《 空想から科学へ 》 奧菜主義革命~ 革命的奥菜主義者同盟非公然ブログ

奥菜恵さんは、精神と肉体の両方から無駄なものをすべて削ぎ落とし、必死に舞台に立っていた

中年はmegちゃんに手書きシナリオを見てもらいたかった

2009年08月22日 21時33分47秒 | Weblog
「この役はもう二度とできないよ」
 「打ち上げ花火」の時、僕は彼女にこんなことを言った。
 当時彼女は中学二年の十四歳。彼女の役は及川なずなという思春期の
女の子だった。思春期は人生の中でも最も特異で、しかも短い瞬間である。
彼女が二度と演じられないと言ったのはそういう意味だった。
 その後、テレビドラマや雑誌でみかける彼女はどんどん大人になってゆき、
こちらとしても寂しいような、嬉しいような、複雑な心境だったが、
去年都内の某所で、制服姿の彼女にバッタリ出くわした。
見違えるように変貌していなければならなかった彼女は、正直愕然とするくらい、
その背格好といい、雰囲気といい、なんにも変わっていなかった。
 「おいおい、全然変わってねえな!」
 久しぶりにあった第一声がこれじゃあ、本人さぞ傷ついたことだろう。
それはこの場を借りしてお詫びするとして、思えば彼女は昔からテレビには
大人っぽく映る子だった。「打ち上げ花火」のオーディションの時、
こんな子がいるけど、とプロデューサーが持ってきたビデオには
シャンプーのCMが入っていて、そこに登場する女の子はどう見ても  
十八かそこいらの立派な「女」だった。
 「いや、いくらマセてる役って言ってもこれは行き過ぎでしょ」
 ここで終わっていたら彼女との出会いはなかった。まあ、会うだけ会ってみてよ、
という一言で僕は奥菜恵と出会うこととなった。初めて見た第一印象は十八どころか、
中学二年というものでもなく、小学五年という感じだった。
 まあ、こんな正体不明な女の子は他にはいないということだけは確かだ。
 高校を卒業して彼女はきっとテレビや写真の中でどんどん成長して行くのだろう。
でも実物に会うとやっぱり全然変わらぬ奥菜恵に違いない。
 卒業おめでとう。

岩井俊二