プエルトリコのデフォルト問題の核心とTPP問題の現状 (美津島明)
まずは、プエルトリコのデフォルト問題についての報道のされ方を見てみよう。
プエルトリコがデフォルト…債務総額8兆円超
(読売新聞 8月4日(火)10時32分配信 )
【シアトル=越前谷知子】米自治領プエルトリコは3日、債務の一部を支払わなかったと発表し、デフォルト(債務不履行)に陥った。
債務総額は700億ドル(約8兆6800億円)超で、米国の自治体では2013年に財政破綻したデトロイト市(債務総額180億ドル超)を大幅に上回る財政破綻となる。
プエルトリコは3日までに期限を迎えた5800万ドル(約72億円)の債務のうち、62万8000ドルしか支払わなかった。米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスのエミリー・レイムズ副社長は声明で「ムーディーズはこれをデフォルトとみなす」と表明した。
プエルトリコは高金利の「プエルトリコ債」を発行しており、米国の投資信託などが多く保有している。デフォルトに陥ったことにより、これらが償還されなくなる恐れがあり、金融市場への影響も予想される。
この記事を読んでみて、読み手に伝わるのは、プエルトリコが9兆円弱の債務不履行に陥ったこと、その規模は2013年のデトロイトを大幅に上回ること、米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスがこれを問題視していること、金融市場への影響が懸念されること、などである。
読み手は、当然のごとく、先日までマスコミがしきりに取り上げたギリシャの財政問題に連想が働く。そうして結局は「財政破綻」という不穏なマジック・ワードだけが頭に残るという仕掛けになっている。財務省としては、さらなる消費増税の実施にとってプラス要因となるわけだ。
そこで、次の動画を観ていただきたい。ほんの数分間なので、気楽に観ていただけるのではないか。
【国家主権】通貨発行権の返上と自由貿易の例外、プエルトリコとTPPで見えたもの[桜H27/8/5]
三橋貴明氏の明快なコメントによって、事の真相がやっと明らかになる。すなわち、プエルトリコとギリシャとをつなぐキーワードは、通貨発行権の不在である。両国ともに通貨発行権を持たないがゆえに、債務不履行問題に直面しているのである。だから、通貨発行権を持つ日本にとって、両国の「財政破綻」問題は対岸の火事にすぎない。両国の「財政破綻」と日本の財政事情をつなぐ共通項はまったくと言っていいほどにないのである。プエルトリコの通貨発行権を握っているのはアメリカである。だから、プエルトリコでは、正真正銘の米国ドルが流通しているのである。これらの事実をしっかりと述べたうえで報道しないと、なにがなんだか分からなくなり、不安だけがあおられる。
読売新聞の例に見るごとく、確固たる経済観のない経済記事は、根拠のない悲観的ムードを醸成するだけなので、一般国民にとって、百害あって一利なしである。
次に、TPP交渉の現状について。自民党議員から、政府は「譲歩しすぎ」という不満が続出している。議員たちは、おもにコメと豚肉などの農業産品の関税をめぐっての不満を述べていて、それはそれで妥当なものであるとは思うが、政府が「譲歩しすぎ」なのは、農産品の関税だけではない。
政府は実は、医療保険、著作権の非親告罪化、訴訟などの裁判制度見直し(ISD条項)などですでにアメリカ側に譲歩しているようなのである。
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-7375.html
(アメリカ以外の)交渉参加国には、交渉内容の秘密厳守が義務づけられているので、その詳細は分からないが、安倍首相が「とにかく妥結することを最優先する」という基本方針なのだから、譲歩の実態が、目も当てられないほどにひどいものであることは容易に想像できる。
そういう情けないことになってしまうと思っていたので、私は、かねてよりTPP参加には断固反対の立場でありつづけてきた。が、日本政府はこれからまだ交渉に臨む気でいるという現実を踏まえるならば、三橋氏が言うごとく、「これ以上の譲歩はしない。これ以上の譲歩を強いられたならば、交渉離脱をする」という国会決議なり閣議決定なりをしたうえで、これからの交渉に臨むべきであるというのは、建設的な意見であると考える。しないとは思うけれど。
また、ニュージーランド側の農産品に関する関税の完全撤廃の主張について、甘利経産相が「過大な要求」などと苦言を呈しているが、その主張は、自由貿易の本義に即したものなので、苦言の根拠が薄弱である、という三橋氏のシニックな指摘は、むべなるかなというよりほかはない。
しかしそれにしても、安倍首相は、一方では愛国者面をしておいて、他方では、グローバル企業に国を売るようなマネを平気でしている、という現実は残る。その点、彼が尊敬する小泉元首相とそっくりである。安保関連法案とのからみでの、媚中・反日勢力の対安倍ネガキャンとの対抗上、同政権を擁護せざるをえないのではあるが、こんなふざけたマネをされてしまうと、とてもつらい。
