メカニック日記

メカニックです。仕事ネタから感じた事思った事など気まぐれに更新していきます…

ギガ…インプットシャフト交換。

2016-12-07 01:53:40 | いすゞ
前回の記事に書いたEXZ52ギガ…


もともとクラッチのオーバーホールで入庫してたんですが、作業の為ミッションを降ろすとまさかまさかのメンドラの先端が摩耗…


パイロットベアリングが入る部分が摩耗してます…


新品のパイロットベアリングを仮に入れてみてもやっぱりガタがあります…当然ですが。


で、このパイロットベアリングはエンジンとミッションを繋ぐインプットシャフト(通称メンドラ)の振れを抑制する為のものなんですが、そんな所にガタが出来れば当然、悪影響が出てきます…

インプットシャフトが振れると異音やクラッチジャダーの原因となったり、他のベアリング類に負担がかかり最悪破損する可能性も…

特に今回の車は重量物を牽引するトラクターなのでミッションにかかる負担も大きいでしょう…


こんな状態を見ちゃうと知らなかった事には出来ないですよね…

そんな事もあり、追加の見積りとこのまま組んだ場合のリスクなどをお客様に説明してたのが前回時の話で…

勿論、お客様がリスクを承知でこのまま組んでくれ…と言われれば組むつもりでしたが、結果的に修理する事になりました。
どうやらこの車は夜間輸送に使用する車両らしいので途中で走行不能になったらシャレにならないみたいです…(^_^;)


で、昔みたいなメインケースが箱型のミッションだったらインプットシャフトの交換ってすごく簡単に出来るんですが…最近のトラックはアルミケースの採用が主流で剛性面からも筒型のミッションが殆どです。

そんな筒型のミッションでインプットシャフトを交換しようと思ったら…メインシャフトやカウンターシャフトも引き抜かないと交換出来ないんです…


つまり…

手間がかかります。


では作業を…

昨日のうちに部品の注文と補記類の取り外しまではしておいたので、今日からが本格的な分解。

このサイズのミッションは…とにかくデカくて重い。

ミッション立てるのも一苦労で…



基本的な構造は小型のミッションと変わりませんが、仕様上レンジ切替やスプリッター変速があるのでその辺りが通常のミッションとは異なります。

レンジ切替用のエアシリンダーなどを取り外して…

ピストンも抜き取り。


インターロックプレートなども外して…


サイドカバーも取り外し。



レンジケースとアウトプットシャフトなども…



リバースアイドルギヤを取り外す為にシャフトを抜こうと思ったら…


めちゃくちゃ固い…
抜けどめのプレートが付いてる位なのでてっきり手で抜ける程だと勝手に思ってましたが抜けません…

真ん中にボルト穴があるのでスライドハンマーで抜こうと思ったらこのサイズが無く…
仕方なく作る事に…

と言ってもスライドハンマー用のナットとボルトを溶接するだけですが…




シャフトに取り付けて抜き取り。





更に分解…



ここでようやくメインケースも抜き取り…





メインシャフト、カウンターシャフト、インプットシャフトをセットで抜き取り、更にインプットシャフトを分離させシンクロナイザーなども取り外し。
手がベタベタだった為分解後の写真しかありませんが…




しかしデッカいカウンターシャフトだな…(*_*)


画像だと対比する物が無いから分かりづらいと思いますが、今まで自分が整備した中でダントツにデカイです…笑

インプットシャフトからベアリングとギヤ類を抜き取り。




インプットシャフトのシンクロやニードルも交換する為に分解…




と、ココでやっちまった…

シンクロのリングを留めてるスプリングを1個外し忘れてるのに気付かずリングを取ったら…


あぁ…スプリングが…(T ^ T)
急いで注文するも翌日入荷…

コレで今日はインプットシャフトは組めなくなりました…泣


なので他の事を…
インプットシャフトに組むギヤユニットのニードルベアリングを交換。


新品のニードルベアリング。


ギヤオイルたっぷり塗って組み付け。



更にメインシャフトとインプットシャフト接続部のニードルも交換…


しようと思ったら部品が来てない…


アレ⁉︎俺頼んだよなぁ…と思いつつ、部品商に確認。

すると、もう配達してあるはずです…との返答が

もう一度部品の箱を確認すると…


え?まさかコレ1個だけ⁇

正直…この時点で薄々気付いてはしてましたが…


再度、部品商に電話‼︎
自分『ニードル1個しか来てないんだけど…』

部品『え…⁉︎ 1個の注文しか聞いてないですけど…⁉︎』

自分『…… 。』

もう分かる方には分かると思いますが…



自分は注文する部品点数が多い場合は部品図に丸を付けてFAXするんですが、画像の赤丸が問題のニードル…


この図で見ると、いかにも個数分セットみたいな番号の表記でしょ⁇

でも来たのは1個…


どうやら単品で供給されているみたいで…




いや…そりゃあ確認しなかった自分も悪いですよ…

ただ、部品商も発注かける時に使用個数が出るはずだし…
確かに1個とは言ったけどそれはセットで1個って意味で伝わってるものとばかり思ってましたが…
気の利く部品商なら一言聞いてくるんだろうけど…

