走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

過去と未来

2015年03月29日 | 仕事
不安症とアンガースペル(暴力的な態度)を治したいと涙ぐむ22才のタイラー。若い時は思春期だからと言い訳があった。しかし今はそういうわけにはいかない。最近彼にふられて彼にも治療を勧められたという。

しかし彼女の問診は簡単ではなかった。何を聞いてもあやふやな答えしか返ってこない。どんなことがトリガーになるのか、過去の体験や成長、発達、家族環境、そしてトラウマの有無、薬物依存の有無など。時間がかかった。問診をしていて厚い壁があるように思えた。

1ヶ月もしないうちに就職のため隣の州に引っ越すことが決まっている。きっとそれまでにコントロールできるぐらいまでに持ってくるのは不可能だ。最初からはっきり話した。こういう治療は3週間やそこらで片付くものではない。根が深ければ深いほど時間がかかる。引越し後にできるだけ早くプライマリーケアを見つけて治療を継続することが大切。カウンセリングやグループセッションなどスキルを身につけていくことも薬物療法と並行して行っていかなければならない。と念を押した。私との関係は短期間で過去をベラベラと話す気にはなれないだろう、そうとも感じた。

幼少期から色々な経験をしてきたようだし、今になるまで向き合おうとはしなかった。引越しと重なってしまったが、前向きな彼女を支えていきたいと思う。



グランドキャニオン

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。