前回の記事で少し書いた燃料に尿素水が混入してトラブルとなったプロフィア …
部品も揃ってきたので作業を開始。
症状としてはマフラーから黒煙が出る…との事でしたが、診断結果としては燃料タンクにアドブルーを誤注入した結果、サプライポンプのメカニカルシールがダメージを受け燃料にエンジンオイルが混入、燃料品質が著しく低下した事によるPM過多状態からのDPF内部溶損、結果的にマフラーから黒煙が出る…という判断に行き着きました。
入庫時に採取した燃料はこんな状態…
とんでもない色をしております。
前回時に燃料タンクも新品に交換して綺麗な軽油を給油してリターン経路をタンクに戻さずタンク外に排出する方法でリターン燃料を調べてあり…
給油した燃料がこの色に対し…
リターンしてきた燃料はこんな色…
この色の変化はエンジンオイルが微量ながら混ざる事によって起こったと思われます。
燃料にエンジンオイルが混ざる可能性がある所と言えばサプライポンプ以外にはありませんよね…
という事でまずはサプライポンプから交換する事に。
特に苦労する事無く外す物さえ外せば降りてきます。
取り外す時か取り付ける時どちらでも構いませんが1番の圧縮上死点は出す必要があります…
で、ポンプを外してギヤの組み替え。
こちらはリビルトのサプライポンプ…
ギヤの取り付け…
締め付けトルクは246Nm…
で、ポンプを取り付けていきます。
まずは1番の圧縮上死点を出します…
フライホイールの1/6のマークを合わせた時のギヤケースの切り欠きとタイミングギヤの山が合っているかで1番の圧縮上死点を確認…
ヘッドカバーを取り外しておらず、サプライポンプも外れてる時はココで1番の圧縮上死点が確認出来ます。
見にくいですがハウジングに切り欠きが作ってあります…
ポンプを取り付けてポンプ側のタイミング確認も…
こちらは確認用の穴と確認用SSTがあります…
SSTが無くてもタイミングの確認は可能ですがその場合パワステポンプを取り外す必要があります…
値段も数千円なのでE13Cのポンプ交換する時はあった方がいいSSTですね…
ポンプの確認用の穴にSSTを差し込み…
奥まで入ればタイミングはオッケー。
ちなみにタイミングがズレてると奥まで入りません。
規定トルクで締め付けます。
で、なんだかんだ取り付けてサプライポンプの交換は完了…
ちなみに燃料フィルターケースも新品に交換しました。
ココから少々脱線します…笑
取り外したサプライポンプ…
返却する前にどうしても確認したいので少々分解させて頂きます。
フィードポンプ部のシールを点検します。
サプライポンプのカムシャフト部にはエンジンオイルが供給されており、フィードポンプ側にオイルが侵入しないようにシールされてます。
キレイにしてみるも明らかな損傷は無さそう…
ただ、シールの中間部分は黒ずんでます…
オイルが侵入した跡でしょうか…
更にフィードポンプ側の燃料経路を見比べてみると…
心なしか吐出側の方が黒ずんでるように見えます…
カムシャフトのシール当たり部が爪でなぞると明らかに段付き摩耗しておりました…
この摩耗も本来こんなものなのか、それとも尿素水が混入した事によるものなのか…
どうなんでしょう…
見比べた事無いから分からないな…
とは言え燃料にエンジンオイルが混入する原因となるのはココのシール不良しか無いですからね…
まあ少々納得いかない事もありますがやっぱり尿素水が混入した事によるトラブルと考えるのが自然ですかねぇ…
とりあえずサプライポンプの交換は完了…
お次はDPFの交換に移ります。
サイドバンパーやステップ、デッキパネル等を取り外し…
ややこしく見えますがコレも取り外しに苦労する事はありません…
接続されている温度センサーや差圧ホース、尿素水インジェクター、フランジを切り離し、まずはDPR ASSYを降ろします。
それから尿素SCR触媒ASSYを降ろします…
まずはDPFの分解から…
酸化触媒入口側…
反対のフィルター出口側…
煤が酷いです。
表面に溶けた様子はありませんがフィルター出口側に煤が堆積してる時点でフィルター内部の溶損か破損により煤がフィルターを通過している証拠です。
基本的にはDPFはディーゼルエンジンの規制対象となるPM(粒子状物質)より細かい目のフィルターなので通り抜ける事は物理的にありません…
まあ正確に言うとナノサイズの微粒子であるSPMは通り抜けるようですが、規制の対象とはならない程の量のようですが…
色んな文献を読んでいて興味深いのはこのSPMがフィルター表面にスートレイヤーと呼ばれる層を形成する事で元の性能から更にフィルタリング能力を高めているという事。
つまり新品のフィルターに敢えてナノサイズの煤を堆積させる事で新品時より高いフィルター性能を発揮するという事…
考えた人は天才…いや、変態ですね…笑
下の画像を見ても分かるとおりハニカム状のセルの表面だけでは無く内部にも煤が付着してるセルがいくつかあるのが見えると思いますが…
その部分は煤がフィルターを通り抜けてしまってるという事です。
更にSCR触媒の方も分解して確認すると…
SCR触媒入口側は一部溶損しておりました。
出口側も当然ですが煤で真っ黒け。
これではマフラーから黒煙が出る訳です…
更にこんな状態では触媒の機能は十分に活かせないでしょう…
排ガスの後処理機構では…
エンジンから出た排ガスは酸化触媒を通り、その後DPFでPMが捕集されます…
最初の酸化触媒は煤の燃焼を促進する為の触媒で…
そのDPFでPMを除去された排ガス中に尿素水を噴射する事で加水分解されアンモニアが生成され…
そのアンモニアがSCR触媒でNOxと化学反応を起こし無害な窒素ガスと水に還元します。
更にSCR触媒で反応しなかった余剰分のアンモニアを大気に放出するのを防ぐためにアンモニアを酸化させるアンモニアスリップ触媒が付いてます…
触媒はハニカム状のセルに用途に合わせた物質を数種類コーティングしてありますが、そのコーティングされた表面に煤が堆積すると還元作用は明らかに低下します…
ましてやDPF以降の触媒では煤が堆積する事は想定外ですからね…
こちらが新品のDPR ASSY…
前側に酸化触媒、後側にDPFが組み込まれてます…
更に追加で注文していたSCR触媒も…
こちらも前側にSCR触媒、後側はアンモニアスリップ触媒が内蔵され一体となっております。
余談ですが、この触媒2点でお値段70万超えです…(-_-;)
まずはDPRの組み立て…
ちなみにこのマフラー関係を洗浄や交換する場合に必要となるガスケットやボルト類をまとめたキットがあります…
SCR触媒も組み付けて…
各フランジのボルトは規定トルクで締め付けます…
で、まずはSCR触媒を車両に取り付け…
更にDPRも取り付けます…
と、マフラーを取り付けた所で一旦終了…
長くなるので続きは次回です。