にしてもあの図面も悪意があるよなぁ…
1個だけ換えるなんて状況はまずありえないし、換えるなら全数換えるだろうに…

どっちにしても今から注文しても翌々日しか入荷しないのでニードルは再使用する事に。



新品のインプットシャフト…
約12万…


ニードルを入れて…




スナップリングで固定。


シンクロの部品がまだ来てないので、先にクラッチハウジング側の細かい作業をする事に。

クラッチフォークシャフトのベアリングを抜き取り…


新品のベアリングとダストシールを入れます。

簡易的なブッシングツールを使います…
単なるボルトとワッシャーとナットですが。


ここのベアリングは叩いて入れるとロクな事になりませんから…


ダストシールも入れて…



左右共に交換した所で今日は終了…
続きはまた明日から頑張ります。



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フォワード…車検。

2016-11-22 23:34:28 | いすゞ
TKG-FRR90フォワード…

車検で入庫です。



内容はスタンダードな内容で、エンジンオイル、エレメント類、ベルトに、下回り塗装など…


まずは足廻りをバラして…
ベアリングを洗浄しがてら…


エンジンオイルやオイルエレメントなどを交換…

コレ…ヘッドカバーにオイル量11.5リットルって書いてあるけど実際に11.5リットル入れると多いんだよな…
確実にFULLライン超えます…


内部のオイルが抜けきってないのか…
それとも単にウチのメーターが壊れてるだけか…笑


燃料フィルターも交換…


しかしこの4HK1になってから整備性は悪くなりましたね…
燃料フィルターも定期交換部品なのに…
作業しづらい…という事はミスが起きやすいという事に繋がりますから…
設計の段階でもう少し考えてくれれば…

