2016年11月23日に宣言された「長野県は宇宙県」という取り組みをご存知でしょうか?
日本星景写真協会内でも、関係者から巡回写真展を後援イベントに申請してはどうかという提案が昨年ありました。
その憲章には、「長野県の地域振興、人材育成、観光、天体観測環境維持に寄与することを目的とする。」とあります。
つまり、①地域振興、②人材育成、③観光、④天体観測環境維持の4つを柱とした取り組みであると理解できます。
実際この宣言以来、多くの天文研究施設や公共施設が主体となって講演会やイベントを開催し、②人材育成の面で、大変有意義な活動になっていると思います。
しかしながら、オフィシャルサイトの冒頭にも「宇宙を観光・教育資産として活かしていく活動を推進します。」と書かれているように、
①地域振興と③観光の活性化で地域経済を潤すことが本当の狙いとみて間違いないでしょう。
「感動の星体験」・「日本一の星空」と銘打って売り出し、観光客の大量誘致に成功した「阿智村」の例が、“長野県は星を売りにしてたくさんの人を呼べる”という宇宙県の発想につながったのではないでしょうか。
もちろん地域にとって経済が潤うことはいいことに違いないでしょうが、今の阿智村の星体験イベントがどうなっているかというと、
星空を純粋に楽しむところから逸脱したショー的要素が年々過激さを増し、レーザーポインタ飛び交う星空解説から野外ライブ、
そしてついにはプロジェクションマッピングまで駆使した光の祭典と化してしまいました。
そう、星空の美しさを売りにしていながら、星空を明るく照らすという本末転倒な状況となっているのです。
きっとこれからも宇宙県を推進すればするほど夜空は明るくなっていき、掲げている④天体観測環境維持とは相反する矛盾した取り組みになるのではと危惧しています。
(夜空を暗くすることだけが天体観測環境維持ではありませんが、一番大事な要素のはずです。)
同じような現象は他県でも起きており、こういった宣言に伴ってメインで企画されているのが星空ツアーやイベントの類です。「星の郷・美星町」、「いしがき島星空宣言」、「鳥取県は星取県」などがそれです。
先駆者である美星町(現井原市美星町)は、日本初の「光害防止条例」を制定し、年々星のよく見える環境を取り戻す取り組みを本気で行っており、これこそが本物の星空宣言都市の姿という手本となっています。
しかしながら、石垣島は高潔な宣言とは裏腹に、11年も経ってやっと光害対策に取り組みました(「国際ダークスカイ協会」認定の「星空保護区」に昨年申請)。いや、正確には取り組むと決めただけで対策はこれからです。
鳥取県も宣言と観光事業が先行し、「星空保全条例」が制定されるのは今年の4月となっています。
もっともその中身は投光器等の禁止のみで、それ以外は「星空保全地域」の指定を受けようとする市町村がもしあったなら、その市町村の裁量で規制を決めなさいという丸投げする内容となっています。
鳥取県といえば光のタワー構想をぶち上げて炎上した記憶に新しいですが、やはり観光誘致が目的で、星空保全は形だけのもののようです。
話は戻って「長野県は宇宙県」ですが、今のところこの宣言に伴った光害対策や星空保全に関する条例の制定などの動きは聞こえてきていません。
よって残念ながら星空を破壊するだけの観光客目当ての宣言と言わざるを得ず、冒頭の協会内であった後援イベントへの申請に対しては、
“手を貸すのはまっぴらごめん”と意見し、その件はそれっきりとなりました。
もちろん、今後美星町のような条例が制定されて真の宇宙県となった暁には、喜んで協力したいと思っています。
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