(本頁は「花図鑑3(初夏の高所湿原と稜線)」の続きである。)
7月になり、八幡平の湿原でよく目立つ花は(年にもよるが)ニッコウキスゲやコバイケイソウだ。
両種ともに大場谷地など低所では6月から咲き出すが、高所では盛夏の7月中旬頃が見頃となる。
ニッコウキスゲ(ゼンテイカ) 2018/07/14
コバイケイソウとレンゲツツジ 2015/06/24
コバイケイソウはもしかしたら八幡平で最も多い花かもしれない。
ただし開花にはバラツキがあり、何年かに一度の豊作年の時の開花量は凄いが、そうでない年は(T_T)しょぼい。
コバイケイソウ 2018/07/14
(右上)シナノキンバイ 2018/07/14
シナノキンバイは日本アルプスではハクサンイチゲと並んで一般的な高山植物だが、奥羽山系では何故か少ない。
私は八幡平と焼石岳でしか見たことが無い
(一方のハクサンイチゲは八幡平には無い。東北では羽後朝日岳を最後に、それより北には生育しない)。
よく似たミヤマキンポウゲは多く見かける。
ミヤマキンポウゲ 2014/07/05 上の方の大きな二輪はシナノキンバイ。藤七温泉付近にて。
ハナニガナ 2018/07/14
(右上)ネバリノギラン 2018/07/14
ハクサンボウフウ 2018/07/14
(右上)ウサギギク 2018/07/14
ヨツバシオガマ 2014/07/05
ヨツバシオガマは奥羽山系では八甲田山から秋田駒ヶ岳にかけて分布している。
八幡平では比較的多く見かける。
ヨツバシオガマ 2014/07/05(左奥はハクサンチドリ)
(右上)ハクサンチドリ 2011/07/19
ハクサンチドリはアスピーテラインの道端などに雑草のように生えているのを見かけるが、
それ以外の場所ではあまり多いとは感じない。不思議な生え方をするランだと思っている。
イワイチョウ 2018/07/14
(右上)マルバシモツケ 2018/07/14
ウラジロヨウラク 2014/07/05
ゴゼンタチバナ 2019/07/20
モミジカラマツ 2018/07/14
(右上)カラマツソウ 2018/07/14
タカネアオヤギソウ 2018/07/14
(右上)ヒロハユキザサ(ミドリユキザサ) 2018/07/14
真夏の八幡平ではワタスゲもよく見かける。よく目立つ白い綿毛は花ではない
(花の写真は「八幡平の花図鑑1」に掲載済み)。
ウィキペディア解説によると、
「綿毛は種子(正確には果実、更に言えば痩果)から出ているのではなく、その基部から伸びている。
これは花被片と呼ばれるもので、普通の花の萼や花弁に当たる。このような種子はタンポポと同様に綿毛と共に風で飛ぶ。」
とあった。
黒谷地湿原や大場谷地の群生はみごとだ。
大場谷地のワタスゲ群生 2009/07/06
以上。
「花図鑑5(晩夏)」に続く。
(本頁は「花図鑑2(初夏の亜高山帯針葉樹林)」の続きである。)
八幡平は山頂部から中腹にかけてあちこちに湿原が散在する。
本頁では比較的高所にある湿原で早い時期(6月~7月上中旬)に咲くものを集めてみた。
ヒナザクラの群生 2015/07/06
ヒナザクラは典型的な雪田性の高山植物。八幡沼やガマ沼周囲の湿原の群生はみごとだ。
ヒナザクラ 2018/07/14
(右上)ズダヤクシュ 2015/06/24
ズダヤクシュは樹林中にも多い。
ヒメシャクナゲは八幡沼周辺や黒谷地など高所のミズゴケ湿原で見かける。
ヒメシャクナゲ 2014/07/05
ツルコケモモ 1980年代、撮影月日は不明。大場谷地で見かけた。
ミツガシワは湿原よりも池沼の中に多い。
ミツガシワ 2015/06/24
(右上)レンゲツツジ 2015/06/24
レンゲツツジは八幡平では比較的低所の湿原、大場谷地や大沼などで見かけた。
チングルマは主に高所の湿原に生育し、早く咲くものが多い。
チングルマ 2018/07/14
オオバミゾホオズキ 2018/07/14
(右上)ムシトリスミレ 2018/07/14
ハクサンオオバコ 2018/07/14
(右上)エゾノクロクモソウ 2018/07/14
アオノツガザクラ 2018/07/14
続いて7月の樹林内で見かける花を。
ギンリョウソウはブナ帯から亜高山帯(アオモリトドマツ林)まで広く分布する。
そのため開花時期も標高によって幅が有り、6月から7月下旬まで長期間見られる。
ギンリョウソウ 2018/07/14
(右上)ノビネチドリ 2015/07/06
ノビネチドリは八幡平ではブナ帯から山頂付近の草地まで広く生育している。
山頂のすぐ近くでよく似たハクサンチドリと並んで咲いていたのには驚いた。
ベニバナイチゴ 2014/07/05
源太ヶ岳山頂部で見かけた花たち。
ハクサンシャクナゲは全山に多いが、特に源太ヶ岳山頂部稜線の群生はみごとだった。
ハクサンシャクナゲ 2018/07/14
(右上)コメツツジ 2018/07/14
ミヤマトウキ 2018/07/14
