走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

高熱

2014年08月30日 | 仕事
簡単に麻薬や依存しやすい薬を処方してもらえると勘違いして来る患者がいる。新参者はこういう洗礼を受けるもの。不要な処方をしないためにも、そういう患者を見極めることは非常に大切。

マイクの第一印象は「まただ、、、」だった。シェルターで新顔の彼。髪の毛はボサボサの長髪。髭も生え放題40代にはとても見えなかった。
膝が痛くて歩けないと玄関の椅子に座って動かない。どうやってここまで来たのか尋ねると歩いて来たと。じゃあ診察室まで歩きましょうと淡々冷静な私。

右足を着地するたびに悲鳴のような鳴き声をあげる彼。壁に寄りかかって少しずつ歩く。一応スタッフに寄付用の歩行補助具を持ってくるように頼んだ。

まずは問診。数日前にERを痛みで訪れている。自分はヘロイン使用者だから相手にされなかったと。あーますます何時もの患者に近ずく彼。
質問に対してあやふやな答えが多いことも匂う。熱があると言うが詳細は不明。

次は診察。ひどい高熱。2時間前に解熱剤を飲んだと言うがかなり高い。3年前に手術をしたという膝は腫れ上がり反対の膝に比べてもかなりの熱を持っている。肺は綺麗でしっかり空気が入っているし心雑音もなし、これと言った他の所見もなく、関節炎から敗血症になった疑いあり。救急車を呼び受け入れ先のER医師に連絡した。

泣きながら自分はヘロイン使用者だから、ERに行ったって何もしてくれないと半泣きの彼。

大丈夫。今度は診てくれるとなだめる私。念のため診療内容をプリントアウトして救急隊に名刺と一緒に手渡した。

翌日ERリポートが来た。すぐ入院となり抗生剤の治療が始まりいろいろな検査の予定が組んであると。良かったねマイク。自分の判断が正しかったと私もうれしい。

メンタルヘルス、薬物依存、ホームレスの人たちは誤解を受けやすい。自分の症状を的確に伝える術が少ない人も多い。だから彼らの側に寄り添って訴えに耳を傾け、正確に問診診察ができることが大切なのだ。

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