MOONLIT STORY ~月夜の物語~

月明かりに照らされた惑星地球をテーマに星空の写真を撮り続けています。

EIZO Quick Color Match の威力!

2018-01-27 00:01:37 | 星の写真

PCの新調に合わせて、EIZOのモニターを初導入しました。

キャリブレーションセンサー内蔵のCGシリーズにしたかったけど、予算の都合で Coloredge CS2730 をチョイス。

 

このモニターを導入した理由は、Adobe RGB を99%カバーし、カラーマッチング機能によりモニターに映し出されたとおりの色合いでプリントアウト可能なことです。

どうしても思い通りのプリントができずに失敗プリントの山となった過去とは、これでもうさらばです。

※このモニターは2560×1440ドットの高解像度ですが、当初1920×1200ドットまでしか表示できませんでした。その解決編は後日ブログにて公開します。

 

カラーマッチングには、このモニターに付属しているソフトウエア「Quick Color Match」を使用します。

 

 このソフトは、モニターとプリンタが通信しあって色合わせ設定を行います。モニターとPCはモニターケーブルに加えてUSBケーブルも繋ぎます。

おそらくこのUSBケーブルによって通信しており、ソフト自体は無償ダウンロード可能ですが、EIZOの対応モニターでないと使用できないと思われます。

とにかくこのソフトが優れモノで、プリンタ機種と用紙を選んだら、プリントしたい画像ファイルをドロップするだけ。

自動でプラグインソフトの Print Studio Pro(Canonの場合)が起動し、設定は用紙に対するレイアウトのみ。超簡単!(最初の導入がちゃんとできていればですけどね…)

 

使用したプリンタは、顔料インク使用のハイエンド機「Canon PRO-10S」。用紙は純正の写真用紙・光沢プロ[プラチナグレード]を使用。

 

比較のため染料インク使用の普及機「Canon MG7530」でもプリントしました。

Quick Color Matchがサポートしているのはハイエンド機だけなので、Photoshopで普通にプリントしました。

 

 

ただし、この一連のソフトはちゃんとした手順を踏んでインストールしないと連携がとれず、動いてくれません。

その手順は下記の通りです。

① プリンタのドライバーをインストールし、プリンタをスタンバイ状態にしておく。

② Quick Color Match をインストール

③ Photoshop のインストール(既にインストールしていたため起動せず。再インストールで無事起動)

④ プラグイン Canon Print Studio Pro のインストール

   実は Print Studio Pro が最新版の Photoshop CC 2018 に対応していなかったため、ここでも起動せず。そこでもうワンステップ。

⑤ Photoshop CC 2018 と Canon Print Studio Pro の連携

   詳しくは下記サイトを参照。

   http://www.eizo.co.jp/products/ce/qcm/PhotoshopCC2018_PSP_cooperation.pdf

 

さてさて、かくしてようやく漕ぎ着けたプリントがこれです。

向かって右下がPRO-10S、左下がMG7530です。

照明は、正しく色を評価できるよう高演色LEDスタンドの「Z-80pro2-EIZO」を使用しています。モニターには専用遮光フードを取り付け、照明が当たらないようにしています。

 

Quick Color Matchによるプリントは、Photoshop上の画像と比較するとややマゼンタが強くなってましたが、OKとしてよい仕上がりでした。(写真に撮るとモニターとけっこう違って見えますが、実物は大差ない仕上がりです。)

一方そうでない方は、染色インク特有の彩度の高い仕上がりも相まって、よりマゼンタが強くモニターと異なっています。

後者の方が見栄えがしてきれいに見えるかもしれませんが、大事なのはモニター通りにプリントされることです。

とはいえ、モニターも経年変化で徐々に色がくるってきます。それを補正するのがキャリブレーションセンサーなのですが、センサーがなくてもマニュアルで調整できます。

その手順を引き続きご紹介します。

① プリントする用紙を準備

② 高演色LEDスタンド以外の環境光をすべてシャットアウト

③ Quick Color Matchを起動

④ ギアの形をした設定マークをクリックし、環境設定「オプション機能」→「手動調整」と進む

⑤ 対象用紙から準備した用紙の種類を選び、「次へ」をクリック

⑥ ワードなどで白紙を表示し、手元の用紙と色を見比べる

 (画像上ではむしろ画面の方が赤く見えるかもしれないが、実際は用紙が赤く見える)

⑦ 手動調整の色座標を動かして、画面の白紙が用紙と同じような色合いになるように調整

 

 ようするにキャリブレーションセンサーのかわりに目視で調整するやり方です。

この調整を行った後に再び Photoshop 上の画像とプリントを見比べると、ほぼ同じような感じになりました。(^^)v

 

 