ヒューマンエラーが極力起きないような設計をする事も設計士として大事な仕事だと思うんですけどね…

整備書だとベンチレータ外してフューエルパイプ外して…となってますが、そんなとこまで外さなくても交換出来ます…
外すとゴミが入るリスクが増えますので。


燃料フィルター交換時はセジメンターエレメントも清掃…とも書いてありますが、紙フィルターなので交換。





更にベルト類の交換。



PCVフィルターも…





更にエアーエレメントも交換



ブレーキフルード交換…





クラッチオイルも交換。





下廻り塗装など…



こんなとこに工具箱付けたらバッテリーの点検しづらいんですけど、FAR EASTさん…


最近はバッテリーテスターが色々なメーカーから出てますが、どんなに高性能でも液量と比重測定に勝る点検方法はありませんから…


最後に各データをチェック…
やっぱり診断機により強み弱みは差がありますね…



アクティブテストは断然GSCANのが豊富ですが、作業サポートはTPM…
DTは最近アップデートしてないのでちゃんとしないと…




1つ気になった事…


トランスミッションタイプがATになってますが…







この車マニュアルなんですけど…


みまもりくんは大丈夫なんですかね…いすゞさん⁉︎






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4JG2…O/H。その7

2016-10-18 06:26:15 | いすゞ
先週の続きを…


バルブのラッピングやステムシール等の取り付け。




で、いきなり失敗…

バルブスプリングシートを入れる前にステムシールを打ち込んだら、シートが入らない…泣

このエンジンは先にシートを入らなきゃいけないのね…
知らんかった…

一回打ち込んだステムシールがキレイに外れる訳もなく…
ステムシールを急いで再注文。
昼前には届くと聞いてひと安心…

朝から何やってんだか…


という事でバルブの組み付けが出来なくなったので他の作業をする事に。

ロッカーシャフトの組み付け…
アームとホルダー以外は再使用します。





更にオルタネータやオイルクーラーなどの取り付け…







各部品の洗浄をしてたらステムシールが入荷したので早速組み付けを…







バルブの組み付けも終わったのでシリンダーヘッドをブロックに乗せていきます。



ヘッドガスケット取り付け…


天井クレーンでシリンダーヘッドを吊り上げて…


ドッキング。


ヘッドボルトを締め付け。
1回目は49Nm…
2回目は60°〜75°…
3回目も60°〜75°…

角度は真ん中辺りの67°で締め付け。





更にロッカーシャフトを組んでバルブクリアランスの調整。




IN、EX共に0.4mm…

このIN.EXで同じクリアランスの場合はINはキツめの0.4mm…
EXは緩めの0.4mmに調整。

EXの方が高温になるのは間違いないですから…
それなのに同じ0.4mmってのは個人的にはどうかと思います。

タペットカバーも取り付けて…


インマニ、エキマニも取り付け。




更にインジェクションパイプなども組んで、ホースなども付けます…




カバー類も取り付けて…


ブラケットやファンやらベルトやらも取り付け…






エンジン単体での補記類の取り付けも全て終了…







天井クレーンで吊る準備をしておき…
後は車載です。

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4JG2…O/H。その6

2016-10-15 21:01:17 | いすゞ
4JG2の続きです…

一カ月以上も話が進まなかったのですが…

結論としては…クラックの入ったヘッドをそのまま使用する事になりました。
長らく説得を続けてきましたが…残念ながら理解を得られませんでした。

当然、組み付け後の保証は一切無い事も了承済みです。
前代未聞なので正直どれ位もつのかも未知数ですが…
1週間で壊れるかもしれないし1年持つかもしれないし…
最悪、組み上げ後の始動時に壊れる可能性もゼロではありません。
とは言え、水圧テストには合格したものの燃焼室にクラックが入ったシリンダーヘッドを組む訳ですからどれ位もつのか興味が無い…と言ったらウソになります…


この4JG2も長い事続いているので何故この様な事になったのかはカンカンエルフから4JG2シリーズをお読み下さいませ…笑


まあどんなに理想的な選択肢があっても商売である以上お客様の同意が無ければ作業出来ませんし、他の選択になったとしても割り切るしかありません。


では作業を…

まずは現在エンジンスタンドにセットしてある3LD1を降ろして、再度4JG2をセットします。

現在、見積り承認待ちの3LD1。





4JG2をスタンドにセット。





仮付けされていたオイルパンを取り外してストレーナ一体型のオイルポンプを取り付けていきます。


オイルパンを組み付ける為にフロントケースを取り付け。



エンジンをひっくり返してオイルパンの取り付け。


必要な箇所にボンドを塗り、オイルパンを取り付け…





またまたひっくり返してタイミングベルト関係を。
OHVなのでヘッドを組み付けなくてもタイミングベルトは組めます…


カムシャフトリテーナを取り付けて締め付け。
回り止めの為、カムロック用の穴にハイテンションボルトを入れて締め付け。
カムシャフトのセンターボルトの締め付けトルクは108Nmなのでハイテンじゃないと負けます…笑


アイドルプーリー、テンショナープーリー、カムスプロケットなどを取り付けてタイミングベルト組み付け。


クランクを回して各タイミングの確認。



更にウォーターポンプ取り付け…るんですが、まずは塗りたくられたボンドの掃除。


ボルト穴にもベッタリと…
コレは元々付いてたウォーターポンプ。


この4JG2のウォーターポンプはOリングが入っているので本来ならボンドを塗る必要はないんですが…
たまにいるんですよ…塗るメカニックが…
掃除が面倒なのでやめて欲しいんですけどね…

心配性なのか分かりませんが、ボンド塗らなくてもキチンと組み付ければ漏れませんから…


で、新品ウォーターポンプを取り付けて規定トルクで締め付け。

自分は基本的にエンジンO/H作業では全てのボルトを規定トルクで締め付けます。
そんなトコまで⁉︎…と思う様な所も全て。
指定トルクが記載されてない箇所はそのボルトの適正トルクで締めます。

せっかくO/Hするなら手組みのメリットを生かして出来る限り精度を上げて組みたいですからね…
まあ今回はシリンダーヘッドに爆弾を抱えてますが…
だからといって他の箇所を手を抜く訳にはいきません。

ウォーターポンプを取り付けたらタイミングベルトカバーの取り付け…


クランクプーリーも取り付け。



後はヘッドの組み付け準備を…
ロッカーシャフトは曲がってなかったので再使用で、ロッカーアームやホルダーは新品です。




折れたロッカーアーム…これが異音の原因です。


新品のロッカーアームとホルダー。





と本日はココまで。

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4JG2…O/H。その5

2016-10-02 09:51:42 | いすゞ
久しぶりの4JG2ですが…


正直、モメてます…笑


以前の記事にて組み上げていく段階でシリンダーヘッドのバルブシート間にクラックがある事が発覚したのでお客様に交換の必要性を説明してたんですが…

新品のシリンダーヘッドとバルブで約25万と高額な追加になってしまう事になかなか承認が下りず…

お客様が一時はクラックの入ったシリンダーヘッドをそのまま使ってくれ…と。
それで壊れてもそれはこっちの事情だから…とまで言ってたんですが…

さすがに燃焼室にクラックが入ったシリンダーヘッドをそのまま組めば、いずれ壊れるのは目に見えてる訳で、壊れてもいいから…と言われても、部位が部位だけにハイ分かりました…なんて無責任な事は出来ないので、交換の必要性を根気よく説明してたんです…

