『真実の檻』(2016、文庫は2018年発行)は冤罪をテーマにしたミステリーです。大学生の石黒洋平は母の遺品を整理中、本当の父親・赤嶺信勝が「赤嶺事件」と呼ばれる殺人事件を犯した死刑囚であることを知ります。事件について調べるうち、冤罪の可能性を指摘する雑誌〈社会の風〉の記事を見つけ、担当記者の夏木涼子に会いに行き、彼女を通して「赤嶺事件」の関係者や他の冤罪事件に関わって行きます。洋平の実の父親は無罪なのか、もしそうなら真犯人は誰なのか。当時のつじつまの合わない「証拠」を調べる一方で、死刑が執行される前に再審請求するよう赤嶺信勝を説得するという時間との戦い。
無罪判決が検察官の失点と評価される日本の制度の問題点に切り込み、冤罪が発生するメカニズムを明らかにします。テーマはヘビーですが、ストーリー展開がテンポよく進み、読者をぐいぐい引っ張っていく筆致が素晴らしいです。また、葛藤の末に誰かの犠牲の上に成り立つような平穏な生活ではなく、真相を究明することを選択する主人公の真摯さが感動的です。
参考文献の数は『闇に香る嘘』に負けず劣らず大量です。