・実施日時と場所 令和元年七月七日(日)午前11:00~午後2:00
新宿 珈琲西武 個室
・内容
①美津島明より 藤井厳喜氏「ケンブリッジ・フォーキャスト・レポート6月号」から
テーマ:米中経済戦争について
・チャイナは世界の通信覇権をアメリカから奪うべく、盛んに攻勢をかけてきた。その先頭に立っているのがファーウェイである。ファーウェイは英国旧植民地勢力(タックスヘイブン擁護派)と組んで、金融通信網の覇権も狙ってきた。
・ファーウェイは、海底光ファイバーケーブルの地球規模でのネットワーク構築を目指してきた。つまり携帯スマホの覇権だけを目的としていたわけではない。チャイナはこの海底光ファイバーケーブルに人民元決済のシステムを乗せることにより、米国のドル覇権を凌駕しようとの戦略を展開している。
・シティを中心とする英国タックスヘイブン養護派は、タックスヘイブンとしての香港を失いたくないので、香港の抗議デモを煽ってきた。これに対する習近平の妥協が、ロンドンと上海の株式相互上場の実現であった。
・1997年の香港返還に関して、一般に知られていない事実がある。それは99年間の租借で英国が香港に返還しなければならなかったのは、香港の新租界と呼ばれる地域だけだった、という事実である。香港の本体である香港島と九龍半島の先端部に関しては、99年間の租借地ではない。そこは純然たる英国の領土であって、英国は返還しなければならない理由はまったくなかったのだ。しかし英国は新租界のみならず,元来の自国領土である香港島と九龍半島の先端部分をチャイナに返還することを決定した。英国はタックスヘイブンあるであり、フリーポート(自由港)である香港で、イギリス企業が自由にビジネスを継続するために、香港全体の返還に応じたのである。この時点でイギリスは香港のデモクラシーをカネのために売り渡したのである。
・トランプ大統領が香港の抗議デモに冷淡なコメントしか寄せていないのは、抗議運動の背後に英国タックスヘイブン擁護派の金融資本の動きがあることを察知しているからである。
・習近平は「ファーウェイを擁護し、英国旧植民地勢力と組んで米国と対立する」のか、「ファーウェイを処分し、英国旧植民地勢力と断絶する」のかの二者択一を迫られている。
・米国は、江沢民派の人権弾圧に焦点をしぼり、江沢民派幹部の米国入国拒否や、彼らの隠れ資産摘発に動いている。米国務省と法輪功の協力関係から、それが読み取れる。
*これは、トランプ米国が、習近平チャイナに対して、「江沢民の次は、習近平、お前だぞ」という警告を与えていると同時に、「当方の要求を呑むならば、このあたりで勘弁しておいてやるのみならず、お前の権力闘争を有利に運ぶサポートをすることだってできるんだぜ」というメッセージを送っているものと解釈できます。なかなかの高等戦術です。
・世界のデータケーブルの中心はロンドンであり、これが英国のタックスヘイブン利権と英国の特権を支えていた構造であった。これは大英帝国の遺産であり、英国はこの特権に依存してきたが、タックスヘイブンをめぐっての時代の趨勢から、もはや、それが継続できなくなりつつある。
・英国のEU離脱強硬派は、上記の特権的地位を利用して、EU離脱が容易にできるものとタカをくくっていたが、それができなくなり、苦境に陥っている。
・6月29日(水)の米中トップ会談では、わずかながらではあったが実質的な進展があった。それは第一に米中経済協議の再開が決まったことである。
・詳細は発表されていないが、チャイナはアメリカからの輸入、特に農産物の輸入を再開することに同意した。トランプはこれにより、2020年大統領選における中西部の農民票を固めることが出来た。これは現行の制裁関税の引き下げなしに勝ち得た成果である。
・米企業のファーウェイへの輸出に関しては、原則としてこれを認める方向で検討する。ファーウェイ製品の輸入は禁止したままである。ただし、ファーウェイ問題は米中経済協議の最後まで課題として残すことになっている。米国の安全保障にとって深刻な要素がからんでいるので当然のことである。つまり、即輸出が再開されたわけではない。
・チャイナ側は、対米経済協議の早期妥結が不可能であることを悟って、持久戦を覚悟した。習近平は、トランプが大統領選挙の圧力で妥協すると楽観視しているようだ。
・チャイナはアメリカよりはるかに苦しいがいまだに余力がある「フリをする余力」ならある。
・大統領選挙でトランプが安易な対中妥協をすれば、むしろ支持を失うので習近平の楽観的期待は空振りに終わるだろう。
・米中両国は以上のように虚々実々の激しい駆け引きを展開しているが、これをまったく無視するかのように、日本大手企業の対チャイナ傾斜が続いている。安全保障上、日本はアメリカと一体となってチャイナの脅威に対抗しなければならないのは明白である。日本大手企業の対チャイナ傾斜は、アメリカの目には利敵行為と映る。日本企業は、アメリカの厳しい制裁措置を覚悟しなければならないだろう。