それでもやっぱり高額な追加がネックらしくなかなかO.Kが出ず…
なのでこちら側も新品シリンダーヘッドと新品バルブは仕切り価格での提供とヘッド交換工賃などはサービス…
エンジン屋さんにもクラックが入ってた事を説明して今回の研磨と水圧テストの作業料をサービスしてもらい削減(コレは当然…⁉︎)
なんとか当初の見積り金額との差額を縮めて再提示したところ担当者さんには納得して頂けました。

が、残るはその担当者さんの上司の許可が必要との事で現在その承認待ちの状態です…



ただ、現在はブロック側もクランクシャフトを組み付けた段階で止まっており、長期間バラした状態だと気になるのはやっぱり錆…
外した部品全てに油膜を張るのは現実的じゃないし、外気に晒されてるとゴミやホコリも付くので…
特にムービングパーツの錆だけは避けたい事もあり、空いた時間を見つけピストンなどを組み付ける事に…


まずは重量合わせ。
ピストン、ピストンピン、コンロッド、ピストンリングなどの腰上の重量を合わせていきます。



今回はライナーキットで交換するのでライナーに合わせピストンとピストンピンも新品です…

何故、重量を合わせるのか?と言うとエンジンは1分間に何千回転も回っており、クランクシャフトのような重量物を燃料と空気の混合気を爆発させた衝撃で回転させてる訳ですが、そんな重量物が物凄い力で何千回転も回る時に最も重要なのがバランスで…

腰上(ピストンやコンロッド)の重量バランスが悪いと低回転では分からなくても回転が上がるにつれ振動が出て、やがてサージングという異常振動を起こして最悪の場合はエンジンが破損する事も…

重量を合わせてバランスをとる事でエンジン破損を防ぐ為は勿論の事、回転ムラが無くなりエンジンがスムーズに回ると、各部にかかる負担減による耐久性向上や結果的に燃費向上などにも繋がってきます。
それに量産エンジンは生産効率重視なのでトルク管理も含め、細かいところの調整は結構アバウトなんです。

そんな理由もあり重量合わせを行います。


まずはピストンやコンロッドなど個々の重さを計ります…







それぞれの重さを記録しておき、数字上で計算して理想的なバランスの組合わせを考えるんですが…

まず困ったのが新品ピストンの重量の誤差。




この2つのピストンで既に3.5gの誤差…

写真を撮り忘れましだが1番のピストンは791.5gで上の写真にも写ってる2番のピストンは786.5g…

この時点で5gの誤差があるんです…


この…腰上で5gの誤差を合わせるのは結構大変な事で…
整備書では全体での重量差は3g以内…となってますがピストンだけで既にアウト。

量産車のエンジン部品の精度なんてこんなもんでしょうけど…


コンロッドは再使用なので位置は変えられないし、ピストンリングも合口調整済みの為、実質ピストンピンかスナップリングでこの誤差を埋めるしか無いんですが、ピストンピンとスナップリングで5gの差が無くなる訳もなく…

組合せを色々と考えても、誤差3.5gが限界。

仕方なくコンロッドを少し削る事に…
プレス金型の繋ぎ目部分や新品時に削ったであろう角などを、ベルトサンダーで削ります…




画像だと光の当たり具合で物凄い削った様に見えますが、実際には表面をサラッと削った程度です…笑

で、トータルでの重量を確認…




結果的にトータル重量は…

1番が2434.5g
2番が2434.0g
3番が2434.5g
4番が2433.5g

という結果に。

1gの誤差はありますが基準の3g以内には入っていますので今回はこの辺で…

ちなみにV型エンジンだと重量合わせももっとシビアで、更に高い精度の秤が必要です…


重量合わせも済んだらコンロッド、ピストンリング等を組んでブロックに組み込み…










コンロッドキャップの締め付け…
29Nmで締め付け後に45〜60°の角度締め。
ちなみに整備書ではコンロッドキャップの締め付けトルクが2.9Nm+45〜60°と間違った記載になってます。
本来は29Nm+45〜60°が正しい数字です。
まあ2.9Nmを信じる人なんかいないと思いますが…


この角度計付きのトルクレンチは便利です…
角度の積算も可能なので1ストロークで目標角度まで締める必要もありませんし…
今までのアナログ角度計での作業からすると効率、正確性も格段に上がりますね…




ココまででまた作業は一旦ストップです…
錆びない様にマスキング処理とオイルパンを仮付けして終了です…





それにしてもこの4JG2のオイルパンは不恰好だなぁ…
当初の設計より油量が足りずにオイルパン容量を無理やり増やした…みたいに感じるのは自分だけでしょうかね⁉︎…笑
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フォワード…噴射ポンプ交換。

