まず、前回の記事について予想を超える反響が色々とあったので誤解を防ぐ為に説明を…
環境を変えようとしているのは事実でそのように行動はしていますが、今のところまだ会社に退職の意思を示した訳ではありません。
あくまで自分の計画の話ではありますが引き継ぎなども含めて年内いっぱいは現在の職場にいる予定です。
沢山の方からコメントやメッセージにて激励や厳しいお言葉を頂き大変嬉しく思います。
ありがとうございます。
また話が進み次第ご報告しますm(_ _)m
という事でブログはまだまだ続きます。
なんだかんだでこの最近の作業シリーズも21回目…
単発でのネタにはちょっと足らないちょいネタを集めたバージョンで、題名に困らないので便利です…笑
まずは車検で入庫した1軸タンクトレーラー。
引取り時にABSのチェックランプが点灯していたのでお客様に説明してそちらも修理する方向に。
今の検査基準ではチェックランプが点灯したままでは車検に受かりませんので修理が必要です…
まあ中には見て見ぬ振りする業者もいますが…
現車はEBS対応トレーラーで、このタイプから自己診断機能が無くなり、専用の診断機が無いと故障コードすら確認出来ないみたいです。
とりあえず診断機を繋ぎ故障コードを確認…
現在故障でホイールセンサーのハーネス断線のコードが…
という事で車検整備と合わせてホイールセンサーを点検する事に。
ピットに入れ足廻りをバラし…
ホイールセンサーを見てみると…
樹脂部が溶け落ちてる…
コレはブレーキが引きずって相当な熱がかかったと思われます…
反対側は大丈夫…
片側だけ引きずったみたい。
問題は何故引きずったのか…
点検するとブレーキシューのアンカー部がガタガタ…
Cリングも摩耗はしてますがそれ以前にシューのホールド部分が広がっちゃってます…
コレ実はBPW軸のブレーキシューにはたま〜にある症状だったりします…
国産と違いシューのアンカー部が半円状になってる為、強度が弱いんでしょう…
国産みたいに固着しないというメリットはありますが円状と半円では強度に差が出るのは間違いないでしょう…
ここが広がっちゃうと残念ながらシューの再使用は不可能な為新品のブレーキシューになっちゃいます。
ベアリング類も念入りに点検…
溶けたABSセンサーは取り外し…
とりあえず部品の手配。
普通は部品商や製造メーカーに問い合わせるのがスタンダードですが…
BPWの場合車軸ナンバーからその車軸に使われてる部品の特定が簡単に出来るのでコーションプレートの確認…
ここは色塗らないで欲しいな…
色剥がすの大変だから…笑
で、My BPWからパーツナンバーを特定…
そのパーツナンバーを部品商に伝えれば部品間違いが無く確実です…
で、部品の手配も終わりシャーシブラックを塗ろうとエアブローしてると衝撃的なモノが…
初めは腐食して表面が浮いてるだけかと思ったフレームが…
よく見ると完全な亀裂…
コレは恐ろしや…
これでは車検に受かりませんので修理が必要です…
補強材を溶接するのが現実的でしょうね…
ドーリーを換える訳にはいかないでしょうし…
どちらにしてもウチでは燃料運搬用タンクローリーの溶接作業は怖くて出来ません…笑
という事でメーカーと相談。
結果が出るまで一旦作業は中止です…
お次もトレーラー。
ABSのチェックランプが点く…という事で入庫しました。
確認するとABS警告ランプとABS未接続を示すランプが同時に点灯しており…
通常ならこのように両方が同時に点灯する事ってあり得ないんです…
ABS警告ランプはABSコンピュータに電源が入る事により異常を検知して点灯しますが、逆に未接続ランプは連結時にABSコンピュータに電源が行ってない事を示すランプなんです…
つまり矛盾してる訳です…
とは言え、実はコレもたまに遭遇するトラブルで…
過去にあったケースでABSコネクタからコンピュータ間のハーネスが中途半端に切断されていた事で両方が同時に点灯してた事もありましたが…
それより更に多いケースとしてよくあるのがABSコンピュータ側コネクタの接触不良。
しかもクノールのKB4TAというタイプのABSに圧倒的に多い事例です…
ABSモジュレータ上部のカバーを外すと…
各ポートにコネクタがささっていますが…
コレ…
コネクタは接続されているように見えますが、実際にはもっと奥まで入るんです…
キチンと接続すると…
ね?笑
理由は恐らくトレーラー側で溶接作業をする時にABSコンピュータへの流電を防ぐ為にコネクタを外して溶接をするんですが…
作業が終わったあと、コネクターを接続する時の挿入が甘いんです。
おまけにこのKB4TAはコネクタが挿しづらいというのも相まってこのようなヒューマンエラーが発生してしまいます…
何らかの理由でコネクタを外した時はキチンとツメが掛かるのを確認する事で防げます。
その後は両方ともチェックランプも消えて正常になり無事終了です。
そして厄介な状態の車両が入庫…
28年式のSHプロフィア…
走行は僅か8万キロほど…
お客様曰く、マフラーから黒煙が出るようになった…との事でディーラーさんに持って行ったらしいのですが…
ディーラーから提示された修理代は驚愕の200万超え…
ビックリした担当者さんがディーラーに『どうなってるんだ⁉︎』と問い詰めたところ…
ディーラーさんからは『コレ…燃料に尿素水が混じっちゃってます…恐らく運転手さん燃料タンクに間違えて尿素水を入れちゃってますよ…』
と言われたそうで…
