【晩酌の肴】
前号で私の「ディナー」(原語は昼の<正餐>の意味。夜の食事のことではない)について書いたところ、前国立栄養・健康研究所理事長の旧友渡邊昌氏からメールがきた。
<バター20gは美味しいとおもいますが、毎日とるなら質のよいオリーブ油に変えてはどうですか?野菜にまぶしても結構うまいものです。日野原先生もオリーブ油派です。
こちらはあいかわらずマロングラッセなど楽しんでいます。>
誤解を与えたことを訂正したい。
私は晩酌をするので、それには「肴」がいる。レストラン「サンサーラ」の閉店が遅れると、私の方が先に母屋に戻り、一人で晩酌を始める。その時の「肴」が写真1の手前の3皿である。
左からチキンの缶詰、イタリア製オリーブのアンチョビ詰め、食塩無添加の煎りクルミである。オリーブの実には、大皿の料理(家内が作ってくれたもの)の向こうにあるオリーブ油「BOSCO」をかけて食うと、酸味が薄まり実に美味い。オリーブはスペイン産だが、中をくり抜いてアンチョビのオイル漬けが種の代わりに詰めこんであるという、手の込んだ食品である。
山田風太郎は「夕食の献立は13皿を並べる」と書いているが、私はそれほど食にこだわる方ではない。もっとも彼は「戦中派の飢餓感」から、食べ物が沢山ないと「満足感が味わえない、残すのが最高のぜいたく」、と書いている。それはそれで理解できる。
もともと私は、古代ギリシア人はオリーブ油を身体に塗り、垢がふやけたところでそれを木製のヘラでそぎ落としていた、という記述を本で読み、それで「そうか、それならオリーブ油は皮膚にやさしいはず」と思い、冬場の皮膚の乾燥止めに利用し始めた。
ところが精神科の恩師O先生から、歳暮に高級オリーブ油が届いたことから、「ワセリン代わりだけでは、もったいない」と思い、ドレッシングに使い始めた。写真の「BOSCO」ラベルのビン入りオリーブ油は、これから「アンチョビ詰めオリーブ」に振りかけるところである。
オリーブ油にはリノレイン酸など、ヒトの体内では合成できない「必須脂肪酸」が含まれているから、積極的に利用する価値があるのはよく承知している。
家内が後から作ってくれた大皿には、温野菜の上にマヨネーズが掛けてあるが、私はこれとキュウリのピクルスにもオリーブ油を掛けて食う。缶詰のチキンを食った後は、ガラス小皿に残りの液を移し、オリーブ油で薄めて飲む。
ディナーの際は、区画がついた平皿の料理にマヨネーズ、ミートソース、ケチャップなどが多用してあるので、食った後、これにオリーブオイルを垂らし、流動性にして一区画に集め、プラスチックの平先スプーンを使って、こさげるようにして全部食べる。
禅の懐石では、最後にお茶か湯で飯椀を洗い、それを湯飲みに移して箸を洗ったのち、飲み干して食後の片付けを自分でする。昔の農家の「箱膳」もそうだった。まあ、あれに近いことやっている。
クルミは子供の頃に家の庭外れに樹があり、「堅い」という印象があったが、あれは外殻のことだった。アメリカ産のクルミを元に、神戸で加工された「無塩クルミ」は、インド産のカシューナッツよりも軟らかく噛みやすく、100gm当たりのタンパク質14.0gm、脂質68.7gm、糖質4.2gm、食物繊維9.8gmと、インド産カシューナッツよりも糖質が少なかったし、軟らかくて美味い。
で、手前の3皿でコップの焼酎を1杯飲む、2杯目は後の皿に手を付けるが、さすがに全部は食いきれずに、三分の一程度が残り、「後は明日食うから」と家内にいうハメになる。
確か、「日本書紀」に何とかという天皇が、昼飯に焼いた塩鮭を食し、皮を残して、「それは晩酌の肴にするから棄てないでくれ」と近習に言ったという話が書いてある。まあ似たような心だ。
今夜はその間に、NHK21:00ニュースの後半と「報ステ」の出だしだけを見た。一日のTV視聴時間は1時間もないが、地上波、BSともに受信料はちゃんと払っている。
というわけで昌さん、バター20gm/日だけでなく、オリーブ油もちゃんと食しているのでご安心下さい。日野原先生に会われたら、よろしくお伝えください。昔、広島市で一度テーブルを共にしたことがあります。
<付記=上海に出張中の渡邊氏から「この肴なら大丈夫でしょう。ローマの皇帝もたべていなかったようなごちそうです」という返事があった。そりゃほめすぎだよ。ローマ人は食べ過ぎたら指をのどに突っ込んで嘔吐して、また食って飲んでいた。彼らはたぶん質より量を重視したのであろう。
その間にも、こちらは200グラムのバター1箱を平らげ、2箱目に取りついた。これも10日で食べ切るだろう。>
前号で私の「ディナー」(原語は昼の<正餐>の意味。夜の食事のことではない)について書いたところ、前国立栄養・健康研究所理事長の旧友渡邊昌氏からメールがきた。