2016-09-24 19:06:38 | いすゞ
KL-FSR33フォワード。

排ガス規制ギリギリの列型噴射ポンプのフォワードです…

走行中に突然エンジンが止まって再始動不可能に…その後何度かセルを回していると始動出来た…との事。

今現在はエンジンの始動も吹け上がりも全く問題無く、試運転しても不具合は出ません…
燃料のエア噛みも無さそうです。
噴射機構は機械式なので現在は全く問題無い事を考えるとメカニカルな不具合では無いかと…
ガバナーやタイマーは電子制御なのでその辺りの不具合の可能性が高そうです…

ただ、電子ガバナーやタイマーは単体での供給はありませんのでASSY交換となってしまいます。


お客様には現状の説明をして、このまま少し様子を見るか噴射ポンプを交換するか…の返事待ちだったんですが…



噴射ポンプを交換する事に。


エンジンは6HH1で6気筒…
この噴射ポンプがめちゃくちゃ高いんです。
新品だとポンプだけで100万するので…

車の年式から考えて新品はもったいないので、今回はリビルト噴射ポンプにて対応。

リビルトとはいえ、値段は60万〜となっています。
リビルト品は中古部品をオーバーホールして新品同様の性能まで復活させた物で、コア…と呼ばれる外した部品を返却する事で新品に比べコストを抑えているんですが、その返却したコアの状態にリビルト品として致命的なダメージがあると追加料金が発生する事もあるんです…
なので値段も60万〜となっています。


周辺部品を取り外して…




機械式なので噴射時期の合いマークを合わせて本体の取り外し。


コレも結構な重量物なので天井クレーンにて吊り上げ…




リビルト噴射ポンプ…


再度吊り上げて組み付け。




あとは外した部品を組み付けて燃料フィルターを交換して完了。




交換後のエンジンも特に不具合も無く…
というか交換前から不調は感じられなかったので修理した感はまるでありませんが…

納車して完了。



お次はレンジャー。

2年前に交換したEGRバルブがまたもやご臨終なので交換…




原因はカーボンの蓄積による固着…




新品のEGRバルブ。





このEGRバルブも形状が変更されてますね…









最後にEGRバルブが正常に始動するかの確認をして終了です。




更に今度はジムニーのリフレッシュ整備の見積り…

オーナーさんはここで奮起して長年乗ってきたジムニーのフルリフレッシュをするかどうか考えてるようで…


軽自動車なのに本格的なラダーフレーム構造はオフロードの走破性も高くいまだに根強い人気車種ですね…




走行9万キロで水漏れやオイル漏れも見受けられます…




トランスファーからもオイル漏れ。



オーナーさんは全塗装も視野に入れているそうで…鈑金塗装屋さんにも見積りを依頼。

リフレッシュはその車をもっと永く乗りたい…と思うオーナーさんの覚悟や愛があっての作業なんですよね…
理想が幾つかあっても実際には金額が予算オーバーだと泣く泣く手放すケースも多々あります。

なので個人的には先にオーナさんの予算を提示して貰うようにしてます。
その限られた予算の中でできる限りのリフレッシュを行うような見積りを出させてもらいます…

やっぱり"一車好き"としてはその車に永く乗りたいと思う気持ちを汲んで、なんとかしてあげたいと思うんですよね…





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4JG2…O/H。その4

2016-09-17 00:00:26 | いすゞ
前回の続きですが…

他の仕事の段取りもあり、基本的にこの4JG2の作業はかかりっきりにはなれず、飛び飛びになるのでなかなか進みません…




まずはタフトライド処理されたクランクシャフトの被膜点検。
タフトライドとは表面硬化処理の一種で耐摩耗性などの向上やカジリ防止効果もあるそうで…
過去にレース用のエンジンにタフトライド加工してるケースは見た事ありますが…

金属の表面にタフトライド層という被膜を形成するんですがその被膜を点検しなさいよ…と整備書に記載されてます。
ちなみにタフトライド処理がされてる為、クランクシャフトのラッピングは不可となってます。

で、この被膜を点検する為に塩化銅アンモニウム溶水という化学薬品が必要なんですが…
この塩化銅アンモニウムは劇物に指定されている薬品なので簡単には買えませんし取り扱いにも注意が必要です。
ただ、点検する為の塩化銅アンモニウムは希釈水で5〜10%ほどに薄めて使用するんですが、自分では作れないのでコレも指定の濃度で製作してもらいます…

