最近、地味に増えているオートコンの修理…
ウチは代理店でも専門業者でもありませんが、お客様が所有していたオートコン車の修理を訳あって自社で修理するようになってから少しずつ依頼が増えていき、今ではそのお客様経由で紹介して頂いた車両の修理なども入庫するようになりました…笑
症状は様々で…
チェーンが切れた、動きがおかしい、または動かないなど…
今回の車両は荷下ろし中に物凄い音がして動かなくなったとの事。
車両を預かり早速調べると…
見事にチェーンが引きちぎられており…
何か無理な力がかかり伸びて破断した…って感じですね。
切れた先のチェーンもスプロケに噛み込んでる…
更に切れた箇所も1箇所じゃないので嫌な予感はしてたんですが…
切れたチェーンを回収して長さを比べてみるも明らかに足りない…
このオートコンはモーターから駆動用のチェーンを介してスプロケットシャフトに繋がっており、そのスプロケシャフトに4本のチェーンが接続されてます。
その4本のチェーンと一体型のブラケットに床板が取り付けられておりフロア自体を前後にスライドさせる仕組み…
更に1番前のプレートは4本のチェーンを繋げる形で取り付けられています…
(↓これは別の車両の画像ですが…)
つまり4本のチェーンは同じ長さ、同じコマ数じゃないと機構として成立しません。
4本中切れたのは1本で切れたチェーンを繋ぎ合せても寸足らず…
嫌な予感は当たるもので、恐らく見えない部分で何かが起きているんだろうと一部床板を取り外して裏側を調べてみると床板がフレームに引っかかり玉突き事故を起こしておりました。
これでも引っかかっていた状態をかなり戻した状態です…
噛み込んだ床板を取り外すのにも苦労しましたが、何とか摘出…笑
もしかしたらコレが原因かもしれませんね…
この細い床板はアルミの押出材で厚みは約2ミリ。
両端に固定用の穴が開けてありますが、ここがよく割れるんです…
当然、床板を後進させていくと上側にあった床板は裏側に入り込んでいきます…
その過程で固定部が割れグラついた床板がフレームのメンバー部に引っかかり玉突き事故…
結果的にチェーンに無理な力がかかり切れる…
今回の状況から考えるとこんな原因だと説明がつきますね…
とりあえず切れたチェーンは再生させる事に…
このチェーンはブラケットが一体型の特殊なチェーンで、以前チェーンメーカーにこの仕様のチェーンの事を問い合わせたら既に廃盤となり供給不可との事。
まあいくらオートコンの製造元が無いからとは言え少々無責任な気もしますよね…
30年も前の代物ならまだしも2000年以降に作られている製品ですからね…
今尚オートコンを現役で使用しているユーザーさんが多数いる以上、補修部品の供給は製造メーカーとしての責任だと思いますけど…
個人的には最後まで責任が持てないんだったら作るなって話ですよ。
まあ私が文句を言った所で状況が変わる訳ではありませんけど…
ただ、お客様が困っている状況は何とかしたいと思うし、それを修理する事が我々の責任な訳です。
そんな訳で以前、付き合いのある業者さんに協力してもらいチェーンのブラケットを特注で製作してもらいました。
切れた部分やブラケットが曲がった部分など再生が必要な部分を選定し…
既製品のチェーンを分解して製作したブラケットを組み合わせながら再使用不可能な部分を再生させていきます。
こんな状態だったチェーンが…
復活します。
こうやって再使用出来ない部分を地道に再生させます…
更に再生したチェーンを元通り接続すればチェーンの修理は完了。
他にも怪しい部分のチェーンも交換。
ブラケットが付いて無い部分の交換はいたってカンタン…
で、チェーン修理後、取り外した床板を取り付けるんですが…
破損して再使用不可能な床板が数枚あるので当然、足りなくなってきます…
それを補う為に裏側に隠れている予備的な床板を取り外して表に持ってくるんですが…
今回は何とか足りましたがもう後が無い状況にはなってきてます…
足りなくなれば当然歯抜け状態になってしまうので…
これも遅かれ早かれ何とかしなくてはいけないという事で実はこの床板も代用品の製作を進めています…
押出材の為、同じ物を製作するのはコストを考えれば限りなく不可能なので…笑
こちらはよく破損するエンド部分のみを単体で製作して元の床板をカットし溶接して再生する方法で考えてます。
最後にチェーンが切れた事による為かストップ位置に大幅なズレが生じていたので修正。
このスライドする床も過巻きを防止する為に前進、後進共にある位置で自動で止まるようになってるんですが、そのギミックがなかなか面白い。
初めてオートコンを操作した時に作動ボタンを押し続けていてもある所にくると自動で止まるのを見てどこかにセンサースイッチが仕込まれてるんだろうなぁ…なんて思ってたんですが、実際に探してみるもセンサーらしき物はどこにも無く、どこで床の位置関係を認識してるんだろうと不思議に思ってたんです…
で、その時に仕掛けがどうなっているのかあちこちバラして調べました…笑
仕掛けとしては駆動モーターに入る電源線の前にこんな機械式のメーターがあり…
このメーターがベベルギヤを介して床板をスライドさせる為のスプロケットシャフトに繋がっており…
そのシャフトの回転数が一定の回転数に達すると回路を遮断するというなんともアナログな構造…笑
今の時代には珍しいアナログな方法に思わず笑ってしまいました…笑
でもこれ、全体的な前後ストップ位置の調整は簡単に出来ますが片側だけの調整は出来ないと思うんですよねぇ…
専用の仕様で作ってあるのか…
それとも中のギヤ比を自在に変更できるのかな…
まあ最悪コレが壊れても前後にセンサー付けて現代方式で修理します…笑
ただまあこの融通の利かないアナログ感も意外と嫌いじゃ無いですけどね…笑