支店を出したりすると経営が悪化する事例が多いことは衆知であります。屏風も目いっぱい広げると前後に倒れるので、程よく折って自立させておきますな。

まぁ、余計なお世話といわれましょうが
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