その塩化銅アンモニウム溶水をクランクシャフトに垂らして被膜を点検。




この状態で30秒程待って色が変化しなければクランクシャフトは再使用出来ます。

色も変色しないので…
クランクシャフトは各部の径も含め問題無く再使用出来そうです。

で、クランクメタルも再使用は可能でしたがこの際だから交換する事になり…
ブロックとクランクシャフトに打刻してあるグレードからメタルのサイズを選定します。

全部1なのでブロック側は誤差が無い…という事。

クランクシャフトにも…










No.5ジャーナルだけ3。
このブロックとクランクシャフトの打刻を見て5種類あるサイズからベストなものをチョイス。
先に頼んであったので部品はもう来てます。




組み付け準備に入ります。
まずは先にタペットとカムシャフトを取り付け。



整備書にはタペット下面は球面になってると書いてありましたが届いた新品は目視では分からない程でした。


それに変わり旧品は…

やっぱりタペットも減ってたんですね…
画像だと分かりづらいかも知れませんがW字に摩耗してます。


タペットを取り付けて…


カムシャフトを挿入。


カムシャフトが抜け落ちないように適当な対策をして…



腰下の組み付けに入ります。
新品メタルを指定の場所に…





クランクシャフトを組み込み…


オイルクリアランスの測定の為、
プラスチゲージを全ジャーナルに。




キャップを取り付けて規定トルクで締め付け…



オイルクリアランスの測定…




1番広い所で…つまりクリアランスが1番狭い所で測ります。


全て基準値内に収まり良好です。
ゲージをキレイに除去して本締め…






エンドプレーの測定も…
0.1mmで問題無し。





そしてエンジン屋さんから戻ってきたシリンダーヘッド…


歪みがかなり酷かったそうで…
基準値ギリギリまで削っても完全には歪みは取れなかったそうです…
結果的に0.25mm研磨しましたが…

過去にオーバーヒートした可能性が高いですね…
というより良くヘッドガスケット飛ばなかったなぁ…
いや飛んでたのかも…⁉︎


水圧検査の結果は合格だったんですが…
歪みが酷かった事もあり、念入りにヘッドを点検してたら…




げ…

1番と4番のバルブシート間にクラック入ってる…

マジか…

でもこれ…

今回の不調で入ったクラックじゃない可能性が高いんですよね…


ただ、このクラックを見ちゃうと交換した方がいい事は百も承知なんですが…
ヘッド交換となると金額が…

とりあえずお客様に現状の説明をする事にしますが…




エンジンの作業をしてるとこういう想定外の事はよくありますが、ここに来てのこのアクシデントは…


正直、胃が痛いっす…





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4JG2…O/H その3。

2016-09-15 01:18:06 | いすゞ
放ったらかしにされていたカンカンエルフの4JG2…

他の仕事がひと段落したので再開…


見積りはもう終わってある程度部品も揃っているので、作業を進めていきます。

と、言ってもまだバラし途中ですが。




クランクシャフトも取り外し。




メタルの当たり具合は良好ですね…
再利用も可能です。



まずはクランクシャフトの点検…
Vブロックにメタルとクランクシャフトを乗せて曲がりの点検。






結果、振れが0.02mmで問題無し…
ジャーナル径も全箇所基準値内で合格。

更にこのクランクシャフトはタフトライド処理がされてるらしく外したついでに被膜点検を行うんですが、点検用の薬品がまだ来てないのでそれは後日点検します。


で、前から気にしていたライナーの取り外し…
持っているシリンダーライナープーラーが使えなかったのでどうしようか色々と考えてたんですが…
純正SSTでアンクルだけ部品が出て在庫もあったので注文してたんです。
コレ…


ただ、これは専用のプーラーに取り付けて使うアンクルなので当工場が持ってる汎用のプーラーには使用出来ないので、アダプターを製作して対応する事に。
知り合いのいる金属加工会社に頼んで作ってもらったブロック…