まずは、プエルトリコのデフォルト問題についての報道のされ方を見てみよう。
プエルトリコがデフォルト…債務総額8兆円超
(読売新聞 8月4日(火)10時32分配信 )
【シアトル=越前谷知子】米自治領プエルトリコは3日、債務の一部を支払わなかったと発表し、デフォルト(債務不履行)に陥った。
債務総額は700億ドル(約8兆6800億円)超で、米国の自治体では2013年に財政破綻したデトロイト市(債務総額180億ドル超)を大幅に上回る財政破綻となる。
プエルトリコは3日までに期限を迎えた5800万ドル(約72億円)の債務のうち、62万8000ドルしか支払わなかった。米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスのエミリー・レイムズ副社長は声明で「ムーディーズはこれをデフォルトとみなす」と表明した。
プエルトリコは高金利の「プエルトリコ債」を発行しており、米国の投資信託などが多く保有している。デフォルトに陥ったことにより、これらが償還されなくなる恐れがあり、金融市場への影響も予想される。
この記事を読んでみて、読み手に伝わるのは、プエルトリコが9兆円弱の債務不履行に陥ったこと、その規模は2013年のデトロイトを大幅に上回ること、米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスがこれを問題視していること、金融市場への影響が懸念されること、などである。
読み手は、当然のごとく、先日までマスコミがしきりに取り上げたギリシャの財政問題に連想が働く。そうして結局は「財政破綻」という不穏なマジック・ワードだけが頭に残るという仕掛けになっている。財務省としては、さらなる消費増税の実施にとってプラス要因となるわけだ。
そこで、次の動画を観ていただきたい。ほんの数分間なので、気楽に観ていただけるのではないか。
【国家主権】通貨発行権の返上と自由貿易の例外、プエルトリコとTPPで見えたもの[桜H27/8/5]
三橋貴明氏の明快なコメントによって、事の真相がやっと明らかになる。すなわち、プエルトリコとギリシャとをつなぐキーワードは、通貨発行権の不在である。両国ともに通貨発行権を持たないがゆえに、債務不履行問題に直面しているのである。だから、通貨発行権を持つ日本にとって、両国の「財政破綻」問題は対岸の火事にすぎない。両国の「財政破綻」と日本の財政事情をつなぐ共通項はまったくと言っていいほどにないのである。プエルトリコの通貨発行権を握っているのはアメリカである。だから、プエルトリコでは、正真正銘の米国ドルが流通しているのである。これらの事実をしっかりと述べたうえで報道しないと、なにがなんだか分からなくなり、不安だけがあおられる。
読売新聞の例に見るごとく、確固たる経済観のない経済記事は、根拠のない悲観的ムードを醸成するだけなので、一般国民にとって、百害あって一利なしである。
次に、TPP交渉の現状について。自民党議員から、政府は「譲歩しすぎ」という不満が続出している。議員たちは、おもにコメと豚肉などの農業産品の関税をめぐっての不満を述べていて、それはそれで妥当なものであるとは思うが、政府が「譲歩しすぎ」なのは、農産品の関税だけではない。
政府は実は、医療保険、著作権の非親告罪化、訴訟などの裁判制度見直し(ISD条項)などですでにアメリカ側に譲歩しているようなのである。
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-7375.html
(アメリカ以外の)交渉参加国には、交渉内容の秘密厳守が義務づけられているので、その詳細は分からないが、安倍首相が「とにかく妥結することを最優先する」という基本方針なのだから、譲歩の実態が、目も当てられないほどにひどいものであることは容易に想像できる。
そういう情けないことになってしまうと思っていたので、私は、かねてよりTPP参加には断固反対の立場でありつづけてきた。が、日本政府はこれからまだ交渉に臨む気でいるという現実を踏まえるならば、三橋氏が言うごとく、「これ以上の譲歩はしない。これ以上の譲歩を強いられたならば、交渉離脱をする」という国会決議なり閣議決定なりをしたうえで、これからの交渉に臨むべきであるというのは、建設的な意見であると考える。しないとは思うけれど。
また、ニュージーランド側の農産品に関する関税の完全撤廃の主張について、甘利経産相が「過大な要求」などと苦言を呈しているが、その主張は、自由貿易の本義に即したものなので、苦言の根拠が薄弱である、という三橋氏のシニックな指摘は、むべなるかなというよりほかはない。
しかしそれにしても、安倍首相は、一方では愛国者面をしておいて、他方では、グローバル企業に国を売るようなマネを平気でしている、という現実は残る。その点、彼が尊敬する小泉元首相とそっくりである。安保関連法案とのからみでの、媚中・反日勢力の対安倍ネガキャンとの対抗上、同政権を擁護せざるをえないのではあるが、こんなふざけたマネをされてしまうと、とてもつらい。
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