私の山歩きは、当初は山に咲く花を見ることが目的だった。
そのうちに花以外の要素、例えば樹木や紅葉、山岳風景などにも愉しむようになった(しかし小鳥や星空までは未達)ので、
花が咲く夏以外の季節にも、また花がほとんど咲かない山にも登るようになった。
とは言っても、山の花が好きなことに変わりない。
可能ならば、山域ごとに花の図鑑のようなものを作ってみたいと思っていた。
ところが山に咲く花は雪解けと同時に咲くものもあれば、秋近くなって咲き出すものもあるし、地味で見過ごしてしまうものも多い。
夏場に一、二回登ったくらいでそれらを網羅することは不可能だ。
そのため、私の場合は同じ山に時期をずらして何度も登ることにしている。
複数の登山ルートのある山では可能な範囲で複数のルートを季節を変えて歩いてみた。
ただし道の無い山域や自然保護の観点から立入りが制限されている場所には行かないようにしている。
自身の作る花図鑑シリーズの皮切りとして鳥海山を選んだ。
この山は有名なので写真集は何冊か出版されており、そのうちニ、三冊は過去に購入した記憶が有る。
ところが何故か花を主体とした書籍出版はほとんど無いようだ(有っても種類数が少なく、とても図鑑とは言い難い)。
鳥海山は花の百名山にも加えられているが、近隣の月山や焼石岳に較べると種類数はやや少ないように感じる。
反面、独立峰ゆえか、チョウカイフスマやチョウカイアザミのように山名を冠する固有種には恵まれている。
また初夏のハクサンイチゲ、盛夏のニッコウキスゲやハクサンシャジンなどのお花畑は
国内でも屈指の(高山)花風景ではないかと勝手に思っている。
2020/06/24 長坂道のハクサンイチゲ群生。
本頁では、概ね六月から七月上旬にかけて咲く花のうち、
比較的低所、鉾立ルートならば歩き始めの登山道沿いから賽の河原にかけて見かける花を扱ってみた。
何か間違い等にお気づきの方は遠慮なくご指摘頂きたい。
2018/06/10 鉾立から奈曽渓谷と鳥海山本体を望む。
登山口の鉾立付近の標高は約1150m。本来ならば、ブナ林かアオモリトドマツ林に覆われる高さだが、
鳥海山では針葉樹のアオモリトドマツを欠いており、強風のせいか、ブナ林も発達していない。
日本海側の高山に特有な「偽高山帯」とも呼ばれる低木林の中をしばらく歩いて行く。
まずは低木の花から。
ナナカマド Sorbus commixta
初夏の花の時期よりも、紅葉や実の時期の方が目立つ樹木だ。よって秋にも再登場の予定。
タムシバ Magnolia salicifolia
量的には鉾立よりも低い場所や祓川、猿倉ルートの下のブナ帯で多く見かける。
ナナカマド 2018/06/10 鉾立付近にて。 タムシバ 2015/05/30 鉾立付近にて。
アズキナシ Sorbus alnifolia, Aria alnifolia
鉾立の展望台に寄ったらいっぱい咲いていた。それまで見たことの無いタイプの樹木の花だったので、
詳しい友人達に聞いたら、低山に多い樹木、アズキナシではないかと教えて頂く。
葉の形は違うが、ナナカマドとは近縁のようで花の形はよく似ている。
2018/06/10 鉾立付近にて。
ミヤマスミレ Viola selkirkii
山地性のスミレで奥羽山系の登山道脇ではよく見かけるが、鳥海山ではあまり多くない。
ハクサンチドリ Dactylorhiza aristata
代表的な高山植物で、月山や奥羽山系ではとても豊富だが、鳥海山ではそれほど多くない。
しかも丈が低く、花付きも貧弱なものぱかりだが、何故なんだろう。
ミヤマスミレ 2015/05/30 鉾立付近。 ハクサンチドリ 2016/07/02 鉾立付近にて。
ウゴツクバネウツギ Abelia spathulata var. stenophylla
こちらは低山帯で多く見かけるが、登山道沿いでは鉾立付近でしか見たことがない。
2018/06/10 鉾立付近にて。
タニウツギ Weigela hortensis
こちらは低地~低山帯でごく普通に見かけるが、登山道沿いでは鉾立付近でしか記憶が無い。
高所のものは花色が濃くなる傾向が有る。