フライス盤でものの10分で作ってくれました。
さすがプロは仕事が速いですねぇ…

そしてその横で旋盤を借りてライナーを圧入する時のプレス用治具を製作…
ついでにカムメタル用の治具も。




仕上げが荒いでしょ?
素人が削るとこんなもんですよ…笑
でもサイズはピッタリなので良しとします。
やっぱ旋盤はイイですねぇ…
SSTを製作するのには必需品です…

うちも旋盤欲しいなぁ…


で、会社に戻り先ほど削ってもらったブロックにナットを溶接して持ってるライナープーラーに取り付けれる様にします。


ナットを溶接。


こんな感じで汎用プーラーに取り付けて…


更にアンクルを取り付け。


コレでプーラーが使用出来ます…


さすがアンクルは純正なので食い付きもバッチリですね…笑
メチャクチャ固いですが順調に抜けてきます。





4本抜くだけなのに汗だくですよ…
ライナー抜くのも完全な重労働です。


特に固かった2番は見ただけで固かったのが分かるでしょ⁉︎ 笑



ライナーも抜けたのでとりあえずホッとしました。


次はカムメタルの打ち替え。
旋盤でカムメタル用の治具を作ったんですが実はコレも純正SSTの在庫があり、値段も7千円と安かったので頼んであったんです…



1度エンジンスタンドからエンジンを降ろしカムメタルの交換。


リヤ側のタイトプラグも外してカムメタルの取り外し。







取り外したカムメタル…


新品のカムメタル…


当たり面をキレイに掃除して打ち込み。
オイルポートがあるので打ち込む向きや位置が決まってます。




穴の位置が合ってるかミラーで確認。



前後共打ち込んで…


タイトプラグを付ける前にカムシャフトが無理なく回るかを確認します。
新品のカムシャフト…


挿入して…




抵抗無く回るかの確認。
当たり前の事ですがこの作業は絶対必要です…
この手のメタルは非常にデリケートなので打ち込む段階で変形しちゃうこともありますから。

スコッチブライトなどでメタル表面を軽く馴染ませておくといいですね…

カムシャフトが問題無く回ればタイトプラグの取り付け。



そして液体窒素が到着…

今回は15リッター頼んだのでマホー瓶もデカイ…笑

何に使うか?というとライナーの挿入。
整備書だとプレスで圧入となってるんですが…
このクソ重たいブロックをプレスで作業するのは危険なので冷却圧入する事にしたんです。

で、ひとつ懸念してたのがこの4JG2のシリンダーライナーは内側に特殊クロムメッキ加工がされてるらしく…液体窒素で冷やしても悪影響はないのか⁇…という事。

付き合いのあるメッキ屋さんに聞いても『特に問題は無いと思うよ〜』との事なので、それを信じて冷間圧入する事にしたんです…

ライナーも選定してありそれぞれサイズが違うので入れる場所を間違えないようにしておきます…


ブロック側もキレイにしておきます…



そして容器に液体窒素を入れてライナーをキンキンに冷やします…





こっからは写真撮ってる余裕はありませんので、いきなり挿入後の画像です…笑


製作した治具でキチンと入ってるかを確認…


俺のスナップオンが…笑



落ち着いてきたらライナーの突き出し量の確認。
基準は0.0〜0.1mmとなっており、結果は全気筒共0.0mmで合格。





更にシリンダーの内径を測定。
シリンダーゲージをセッティングする為にまずはマイクロゲージのセッティング。


マイクロゲージがセットできたらシリンダーゲージのセッティング…
この0点調整は非常に重要で、0.001mm単位での測定になるので基準となる0点のセッティングが合ってないと話になりませんから…
まあこのアナログ式のダイヤルゲージだと実際には目視で0.005mm位まで…頑張って0.0025mmまでが限界ですが。





ほとんどのエンジンで内径測定はシリンダー毎で3箇所2方向以上での測定が指定されてると思います…

指定の深さにマーキング。
見難いですがピンクの点がそうです。


測定…


基準は95.421mm〜95.460mmとなっており、測定の結果全ての測定ポイントで95.420〜95.435mmに収まっておりましたので…
お世辞にも精度の良いいとは言えない いすゞエンジンにしては上出来だと思います…笑


とりあえずクランクメタルの選定が遅れたせいで部品がまだ無いのでブロック側は一旦ストップして、ヘッドの作業をする事に…
ヘッドは水圧と研磨をエンジン屋さんにお願いするのでバルブ関係を取り外したところで本日は終了…





続きはまた明日です。









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4JG2…O/H。その2

2016-08-31 00:24:55 | いすゞ
今日も4JG2の続きです。


根本的な原因追究と交換部品の洗い出しです…



オイルパンを取り外し…


ストレーナ一体型のオイルポンプも取り外し。


ライナーのコーティングも剥がれ気味なので交換ですね…



ピストンは問題無さそうです…



で、ピストンを外す時にチラッと目に入り気になったモノ…


んん⁇

もしかして…



確認する為に更に分解。
タイミングベルト周りの取り外し…





ギヤも取り外して…




カムシャフトを取り外してよく見てみると…


欠けてるし…


カム山が…





センターが摩耗してます…


コレでバルブクリアランスが広がった原因も判明しましたね…

原因はカムシャフトの摩耗でした。



コレで納得です…

オイル管理が悪い為に油膜が切れてカム山が摩耗…その結果バルブクリアランス不良から運悪くバルブとピストンが接触…その結果、ロッカーアームが折れて異音が発生。
という結論に。


