写真というものは、モノクロにしたり、ホワイトバランスを調整して色温度を上げてブルートーンにしたりすることで、特に変哲のない風景であっても、たいていの場合グッと印象的になる。そのため特に星景写真では、色かぶりの補正という本来のホワイトバランスの域を超え、ブルートーンに現像された作品が巷に溢れかえっているわけだ。
それもひとつの表現方法ではあるが、そんな作品が10枚も並んでいたら、全体の統一感はあるけれど、後半の写真の印象なんてほとんど残らないであろう。カラーで撮っている以上、色は大切な表現要素であり、文字通り多彩な表現ができるはずで、またそうしたいと思っている。だから私的には夜だからといって、安易にモノトーンに逃げるのを良しとしていない。
ところが2017年初めての夜、こんなことがあった。
ある撮影対象のバックが宵の口の群青色に染まっていたのだが、水銀灯の明かりが対象物を緑色に照らしていたため、ものすごく不自然な色の組み合わせになってしまったのだ。そこでこの不自然さを払拭するため、カスタムイメージ(撮って出し)のモノクローム(同時にRAWでも撮影)で撮影し続けた。もちろんRAW現像で後からモノクロにできるのだけれど、この対象にはモノクロしかありえないと判断したため、それならモノクロの調子を見ながら撮影するのが適当だったからだ。
“私的にはモノトーンに逃げるのを良しとしていない”と語ったが、このように明確な狙いがあるのであれば、むしろそうすべきであろう。
かくして自分的には指折りの名作が誕生したわけだが、そうするとモノクロの表現にも少しばかりこだわりを持ってみたくなった。そこで登場するのがバライタ紙というモノクロ印画紙だ。
バライタ紙は、諧調表現が豊かで高い濃度の黒が得られるという利点がある一方、扱いが難しく、高価なものだという。今の時代、バライタ紙の特徴を持ったインクジェット用の用紙が何社からか発売されているのだけれど、その中から、「ピクトラン局紙バライタ」をチョイス。A4サイズ1枚当たり300円もする高価な用紙だ。
プリンタはキヤノンのMGシリーズで染料系インクを使用。通常は純正の写真用光沢紙プラチナグレードを使用しているのだが、それとプリントし比べてみた。
モノクロモードで印刷すると少しセピアっぽいかぶりが生じたので、カラーモードで印刷した。そうすると、やや寒色系の感じはするものの、ニュートラルなグレーで印刷された。一方のピクトラン局紙は、紙が蛍光白色ではないため、カラーモードでも少しセピアっぽい仕上がりとなるが、明らかにこちらの方が諧調豊かで、それでいて黒の締まりも優れていた。さらに意外なことに、表面が凸凹しているのに、滑らかな光沢紙より細部がシャープだった。
ただし、水分に弱くて乾くと紙が反ってしまう欠点がある。(ネットの上で伏せて乾かすといいらしい。)また、なぜか2枚目から印刷位置のずれが生じてしまい、設定を変えても元に戻らなかった。紙を他の種類にすると正しい位置に印刷されるので謎だ。おかげで高い紙のミスプリを乱発する羽目に…(T_T)
でも、高いだけの価値があることは確実だ。美術品としてのモノクロプリントに使われているのも納得である。
月と星と大地の織りなす惑星地球のギャラリー オフィシャルサイトです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます