松原泰道師の言葉から。
あるとき、一人の若い侍が「地獄があるのか。極楽もあるのか。」
と、白隠禅師に尋ねました。
禅師はそれには答えずに、逆に質問を投げかけます。
「おまえさんはだれだ。何だ」
「侍だ」
「その侍が地獄がわからんとは、おまえさんたいした人物じゃなかろう」
そういって禅師は、さんざんに彼を罵倒したのです。
この若者は、腹を立てながらも、ここは辛抱だと思ってじっとがまんして聞いています。
だが、禅師はますますいいつのり、罵詈讒謗するのです。
ついにたまりかねた若侍は、おのれとばかりに刀を抜き、斬りかかりました。
白隠禅師はとびのいて、本堂の中をあちこちと逃げ回ります。
若侍は追いかけるものの、家の中だから思うように刀は振り回せない。
しかし、とうとう追い詰めて、一刀両断とばかりに切り落とそうとする。
そのとき裂帛の一声が降ってきたのです。
「そこが地獄だ!」
ハッとばかり、侍はひるみました。
なるほど、天下の名僧を殺せばどうなるか。主君に迷惑をかける。自分は切腹だ。
家は断絶するかもしれぬ。
なるほど、今の怒りが地獄だったのか。
そう気づくと、刀を置き、居住まいを正して、
「わかりました。」
するとそのとたん、
「そこが極楽だ」
と白隠はほほえみながらいいます。
あるとき、一人の若い侍が「地獄があるのか。極楽もあるのか。」
と、白隠禅師に尋ねました。
禅師はそれには答えずに、逆に質問を投げかけます。
「おまえさんはだれだ。何だ」
「侍だ」
「その侍が地獄がわからんとは、おまえさんたいした人物じゃなかろう」
そういって禅師は、さんざんに彼を罵倒したのです。
この若者は、腹を立てながらも、ここは辛抱だと思ってじっとがまんして聞いています。
だが、禅師はますますいいつのり、罵詈讒謗するのです。
ついにたまりかねた若侍は、おのれとばかりに刀を抜き、斬りかかりました。
白隠禅師はとびのいて、本堂の中をあちこちと逃げ回ります。
若侍は追いかけるものの、家の中だから思うように刀は振り回せない。
しかし、とうとう追い詰めて、一刀両断とばかりに切り落とそうとする。
そのとき裂帛の一声が降ってきたのです。
「そこが地獄だ!」
ハッとばかり、侍はひるみました。
なるほど、天下の名僧を殺せばどうなるか。主君に迷惑をかける。自分は切腹だ。
家は断絶するかもしれぬ。
なるほど、今の怒りが地獄だったのか。
そう気づくと、刀を置き、居住まいを正して、
「わかりました。」
するとそのとたん、
「そこが極楽だ」
と白隠はほほえみながらいいます。