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2013年7月30日
コスラエ州立病院内にて
在ミクロネシア日本大使館・コスラエ州保健衛生局間
「草の根・人間の安全保障無償資金協力」調印式
コスラエ州立病院内にて
在ミクロネシア日本大使館・コスラエ州保健衛生局間
「草の根・人間の安全保障無償資金協力」調印式
Hello everybody, my name is Atsushi Noba Sakane. “Noba” is my Kosraean Name.
スーパーバイザー会議で発表した3項目の最後の一つである「医療廃棄物焼却炉」の導入を図った。
2012年4月に着任挨拶にコスラエ州政府機関を廻っていたとき、病院長から焼却炉を何とかしてもらえないかと相談された。私も感染性廃棄物、注射器・針等の医療廃棄物は焼却処理がベストと考えていたので、早速導入方法を考えた。現在は野焼き又はドラム缶焼却に近い形での焼却が行われている。日本のダイオキシンを含む排ガス基準(ダイオキシン類対策特別処置法、大気汚染防止法、各自治体公害防止条例)をクリアーする助燃設備・通風設備を装備した小型焼却炉を計画した。
病院だけではなく、ごみの野焼きはここコスラエではどこでも日常的に行われている。しかし、その煙と臭いは「ごみを焼いているな」と直ぐに分かるほどひどい。ごみを燃やした方が量も減るし、腐るものもプラスチックも燃えてなくなるし、埋立地まで運ばなくても良いので、多くの人達が頻繁に行っている。
日本では法律で野焼きは禁止されている。理由はやはりダイオキシン類が問題になったからであろう。日本のダイオキシン類対策特別処置法・大気汚染防止法による規制値は:
ダイオキシン類濃度 O2=12%換算(ng-TEQ/m3N):5
ばいじん濃度 O2=12%換算(g/m3N):0.15
硫黄酸化物排出量(m3N/h):0.26
窒素酸化物濃度(mg/m3N):250
塩化水素濃度 O2=12%換算(mg/m3N):700
今回納入する焼却炉は、火床面積0.5㎡未満、焼却能力50kg未満なので、これらの規制の対象外であるが、このクラスの日本製小型焼却炉メーカーの排ガス実測値は、基準値を大きく下回る結果を得ている。しかし、野焼き・ドラム缶焼却ではプラスチック燃焼の影響もあり大きく上回る数値になっていると思われる(誰も測定していないので分からないが)ので、その排ガス値の差はびっくりするほど大きなものになる。例えると、数十、数百、数千、数万の焼却炉から出る排ガスと、1か所の野焼きから出る排ガスの有害成分の量は同じと考えても良いのではないだろうか。野焼きの黒い煙とあのプラスチックの燃える臭いを無くしたいと思う。コスラエ州立病院では、風向きによっては入院病棟までその臭いが届いた。
先ずは財源調査。高額の焼却炉を自主財源から捻出するのは難しいので、援助金を探すことにした。2012年5月に沖縄サミットが開催されミクロネシアからも資源管理局長が参加、その時に沖縄県の協力企業とも会ってもらい、沖縄県補助金の獲得を目指したが、諸事情により2012年8月断念。その後新たな財源として日本政府の「草の根・人間の安全保障無償資金協力」を申請することにした。2013年1月申請、7月承認、US$80,700.-。既設の建屋を流用することにしたので、現地工事に思ったより費用がかからなかった。既設建屋改造工事を計画・設計・見積するのに、フィリピン人土木建築技師とあれこれ現地調査をするのも楽しかった。そして第1番にお礼を申し上げたいのは、医療廃棄物の焼却処理の必要性を直ちに認識し、承認して頂いた日本大使館をはじめとする関係者各位である。何とか2014年3月中旬までの任期中に焼却炉の稼働を見たいと思っている。
技術的に悩んだのが、医療廃棄物専焼炉にするか混焼炉(一般廃棄物、医療廃棄物、廃プラスチック、廃油、廃タイヤ等)にするか?ディーゼル発電所からの廃油・自動車の廃タイヤ・一般家庭から出る廃プラスチックはコスラエ州でも処理に困っているので混焼炉を薦めたかったが、島嶼国では焼却を推奨しないJICA(J-PRISM=廃棄物管理改善支援プロジェクト)方針等もあり、最終的には、分別を徹底してもらうことを前提に、運転・維持管理が簡単で、費用も安い医療廃棄物専焼炉を採用した。今回採用した焼却炉は、電源にソーラーパネル+蓄電池を装備しており、停電時の運転も可能、電気代も節約できる。蓄電池は消耗品なので交換が必要となるが、現地(ポンペイ州)で市販されている機種を採用する予定。また、オイルバーナー着火・助燃もできるが、薪を使っての焼却もできる設計となっている。炉内耐火材は上質の物を採用しているので5~7年間はメンテナンスフリーを期待している。もちろん回転体(バーナー。ファン)・計装品の定期メンテナンスは必要であるが、必要予備品・消耗品は最初に供給してもらうことにした。
専焼炉の場合は保健衛生局から申請、混焼炉の場合は公共事業局から申請する約束だったので、本申請は保健衛生局の担当者と打ち合わせしながらの申請となった。
現在コスラエ州政府内経理処理中。ニュージーランドODAのトラックスケール、オーストラリアODAのガラス瓶粉砕機に続き、今回の日本「草の根」は三度目なので、できるだけ早く処理を終えるよう奮闘中。