走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

上流で何が出来る?

2017年05月10日 | 仕事
バンクーバーには依存薬物を自己注射する施設がある。政府公認だ。カナダで唯一の施設だったが、最近のオピオイドクライシスでオンタリオのトロントをはじめBC州でもビクトリア、サーレーと建設が予定されている。

バンクーバーの施設がオープンして10年。評価の研究が発表されたばかりだ。

で、今回参加した学会でのセッションの1つがこの施設についてのクリティークだった。クリティークとは批評。批評をしたのは公衆衛生予防学の権威の博士と司法から麻薬担当をしていた方。

これは私も地元の会議で言ったことだが、ハームリダクションは最悪の中で最悪を避ける方法。川で溺れている事に例えると、ハームリダクションは溺れている人に浮き輪を投げることだ。浮き輪を渡すだけでは溺れる人は減らない。もっと上流に行き何故人が溺れるかを見つけて、そこを改善しなければならない。例えば川のそばに柵を建てたり注意書きを建てたり、と言うことだ。

自己注射の施設を作り、滅菌された物品を渡す事でエイズや肝炎の蔓延を防ぐ事が出来る。しかし薬物依存は減らない。ハームリダクションを行う事で満足するなと彼らは言っていた。博士はもう一歩踏み入って、人を変える事が出来ると思うなんて傲りきった人間だとも。

考えれば考えるほど答えが出ない。どうしたらこのクライシスが改善するのか。上流に働きかけなければならない事は十分承知だ。しかしどう働きかければ良いのかわからない。小学4年生から薬物教育は始まっている。しかし拍車は止まらない。

ホームレスの問題といい薬物依存の問題といい、この解決策が現れたらノーベル賞間違いなしだ。



雲ひとつない青空

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