柔道は嘉納治五郎の功績により、いまや日本が世界に貢献するスポーツになった。
柔道の源流は日本古来から伝わる柔術にある。
この柔術を教育的観点から世界に通用するスポーツとして生み出していったのだ。
一方野球はどうかと言うと、明治5年アメリカ人教師ホーレス・ウィルソンによって伝えられた。
しかし本格的に日本国民の間に認められたのは、明治38年、「早稲田大学野球部米国遠征団」の団長として安倍磯雄がハワイ経由でサンフランシスコに向かって以来であろう。
嘉納治五郎は人口に膾炙しているが、安倍磯雄のことはあまり知られていない。
しかし彼の功績は「高校野球」、「社会人野球」、「プロ野球」を興す源流となった。
そして「日本野球の父」として称される存在となったのだ。
この辺の処は、丸屋武士著「嘉納治五郎と安部磯雄」に詳しい。
この著書の中での丸屋武士の二人の評価が極めて的確である。
嘉納治五郎と安部磯雄も、日本社会において21世紀の今日も抜きがたく支配的な「日本的精神構造」(日本的メンタリティー)、即ち「他者(外国人等)が自分たちより優れていることを認め(信じ)たがらない内向きでひ弱な精神構造」とは全く無縁の、「剛毅闊達な精神」の持ち主であった。
明治維新から150年、太平洋戦争が終わって80年近くたった。
この国を率いるリーダーたちからは独立自尊の気概が窺えない。
今や国力では中国に抜かれた事実に向き合わず、米国の後ろに隠れて(あるいは言いなりで)遠吠えするばかり。
中国にしても1900年前後の列強による国土の分割という屈辱を乗り越えている。
日本が何よりも求められているのは、「不断の努力と向上の精神」である。