他のバルブクリアランスも大きくなっていたのでどこがなってもおかしくない状況だったようですね…


タペットは特に偏摩耗している様子はありません…




カム山との当たり面は凹凸になってますが、コレはどうやら初めからみたいです…
まあカムがあんな状態なのでタペットも交換しますが…


カムシャフト自体に曲がりはありませんでしたが、カム山が摩耗しているので再使用は不可能です。


カムシャフトのメタルも段付き摩耗してるので交換。




問題はシリンダーライナー…
おそらく乾式だと思うんですが、手で抜けるレベルではなくプーラーで抜かなきゃいけないんですが、持ってるライナープーラーが使えないんです…


正確に言うとクランクシャフトが邪魔で爪が掛からない…
正直、クランクシャフトは外さない予定だったんですが…




いっその事クランクシャフトを外すか…

SSTでも作るか…

どうしよう…



とりあえず部品の洗い出しは終わったので見積りの作成ですが…
この車もキチンとオイル管理がされてれば今回の修理は防げた可能性が高いと思います…
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4JG2…O/H。

2016-08-30 00:55:37 | いすゞ
前回の記事で書いたエンジンから異音がするカンカンエルフ…


原因を探るにしてもこれ以上はバラさないと進みませんよ〜…と話をしてたんですが…

特殊車両という事もありまだまだ使うので修理の方向でお願いします…と連絡があり、原因を探りつつ見積りも出していく事に。

で、お客様からの伝言でクラッチがスベり気味…という症状とエンジンオイルが減る…という症状もこの機会に直して欲しい…との事らしく…



どうせミッション降ろすなら…と作業性も考えてエンジンも降ろす事に。


ミッション降ろして…



エンジンも降ろして…



エンジンスタンドにセット。



このエンジンスタンドだとこのクラスのエンジンまでが限界かな…
重くてエンジンが前のめりになってます。


一応キャパは400kgだけど、いかんせんメイドインチャイナ…ですからね。
造りがちゃっちいんですよ…


エンジンとミッションも降りたので車両もジャッキダウン。
コンプレッサーやらパワステポンプなどを固定。






ピットから車両を引っ張り出す為です。
この手間をどう捉えるか…

多くの人はせっかくセットした車を降ろして出すなんて面倒臭い…って思うんですよね。


でも、今回のように長期作業でしかも車両側の作業が無い場合は1度ピットから出した方が工場としての回転効率は確実に上がるんです。
車両がリフトアップされて止まっているとそのピットでは他の車両を入れる事は出来ませんから…
それに比べ少し手間をかけてでも車両を出す事でそのピットには別の車両を入れて作業する事が出来ます。
それにエンジンの重整備は当然、降ろして単体で作業した方が整備性も良く確実です

限られたスペースをどう効率良く使うか…
常に考える事は必要です。

もちろんケースバイケースなので一概には言えませんが…
場所や人の問題もありますからね…


話が逸れましたが作業の続きです。
ヘッド周りをバラしていきます…


ヘッドカバー取り外し。

この状態を見るだけでオイル管理をちゃんとしていない事が分かりますね…


で、早速あのカンカン(パンパン…)という異音の原因が判明。


真っ黒で見にくいと思うのでパーツクリーナーでキレイにします…


ロッカーアーム飛んでるやん…



2番のエキゾースト側なので…
やはり音の原因はエキゾーストバルブが開かずに本来排気されるはずの排ガスが再度圧縮された所でインテークバルブが開き逆流…その音がカンカンと聞こえてたんですね…(自分はパンパンに聞こえましだか)←しつこい…笑


ただ、これは異音の原因であって問題は何故そうなったのか⁇…がこの修理の本質。


まず初めに疑うのはバルブクリアランス…
調べると計るまでもない程にオーバークリアランス…
目視でも2mm以上あるんじゃない?ってくらい。

E13Cのジェイクブレーキじゃあるまいし…

バルブクリアランスが広すぎてロッカーが割れた⁇

更にヘッドを降ろして見ると…





2番のピストンに薄っすらエキゾーストバルブが当たった跡が…


コレで何となくは説明がつきますね…

あくまでも仮定ですが…
バルブクリアランスが広くなり過ぎた結果、プッシュロッドの先端ボールがロッカーアームの淵に乗り上げてバルブリフト量が多くなりピストンと接触…本来ならバルブが曲がる所がロッカーアームの強度が弱く折れた…

まあ、いくつか腑に落ちない点もありますが、今の所はこんな感じでしょうか…。



問題は何故バルブクリアランスが広がったのか?ですが…

当工場には4JG2の入庫率低いので比較出来ないんですが、オイル管理が悪くてロッカーアームが摩耗した…?
アジャスターボルトはちゃんと締まってるので緩んだ訳でもなさそうですし…


まだ納得は出来てないので、もう少し調べてみる事にします…



とりあえずお客様の言う通りオイルも上がってきてるので、腰上はオーバーホールですね。


















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