ここからは本題から逸れますが、ついでに染料インク(左)と顔料インク(右)の違いを比較してみたいと思います。

プリンタ自体の性能に差があるので単純比較はできませんが、双方の特徴を列挙します。

<染色インク>

・彩度が高く発色が派手

・マゼンタが強め

・プリント速度が速い

・光沢紙の光沢を損なわない

 ※わざと写りこませたLED照明に注目!同じ用紙なのに光沢感がまるで違います。染料インクの方が透明感を感じるのは、この違いによるものと思われます。

<顔料インク>

・ナチュラルな発色

・黒が締まってコントラストが高く高精細

・プリント速度が遅い

・光沢感がなくマット調になる

 ※顔料インクは紙に染み込まず、用紙表面をインクが覆ってしまうため、光沢感を失ってしまうと考えられる。

 

染色インクは色再現性がよくありませんでしたが、それはカラーマッチングを行っていないからで、サポートされているハイエンド機の染色プリンタ PRO-100S を使用すれば、良好な色再現になると思われます。

ただし、Canonのショールームで10Sと100Sによる同じ画像のプリント見本を見比べたところ、やはり10Sの方が高精細で、100Sの方がわずかに赤みがかっていました。

以上のことから、人肌が柔らかく暖かみを帯びてプリントされる染色インクは人物向き、コントラストが高くて高精細の顔料インクは風景向きと言えそうです。

 

 

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「長野県は宇宙県」に思う

2018-01-12 19:38:45 | 星の写真

2016年11月23日に宣言された「長野県は宇宙県」という取り組みをご存知でしょうか?

日本星景写真協会内でも、関係者から巡回写真展を後援イベントに申請してはどうかという提案が昨年ありました。

 

その憲章には、「長野県の地域振興、人材育成、観光、天体観測環境維持に寄与することを目的とする。」とあります。

つまり、①地域振興、②人材育成、③観光、④天体観測環境維持の4つを柱とした取り組みであると理解できます。

実際この宣言以来、多くの天文研究施設や公共施設が主体となって講演会やイベントを開催し、②人材育成の面で、大変有意義な活動になっていると思います。

 

しかしながら、オフィシャルサイトの冒頭にも「宇宙を観光・教育資産として活かしていく活動を推進します。」と書かれているように、

①地域振興と③観光の活性化で地域経済を潤すことが本当の狙いとみて間違いないでしょう。

「感動の星体験」・「日本一の星空」と銘打って売り出し、観光客の大量誘致に成功した「阿智村」の例が、“長野県は星を売りにしてたくさんの人を呼べる”という宇宙県の発想につながったのではないでしょうか。

 

もちろん地域にとって経済が潤うことはいいことに違いないでしょうが、今の阿智村の星体験イベントがどうなっているかというと、

星空を純粋に楽しむところから逸脱したショー的要素が年々過激さを増し、レーザーポインタ飛び交う星空解説から野外ライブ、

そしてついにはプロジェクションマッピングまで駆使した光の祭典と化してしまいました。

そう、星空の美しさを売りにしていながら、星空を明るく照らすという本末転倒な状況となっているのです。

きっとこれからも宇宙県を推進すればするほど夜空は明るくなっていき、掲げている④天体観測環境維持とは相反する矛盾した取り組みになるのではと危惧しています。

(夜空を暗くすることだけが天体観測環境維持ではありませんが、一番大事な要素のはずです。)

 

同じような現象は他県でも起きており、こういった宣言に伴ってメインで企画されているのが星空ツアーやイベントの類です。「星の郷・美星町」「いしがき島星空宣言」「鳥取県は星取県」などがそれです。

先駆者である美星町(現井原市美星町)は、日本初の「光害防止条例」を制定し、年々星のよく見える環境を取り戻す取り組みを本気で行っており、これこそが本物の星空宣言都市の姿という手本となっています。

しかしながら、石垣島は高潔な宣言とは裏腹に、11年も経ってやっと光害対策に取り組みました(「国際ダークスカイ協会」認定の「星空保護区」に昨年申請)。いや、正確には取り組むと決めただけで対策はこれからです。

鳥取県も宣言と観光事業が先行し、「星空保全条例」が制定されるのは今年の4月となっています。

もっともその中身は投光器等の禁止のみで、それ以外は「星空保全地域」の指定を受けようとする市町村がもしあったなら、その市町村の裁量で規制を決めなさいという丸投げする内容となっています。

鳥取県といえば光のタワー構想をぶち上げて炎上した記憶に新しいですが、やはり観光誘致が目的で、星空保全は形だけのもののようです。

 

話は戻って「長野県は宇宙県」ですが、今のところこの宣言に伴った光害対策や星空保全に関する条例の制定などの動きは聞こえてきていません。

よって残念ながら星空を破壊するだけの観光客目当ての宣言と言わざるを得ず、冒頭の協会内であった後援イベントへの申請に対しては、

手を貸すのはまっぴらごめんと意見し、その件はそれっきりとなりました。

もちろん、今後美星町のような条例が制定されて真の宇宙県となった暁には、喜んで協力したいと思っています。

 

 

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