担当者さんが運転手さんに確認したところ2ヶ月前に燃料タンクに間違えて尿素水を入れてしまった事を認めたらしく…
担当者さんもトーンダウン…笑
ただ、自分側の責任とはいえ200万もかかる修理をすんなり通せる訳もないらしく…
本当に200万もかかるのか⁉︎
もっと安く済む方法は無いのか⁉︎
そこでウチに依頼がきた次第です。
お客様の気持ちも分かります…
いきなり200万オーバーの修理代をOKする訳にもいかないでしょうから…
ただディーラーの担当者さんから話を聞く限りだと状態はあまり芳しくないようです…
まず記録データでは排気温度が1000℃まで上がっていたらしく…
その状態でマフラー出口から黒煙が出る…というのはDPFの溶損を意味します。
通常なら黒煙であるPMはフィルターでほぼ100%捕集されますから。
その上DPFが溶ける程の温度となれば尿素SCR触媒も無事かどうか…
更に異常燃焼を起こすほどPM過多になるという事はインジェクターの噴射状態も含め燃調が良くない事は容易に想像出来ます。
問題は燃料に尿素水が混ざった事によりサプライポンプまでダメージを受けてる可能性が高い事。
基本的に尿素水優勢なら当然エンジンはストールしますが、今回はエンジンが止まるほどの量では無いけど機構に悪影響をもたらすほどの量が混入したと思われます。
運転手さんはネットで燃料タンクに尿素水を間違えて入れた場合の情報を調べた所、問題無いとの趣旨の情報を得たらしく報告しなかったらしいですが…
中には燃料に尿素水が混ざると排ガスがキレイになるなんて馬鹿げた情報もあったらしいです…笑
ネット情報を100%信じないで下さいね…
勿論、真実が書いてある事もありますが素人が適当な見解で情報を載せてる事もあるので…
ただ、個人的に1つ気になる事があり…
ドライバーさんの話だとセジメンタのウォーニングランプは点灯しなかったとの事。
これがどうにも納得いかない事なんですが…
尿素水は水に尿素を溶かした水溶液で67.5%が水で32.5%が尿素です…
つまり、7割水で3割尿素…
そんな7割水の液体が燃料に混入したのにセジメンタのフローセンサーが反応しなかったというのがどうにも腑に落ちない点でもあるんですよね…
実際に燃料を少し抜いてみるとコレですよ…
真っ黒け…
恐らくエンジンオイルが混入してます。
それからディーラーさんから預かった古いフィルターはこんな状態。
混入した尿素水が結晶化してます。
この状態から現状では尿素水が燃料に混ざった事により不具合を起こしたと考えるのが妥当です…
燃料に尿素水が混入→混ざった燃料は潤滑性が低下しサプライポンプのメカニカルシールを損傷→損傷したメカニカルシールからエンジンオイルが燃料に混入→燃料品質が著しく低下しインジェクターの機能低下→噴射状態が悪くなり排ガスが悪化→PM過多になりDPFに堆積→DPF内で異常燃焼を起こしフィルターが溶損→マフラーから黒煙が出た…
順当に考えればこんな感じでしょうか。
ディーラーさんは燃料系統の総交換とマフラーASSYの交換を提示した為200万を超える修理代になったと思われます。
ただ個人的には決して間違った見積りでは無いと思います…
後々のトラブルを考えたらその都度掛かる時間や費用を考えて全交換というのは選択肢としてはアリだと思います…
ただし、今回はお客様の要望で『何とか抑えたい。結果的にその金額になったらその時は諦める』との事なのでウチとしては出来る限り慎重に診断して少しでも費用を抑えれるよう段階的に修理を進めていく事にしました。
まず燃料があんな状態なので今現在内部に溜まってる燃料を抜き、綺麗な燃料を給油、燃料フィルターもディーラーさんでも交換したようですが、もう一度交換します。
新品のフィルター…
プレフィルターや接続されるゴムホース類も交換。
綺麗な燃料を50リッター給油して燃料のリターンホースをタンクに戻さず外部に排出…
そのままエンジンを始動してリターンの燃料の状態を点検します…
リターンしてきた燃料…
色はやはりおかしいですね…
燃料が無くなるまでエンジンを回しリターンしてきた最後の方の燃料を採取。
まずコレが給油した燃料の色。
で、こちらが戻ってきた燃料…
並べてみるとこんな感じ。
ここで綺麗な燃料がリターン側に戻ってこればという淡い期待もありましたが…
この違いからサプライポンプからのオイル混入は現在進行形と思われます。
このサイクルが繰り返され入庫時のようなドス黒い色になったんでしょう。
という事でサプライポンプの交換は必須となります…
更にマフラーから黒煙が出る時点でDPFは内部で溶損してると思われ交換が必要です。
尿素SCR触媒は分解時に内部状況を点検して判断する事に…
インジェクターの補正値は意外にも悪くはありませんでしたが、過度な期待は辞めときます。笑
なので現状サプライポンプとマフラーの交換は決定的になりました。
インジェクターはポンプ交換後洗浄剤を注入して要経過観察、尿素SCR触媒は分解時に点検といった感じ。
とりあえず部品を手配して現在作業待ちです。
今回のような燃料タンクに尿素水を間違えて入れるトラブルは遅かれ早かれ入庫するだろうと想定はしていましたが…
尿素水を間違えて燃料タンクに入れてしまった場エンジンをかけずにその場で燃料を抜き替える事。
これで損失を最小限に抑えれる上、無用なトラブルは防げます。
尿素水タンクに間違えて燃料を入れた場合も同じです。
間違ってもネットのデマ情報を信じないで下さいね…笑