久しぶりのブックレビュー。本嫌いの私が小説を読むのは電波のないところへ休暇で出かけるときぐらい。今回読んだのはこちら。
Kayさんのブックレビューを読んで以来ずっと読みたかった本。アメリカの黒人差別に関する物語です。主人公は病院で唯一の黒人看護師。ベテランの産科看護師。黒人嫌いの夫婦に新生児のケアを拒否されたことから物語は始まる。
物語の内容はKayさんのレビューを読んでくださいませ。とても上手にまとめられているので。おりしもカナダは先住民族の遺体が各地で数多く見つかっている状態で先住民族に関連する全てがホットトピックとなっています。なので私は本の内容を身近に起こっている先住民族の事に重ねます。
平等と公平。公衆衛生学において正しく理解しておかなければならないコンセプトです。法の下に平等である事が基本的人権だからか、一般の方々は世の中が平等である事に注意を払い公平について考える機会がありません。何故ならば当たり前にある権利が当たり前すぎて、それを得ている事を忘れているから。しかしその当たり前がない人にとっては何倍もの努力をしなければならない。例えば物語の中で使われていた利き手について。左利き用のハサミやデスクが簡単に手に入りますか?人口の過半数が右利きだから社会は右利き用に作られていて、右利きは不便を感じない。しかし左利きは利き手を変えたり、自分に合うものを探さなければならない。これが世の中は過半数者のために作られている例。それは物だけではなく法律やシステムもそうであり、それを不便に思うのはマイノリティーのみとなるのだ。
そしてこれは人種、宗教、言語、性的嗜好、これらのマイノリティーが世の中で平等でないと感じる理由。マイノリティーの不便さをマジョリティーの人が真に理解できない理由でもあるのだ。不便だからの理由で利き手を変えることができます。しかし生まれ持った皮膚の色や性的嗜好は変えられません。よってマジョリティーのために作られた世の中の陰でマイノリティーが生きづらさを感じていることについて耳を傾けて、改善策を練っていかなければならないのです。で、何故これが医療である公衆衛生学に関係あるのか?
公衆衛生学ではマイノリティーグループの健康インデックスデータが一般の平均値を下回るからです。先住民族や黒人種、性的マイノリティーの人たちの平均寿命が短く、疾患の発生率も高い。医療へのアクセスがシステム的に限られていることに注目します。あなたがマジョリティーであればあるほどこの関係性は理解難いものだと思います。しかしこの本の中に織り込まれているメッセージはそれをわかりやすく説明していると思いました。
医療人として、特にAPNとしてこのギャップを埋めていくことが使命なのです。国民の健康の向上を考えるとき、マジョリティーに注目した政策ではマイノリティーは置き去りになるのです。これが先進国で格差の拡大へ繋がっているのです。よって国民の健康の向上へはマイノリティーも含んだ政策なしでは到達できない。これが現代の公衆衛生学の方向性なのです。
続く
ありがとうございます!久しぶりに自分の記事を読み返し、
この本を読んだときの感動が蘇りました。
マイノリティの不便さをマジョリティが理解できない。
これは、左利きであるわたしはいつも痛感していまが、
無理もないかなあ。右利きが当たり前である社会で、
反対の手を使う人の不便さを想像するのは難しいのでしょうね。
でも、それ以上に深刻なのが人種差別。
それが健康の向上にも大きな影響を及ぼしていることを、
mikaさんの記事を読んで実感しました。
おっしゃる通り、マイノリティも含んだ政策が求められますね。