走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

聞こえない

2014年12月22日 | 仕事
あーやってしまったという気分。

ダグと出会ったのは2ヶ月前。超機嫌の悪いホームレスのおじさんだった。オーダーした検査にも行かず次に会った時は肺炎を起こしていた。
病院へ送りダグは治療の為一週間入院。退院してからの彼は人が変わっていた。

以前より前向きで、対応も良い。

入院中やはり超機嫌の悪いおじさんで皆を困らせ、精神科へ紹介。診察の末頭部打撲後の性格変化ということでムードをスムーズにする薬を飲み始めていた。ダグは病院へ送ってくれた私に非常に感謝し生活を変えようと決心したという。それ以来、週に一度診察に来て、一つ一つ前進していた。野外で寝泊りをせずシェルターに留まるようになった。家も積極的に探していた。職探しもしていた。

先週は不眠症について話をしていた。コーヒーの摂取を減らし、昼寝をやめて、それでも不眠が続くようなら睡眠薬を考慮しようと言っていた。なので今週はそのフォローアップと慢性閉塞性肺疾患を特定するため検査へ行ってもらう話をするつもりだった。診察前に肝炎の結果が出てC型肝炎だとわかった。しかしこの時点では急性なのか慢性なのかわからない。追加の検査が必要だ。じゃあそれも説明しようと私は思った。

家がなかなか見つからない。再就職トレーニングのプログラムは満杯で1月から入れそうにないと落ち込んでいる。焦ることはない。シェルターのスタッフも私もサポートするからと話し今日の予定に進む。用紙にメモをしながら一つ一つ説明する。もっとC型肝炎について知りたいと言うので基本的な情報をプリントアウトして説明。

さあ、本日の診療終了という段階で、あれ?と言うような質問をするダグ。説明したことが分かっていない。ダグが今週何をしなければならいか1ー3まで番号付きで書いた紙をもう一度説明しても??な彼。

彼のイライラ感が現れ出す。もう一度違う手法を使って説明。彼のイライラ感のカウンセリングもした。すまない、頭がバカでわからなくなる時があるんだと今度は悲しそうな顔。もう一度トライ。それなりにダグは納得して診察室を出て行った。

翌日、検査の予約が取れたのでそれを伝えようとシェルターへ行ってみた。ダグを見かけない。スタッフが教えてくれた。昨日診察の後超機嫌が悪いダグ。家が見つからない、プログラムに入れないかもしれないと腹を立てていてスタッフと大喧嘩になり薬も荷物も持たず出て行った。夜になっても帰って来ず彼はベッドを失った。

こういうケースはよくある。大体の場合昔の習慣に逆戻り。ダグはお酒と薬物依存があった。タバコも含め全てを2ヶ月近く止めていたのに、、、、。

あー自分の予定を先行させダグが一杯一杯だったことに気づかず、その上いつも以上の量の情報を与えて溺れさせてしまった、、、、患者の声が聞こえない医療者は失格だ。



落ち込むと行きたくなるのが海。
こちらはカリフォルニアの一本松

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