走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

避難と支援の違い

2024年01月16日 | 仕事

能登半島の地震から二週間が経ちますが寸断されているインフラの中での避難生活。心が痛みます。


で、ここでカナダでの災害時の政府の対応の過去の例を書きますね。


2023年夏。大規模な森林火災があちこちで起こりました。

オーロラ鑑賞で有名なイエローナイフ。人口2万人の市です。ノースウエストテリトリーにあります。火災の時に市長が避難勧告を出しました。避難先はアルバータ州のカルガリー。1750km 離れた場所です。車で休みなく走って18時間離れた場所です。避難に利用したのは空港会社の飛行機、政府の飛行機、そして自分で逃げると自家用車で逃げた人も。


で、避難先はホテル。災害時は災害の緊急用の資金を使用することができるので、政府がホテルを押さえて、そこに住民が入る形になります。警察は空き家に物取りが入らないように避難が終了するまで街に残っていました。


火災がおさまり、自宅へ帰ることが許された時も、まずは警察が先に入り、住民は飛行機や車で戻ってきました。もちろん政府がお金を出しています。


2021年11月。BC州は記録的な大雨となり複数の山崩れ、川の欠壊で大被害をあちこちでもたらしました。その内の一つの街、メリットの例です。人口七千人の街全体の避難勧告がだされました。南への道は寸断されていましたが北への道は通行可能で、バスで住民を北の街カムループスへ避難させました。こちらも政府が抑えているホテルへ住民は避難しています。学校や病院、ビジネスや家屋が壊滅的な被害を受け、2年後の今も130家族が仮住居で生活を送っています。もちろん街はその人たちが戻って来れるように復興事業を続けています。

https://www.merritt.ca/flood/


さあ、この二例を知ってどう思いますか?


災害が起こった場所から早急に住民を避難させるのがカナダのやり方。避難先は体育館や公民館ではありません。ホテルです。その避難先でも政府やボランティア団体と繋がり状況把握、書類作成、日常生活の必需品の受け取りなどサポートを受けながら日常が送れるように援助されます。こちらにはホテルと言ってもキッチン付きのホテルもありますから。


水や食料を運び続けるより、水や食料がある場所へまずは住民を動かす方がずっと簡単だと思います。それに二次災害と呼ばれる血栓症や集団感染も防げると思います。住みなれた土地から離れるのは一時的なこと。離れても点でバラバラになるわけではない。自分の街の役所の人と避難先でも繋がっている。心のケアでも医療的なケアも避難先でも受けることができる。


あ、書き忘れましたが入院治療が必要な人は、受け入れ先のマンパワーやスペースに限りがあるのであちこちへ配分(言葉が悪いですね)されることで受け入れ先の負担を減らします。在宅ケアを受けている人も複雑なプライマリーケアが必要な人も同じように分散されます。毎回災害時には何人受け入れられるか?要請が来ます。


災害大国なのに、被害を受けた地域の面積も住民の数も、病院の数も日本全体に比べれば5%(推測。誰か教えて)にもならないのに、住民は水も出ない食料のアクセスもない、プライバシーもない場所での生活を強いられるのか、不思議です。


やはり日本の災害対策を見直す必要があるのではないでしょうか?


冒頭写真:我家の裏庭と車庫。まだまだ寒気に覆われて寒い日々が続いています。気温が低いせいで夕焼けがとても綺麗。今なら季語「冬夕焼」で良い俳句が作れそう!



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