アカモノ(イワハゼ) Gaultheria adenothrix
タニウツギ 2018/06/10 鉾立付近にて。 アカモノ 2018/06/10 鉾立付近にて。
ゴゼンタチバナ Cornus canadense
亜高山帯に一般的な種類だが、鳥海山ではあまり見かけない。
2018/06/10 鉾立付近にて。
マイヅルソウ Maianthemum dilatatum
ノウゴウイチゴ Fragaria iinumae
奥羽山系の登山道脇ではよく見かけるが、鳥海山にはあまり多くない。
マイヅルソウ 2016/07/02 鉾立付近にて。 ノウゴウイチゴ 2018/06/10 賽の河原手前付近にて。
ミヤマツボスミレ Viola verecunda var. fibrillosa
鉾立から歩き、賽の河原が近づくと登山道の石組の間にびっしりと咲いている。
同じく鳥の海分岐から千畳ヶ原へ降下する登山道石組にも多かった。
開花時期は初夏から盛夏と幅がある。
オオバコ同様、人臭い場所には多いのに、それ以外ではさっぱり見かけない。
2020/07/30 千畳ヶ原入口にて。
ツルタチツボスミレ Viola grypoceras var. rhizomata
御浜の手前の登山道脇で少数見かけた。
2016/07/02
サンカヨウ Diphylleia grayi
低山帯で多く見かけるが、鳥海山の登山道沿いではほとんど見ない。この個体は花弁が少し透けていた。
シラネアオイ Glaucidium palmatum
奥羽山系の登山道脇ではよく見かけるが、鳥海山にはあまり多くない。
サンカヨウ 2016/07/02 賽の河原手前付近にて。 シラネアオイ 2018/06/10 賽の河原手前付近にて。
ミツバオウレン Coptis trifolia
奥羽山系の登山道脇ではよく見かけるが、鳥海山にはあまり多くない。
次頁のミツバノバイカオウレン(コシジオウレン)の方が多いように感じる。
2018/06/10 賽の河原手前付近にて。
「初夏2」へ続く。
生の写真で見る可憐で清楚な花。
名も知らぬふくろうですがシッカリ勉強します。
問題集を作られる予定は? (笑)
美しい写真有難うございます。
全部で8~9頁になる予定です。
試験問題も検討してみますか(´π`;)☆\バキ
冒頭、つい愚痴ってしまいました(が、今朝削除しちゃいました。)
お見舞い申し上げます。
前々から思っていたことですが、モウズイカさん、山々に咲く花図鑑を出版される予定はないのですか。
山の関係のブログを見ることがありますが、モウズイカさんのように、沢山の種類の花を取り上げてくださっているブログはそう多くはないです。
今は山に登らなくなって、こちらで、山で出会った花と再会し懐かしく当時を思い起こしたり、こんな花もここで見ることが出来るんだと、楽しませていただいてます。
続き、待ってます。
書籍の出版は、以前(2001年)、園芸ガーデニング関係で一冊経験しております。
当時もそうでしたが、折からの出版不況で
図鑑のようなものの出版はかなり難しいものと認識しております。
当面の間は、ネット上、ブログでこのように展開して行くつもりですので、
折りに触れてご意見感想等をお聞かせいただければさいわいです。
図鑑を作られるほど何度も詳しくご覧になっているのですね。鳥海山への愛情が伝わってきます。
ツルタチツボスミレがありましたか。
普通のタチツボスミレと思いこんでしまい、葉をしっかりと見ませんでした。
鉾立からすぐのオオバキスミレの群落に、ミヤマキスミレと思われる個体がありました。
ツルタチツボスミレは、私自身、スミレの仲間は詳しくないのでfacebook上で詳しい方に同定してもらいました。
ミヤマキスミレは、先月(2023年7月4日)、笙ヶ岳に行った際、山頂でそれらしきものを見出しました。
やはりfacebook上で同時期、別の山でミヤマキスミレを見たという御方に同定を依頼したら、
この御方、何故かスルーされました。
ミヤマキスミレ自体、オオバキスミレの種内変異のひとつのようで
固定的な変種とも言えないようです。
個人的にはオオバキスミレで通そうと思っています。