走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

細い糸

2014年12月23日 | 仕事
ダグが診察に来てくれた。あれから4日目。

あの夜シェルターでかーっと来て大声を上げたが出ていくつもりはなく夜に戻った。しかし門限を1分過ぎていて入れてもらえなかったと言う。そこからシェルタースタッフと大口論になったと言う。どうして融通が効かないのかと。

シェルターに入れない間お酒も薬物も使用しなかった。その点は安心した。

4夜連続寝袋でコンクリートの上で眠り身体中が痛いと苦笑する。今夜はシェルターに泊まれると思うと(冬は満杯になりやすく早い者勝ちでベッドは埋まっていく。一度入れると2週間まで連続して使うことができる)。
誰からもどこからも断られて辛いと話す。職が見つからない事に苛立ちを表す。当然だ職がなければ住むところもみつからない。手に職があるダグ。しかし60歳に近く再就職はかなり難しい。目を潤ませながら辛い気持ちを話す。かと思うと世の中は不公平だ、誰も自分の気持ちをわかってくれないと声を上げる。こんな事なら死んだほうがマシだと投げやりな声も。しかし自殺企図はない。

かーっときて後悔するような行動に出るのは今回が初めてではない。その繰り返しで職を転々とし、家を失い、家族とも疎遠になった。頭部外傷からこうなってしまったダグ。

長い間カウンセリングをした。真っ暗な闇の中でもがいているダグ。いっきに道は開けない。一個ずつ石を置いていくように暗闇から出る道を自分で作っていかなければならない。それには忍耐力と持続性が必要だ。

1)ハローワーク(に似たような機関)に毎日通う。断られても結果は気にしない
2) シェルターの規則は守る。何があってもスタッフと口論をしない
3) かーっときたら、これは全部ゲーム。上手くプレイして自分は勝つと思うようにする。

1と2ができたら再就職トレーニングのプログラムに入ることができるしシェルターも延長宿泊が可能になるからと、現実的な目標を決めた。

細い糸でつながっているようなダグ。どうぞ糸が切れませんように、、、



雨のイングリッシュベイ

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