<バター20gは美味しいとおもいますが、毎日とるなら質のよいオリーブ油に変えてはどうですか?野菜にまぶしても結構うまいものです。日野原先生もオリーブ油派です。
こちらはあいかわらずマロングラッセなど楽しんでいます。>
誤解を与えたことを訂正したい。
私は晩酌をするので、それには「肴」がいる。レストラン「サンサーラ」の閉店が遅れると、私の方が先に母屋に戻り、一人で晩酌を始める。その時の「肴」が写真1の手前の3皿である。
左からチキンの缶詰、イタリア製オリーブのアンチョビ詰め、食塩無添加の煎りクルミである。オリーブの実には、大皿の料理(家内が作ってくれたもの)の向こうにあるオリーブ油「BOSCO」をかけて食うと、酸味が薄まり実に美味い。オリーブはスペイン産だが、中をくり抜いてアンチョビのオイル漬けが種の代わりに詰めこんであるという、手の込んだ食品である。
山田風太郎は「夕食の献立は13皿を並べる」と書いているが、私はそれほど食にこだわる方ではない。もっとも彼は「戦中派の飢餓感」から、食べ物が沢山ないと「満足感が味わえない、残すのが最高のぜいたく」、と書いている。それはそれで理解できる。
もともと私は、古代ギリシア人はオリーブ油を身体に塗り、垢がふやけたところでそれを木製のヘラでそぎ落としていた、という記述を本で読み、それで「そうか、それならオリーブ油は皮膚にやさしいはず」と思い、冬場の皮膚の乾燥止めに利用し始めた。
ところが精神科の恩師O先生から、歳暮に高級オリーブ油が届いたことから、「ワセリン代わりだけでは、もったいない」と思い、ドレッシングに使い始めた。写真の「BOSCO」ラベルのビン入りオリーブ油は、これから「アンチョビ詰めオリーブ」に振りかけるところである。
オリーブ油にはリノレイン酸など、ヒトの体内では合成できない「必須脂肪酸」が含まれているから、積極的に利用する価値があるのはよく承知している。
家内が後から作ってくれた大皿には、温野菜の上にマヨネーズが掛けてあるが、私はこれとキュウリのピクルスにもオリーブ油を掛けて食う。缶詰のチキンを食った後は、ガラス小皿に残りの液を移し、オリーブ油で薄めて飲む。
ディナーの際は、区画がついた平皿の料理にマヨネーズ、ミートソース、ケチャップなどが多用してあるので、食った後、これにオリーブオイルを垂らし、流動性にして一区画に集め、プラスチックの平先スプーンを使って、こさげるようにして全部食べる。
禅の懐石では、最後にお茶か湯で飯椀を洗い、それを湯飲みに移して箸を洗ったのち、飲み干して食後の片付けを自分でする。昔の農家の「箱膳」もそうだった。まあ、あれに近いことやっている。
クルミは子供の頃に家の庭外れに樹があり、「堅い」という印象があったが、あれは外殻のことだった。アメリカ産のクルミを元に、神戸で加工された「無塩クルミ」は、インド産のカシューナッツよりも軟らかく噛みやすく、100gm当たりのタンパク質14.0gm、脂質68.7gm、糖質4.2gm、食物繊維9.8gmと、インド産カシューナッツよりも糖質が少なかったし、軟らかくて美味い。
で、手前の3皿でコップの焼酎を1杯飲む、2杯目は後の皿に手を付けるが、さすがに全部は食いきれずに、三分の一程度が残り、「後は明日食うから」と家内にいうハメになる。
確か、「日本書紀」に何とかという天皇が、昼飯に焼いた塩鮭を食し、皮を残して、「それは晩酌の肴にするから棄てないでくれ」と近習に言ったという話が書いてある。まあ似たような心だ。
今夜はその間に、NHK21:00ニュースの後半と「報ステ」の出だしだけを見た。一日のTV視聴時間は1時間もないが、地上波、BSともに受信料はちゃんと払っている。
というわけで昌さん、バター20gm/日だけでなく、オリーブ油もちゃんと食しているのでご安心下さい。日野原先生に会われたら、よろしくお伝えください。昔、広島市で一度テーブルを共にしたことがあります。
<付記=上海に出張中の渡邊氏から「この肴なら大丈夫でしょう。ローマの皇帝もたべていなかったようなごちそうです」という返事があった。そりゃほめすぎだよ。ローマ人は食べ過ぎたら指をのどに突っ込んで嘔吐して、また食って飲んでいた。彼らはたぶん質より量を重視したのであろう。
その間にも、こちらは200グラムのバター1箱を平らげ、2箱目に取りついた。これも10日で食べ切るだろう。>
オリーブオイルの主成分はオレイン酸。αリノレン酸は通常1%未満だ。
αリノレン酸を多く含むのは、エゴマ油(50%以上)。キャノーラ油(アブラナ)でも10%くらい含有しているらしい。
クルミは、かるく煎るとさらに美味しいよ。