広い広い海の真ん中に、私はいました。
今にも沈みそうな、壊れそうな小舟に1人。
早く岸に行かなきゃと思うけれど、
近くに見える陸には獣の影がいっぱい。
海には、サメの背びれも見える。
海ヘビがすぐそこを泳いでいるのも見える。
どうしよう。どうしよう。
どうしたら、安全な陸にたどり着けるんだろう。
必死に手で漕ぐ。
全然進まない。辛い。苦しい。
こんなに弱くちゃ、一人で子どもを育てられないよ。
こんなに不安しかなかったら、
潰れてしまうよ…。
どうして私だけ。
なんで私だけこんななんだろう…。
早く陸に上がって安心したいのに、
その方法が分からなくてわんわん泣いた。
泣いたらダメ、泣いても無駄と思いながら。
涙も涸れた頃、
ポケットに入ってるものに気が付いた。
大好きなお菓子。
もう食べちゃおう。
陸に上がって、お茶を入れて、
暖かい部屋で食べようと思っていたけど、
沈みそうな不安な船の上で、いま、食べちゃおう。
あぁ!美味しい!
大好きな味。
幸せな味。
今どこにいるかも忘れるくらい幸せな時間。
そうだ、歌も歌おう。
詩も作ろう。
好きなこと、今全部やってしまおう。
幸せだ。
幸せを感じることができる。生きてる。
あー、なんて幸せなんだろう!
不安定な足元のまま、幸せな気持ちで満たされたら。
周りを見渡してみて、あっと声を上げる。
サメと思っていたものは、
ぷかぷか浮いているブイでした。
海ヘビと思っていたものは、
岸から垂らされたロープでした。
獣と思っていたものは、
私のために集まったレスキュー隊でした。
こんなにも、私は守られていたことに気付く。
世界はずっと優しかったことにようやく気付く。
だったら私、頑張れるよ!
船を下りて岸まで伝って行こう!
そうして船を下りてみたら、
またあっと驚く。
なんだ、足が着く!
こんなに浅かったんだ!
こんなに浅くて何も怖くない場所で、
私は不安定な船に乗って、
不安に怯えて泣いていたんだな。
あはは、笑っちゃうね。
これが3年前の私。
岸に着いたら幸せになるわけじゃない。
今、ここで、
不安定な足元のまま、先に幸せになるんだよ。
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