行雲流水

仏教をテーマとした記事を掲載しています。

負けるが勝ち

2018年06月05日 | 仏の心
スキーではまず上手に転ぶことを学んでおかないと、転んだ時に大けがをすることがあります。つまり転ぶ(=負ける)練習が必要なのです。
五重の塔は日本人の誇るべき高層建築ですが、地震が起こった時に揺れに逆らわないようにしなやかに造られています。つまり、地震に対抗するのではなく、地震に身を委ねる構造なのです。日本人は、自然に逆らわずわざと負ける工夫をしてきたのでした。負けるが勝ちの論理なのです。
商品を値引きすることを「まける」と言いますが、実は「まける」ことによってたくさん品物を買ってもらおうというわけです。やはり負けるが勝ちです。
明治維新後、西洋的な考え方が入ってきたわけですが、これは勝ちの文化であったと言っていいでしょう。まず、列強諸国に倣って勝つための強い軍隊をつくりました。
現代も勝つ事を第一とした考え方が幅をきかせているわけですが、勝てば必ず負ける人がいるわけですし、いつか自分も負ける身になるかもしれないということを想像しなければなりません。現代人の弱さとはまさに負ける事に対する想像力が弱い点にあるのではないでしょうか。精神的にまいってしまいやすく、傷つきやすい。調子のいい時こそピンチの前兆であると考えておくことが大切なのではないでしょうか。
天女五衰と言います。天女も年をとって悩むのです。調子が良くてもピンチの時のことを考えて心の準備をしておくことが大切です。

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