徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:島田荘司著、『ネジ式ザゼツキー』(講談社文庫)

2019年01月14日 | 書評ー小説:作者サ・タ・ナ行

『ネジ式ザゼツキー』(2003、文庫は2006年発行)は御手洗潔シリーズ第19弾の長編。記憶に障害を持つ男エゴン・マーカットが書いた奇妙な童話『タンジール蜜柑共和国への帰還』の内容を脳科学者として御手洗潔が検証し、エゴンが「帰るべきどこか」を探り当てるばかりでなく、彼が関わった過去の事件自体も解明します。『タンジール蜜柑共和国への帰還』には蜜柑の樹の上の国、ネジ式の関節を持つ妖精、人工筋肉で羽ばたく飛行機などが描かれていたため、単なる幻想扱いされてしまっていましたが、御手洗はこれらの記述をなんらかの真実の描写であるとしてその謎を記憶のメカニズムその他の知識を用いて解いていくのが非常に学術的で興味深いです。

御手洗はこうした謎を自分の研究所を出ることなく、ネット検索と電話で解決してい待っており、以前のように現地に行って確認・検証するということはしません。これぞまさしくアームチェア・ディテクティブですね。

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