走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

自由の権利 その2

2015年09月24日 | 仕事
彼女の入居時の記録を見てみた。奇怪な記入が多々伺える。過去の住所歴も街を転々としている。メンタルヘルスを病んでいる人に多い特徴だ。

入院記録がないか調べる。ヒットしてこない。このアパートに住んで3年。ここに来る前はシェルターに居たパディ。強制退去が過去に起こったことが伺える。

通りがかった近所の人曰く、ここ一週間出て行くところを見たことないと。オーナーは食事や飲み物を摂取していないことを心配する。部屋に冷蔵庫やストーブはなく大食堂での食事サービスを受けていた。退去命令が出たことでそのサービスは打ち切られ、食事をしているかどうかもわからない。

オーナーとデニーと私の3人で部屋を訪れる。自主的にドアを開けないのでオーナーが鍵を使って開ける事に。

しかし反対側で鍵が回転しないようにしているようだ。悪戦苦闘の末10cmぐらい開けることができた。スーツケースや椅子が山済みだった。ドア越しに問診をしようとする私。同時にサポートが感じられるように、そういう話術で迫ってみる。

パラノイア vs せん妄

私たちはテオリストで武器を持ち込もうとしている。
警察を呼んで頂戴。警察なら血液検査とDNA検査であなたたちが嘘つきだと証明できるから。

自己や他を害する思いはないようだが彼女が発する音葉は普通ではない。全く協力する姿勢を見せず。頑なにバリケードを強めている。

食べ物もあるから飲み食いをしていると言う。しかしこの目で確認するまで信じられない。

パディがリクエストしたように警察を呼んだ。しばらくして警官2名が登場。ドアは再び閉じられていた。警察が来ても状況は変わらない。自己や他者を害す言動が無ければ、実力行使に出れない。鍵を使おうとしても、同じような状況。鍵が動かない。

閉ざされたドア越しで交渉が始まる。堂々巡りのような会話が続き、もうあなたたちとは話したくないと、返答が一切なくなった。静まり返る部屋の中。

鍵を壊して突入することが決まった。パディが自己を殺めたかもしれない。

続く




籠城
イメージ:海国防衛ジャーナルブログより
http://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50728350.html


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