(右上)サマニヨモギ 2018/07/14
サマニヨモギは北海道以外では岩手の早池峰山と八幡平のみ。源太ヶ岳で少数見かけた。
以上。
「花図鑑4(盛夏)」に続く。
(本頁は「八幡平の花図鑑1」の続きである。)
本編では初夏、主に亜高山帯針葉樹林(アオモリトドマツ林)で見かけた下草の花を列記してみる。
諸桧岳付近のアオモリトドマツ林 2018/06/18
ご覧の通り、ブナ帯との共通種が多く見られた。
ショウジョウバカマ 2018/06/18
(右上)ツバメオモト 2018/06/18
タケシマラン 2018/06/18
ユキザサ 2014/07/05
(右上)マイヅルソウ 2015/06/24
コミヤマカタバミ 2018/06/18
(右上)ミヤマスミレ 2018/06/18
ウスバスミレ 2019/06/09
オオバキスミレ 2019/06/09
(右上)キバナコマノツメ 2018/06/18
八幡平では黄色いスミレはオオバキスミレが多く、ブナ帯から山頂稜線まで広く分布する。
高山性のキバナコマノツメは少なく、私は畚岳付近で見たきりだ。
サンカヨウやシラネアオイも
ブナ帯から亜高山帯(アオモリトドマツ林や山頂部の草地)まで広く分布する。
そのため開花時期も標高や残雪の多寡により5月から7月いっぱいまでと幅が有る。
サンカヨウ 2016/05/15
シラネアオイ 2018/06/18
ヒメイチゲ 2018/06/18
(右上)ミツバオウレン 2019/06/09
アオモリトドマツ林で見かけた低木と矮性低木。
ムラサキヤシオ 2018/06/18
コヨウラクツツジ 2018/06/18
イワナシ 2018/06/18
アカモノは多くの場合、イワナシに少し遅れて、6月下旬~7月中旬に開花する。
アカモノ(イワハゼ) 2019/07/20
(右上)ツマトリソウ 2018/06/18
草花に戻って、ツマトリソウは草地や笹原でもよく見かける。
開花時期も生育地により、6月~7月と幅が有る。
キヌガサソウ 2019/06/09
キヌガサソウは日本固有種。
白神山地の一部(登山道は無いらしい)を除けば、一般的には八幡平が分布の北限とされる。
八幡平では山体のあちこちで小規模な群生を見かける。
山頂近くの「謎の穴」の群生地は積雪が多いため、7月中旬以降に開花するが、
それ以外の場所では6月中に咲くものが多い。
以上。
「花図鑑3(初夏の高所湿原と稜線)」に続く。
八幡平は岩手県、秋田県の北部県境付近にある火山群で、
地形がなだらかなので、かつてはアスピーテ(楯状)火山とされた。
そのため八幡平の主要部を東西に貫く観光道路はアスピーテラインと呼ばれるが、
現在は、山頂が侵食や爆発により台地状になった成層火山(偽アスピーテ)
と分類されている(この箇所はウィキペディア解説に基づく)。
標高1614mの山頂を含め、山体上部の大部分は針葉樹(アオモリトドマツ)に覆われている。
そのため近隣の秋田駒ヶ岳や岩手山のように高山植物は多くないように見えるが、
森林性の種類は豊富だし、山体のあちこちに散在する沼や湿原は
湿性、雪田性の高山植物に恵まれている。
また一部のピークや稜線には風衝地もあり、乾燥を好む種類も少数ながら見ることが出来る。
トータルの植物種類数では、秋田駒ヶ岳や岩手山にも引けを取らないように感じる。
しかし山域が広大で、花も分散して咲いているので、一回の山行きでカバーすることは難しい。
2018/07/31 大深湿原から八幡平山頂方面を望む。
参考マップ
八幡平は広大だが、
花が比較的まとまって咲いている場所が幾つか有る。
◆八幡平山頂部、八幡沼とガマ沼の周囲
◆黒谷地湿原~茶臼岳山頂
◆藤七温泉付近の岩手側斜面
◆源太ヶ岳山頂~大深湿原
秋田県側では
◆大場谷地
◆大沼湿原
◆蒸の湯温泉奥の湿原、長沼など。
◆焼山の山頂部や後生掛温泉などの噴気孔地帯。
掲載順はおおむね、開花が早いものからとした。
果実や紅葉が特徴的な一部の種類は複数回登場させている。
植物名の同定にあたっては、既存の高山植物関係の図鑑の他に、
自然公園財団八幡平支部・発行のパンフレット「八幡平山頂・花あるき」も参考にさせてもらった。
何か間違い等にお気づきの方はご指摘頂きたい。
まずは五月中下旬、玉川温泉付近や大場谷地、大沼など低所に咲く花たちから。
これらのエリアではブナなど広葉樹と亜高山帯の針葉樹が混生している。
タムシバ 2016/05/15
アキタブキ 2016/05/15
(右上)エゾノリュウキンカ 2019/06/09
八幡平は湿原が多い。
雪解けとともにミズバショウやエゾノリュウキンカが咲き出す。
両種の群生は西端にある大場谷地湿原がみごとだ。
ただし残念なことに、この湿原は2017年、近隣でクマによる死亡事故があって以降、
立ち入り禁止になってしまった。解除の見通しは立っていない。
なお小規模の群生は大沼や他の湿原でも見られる。開花時期は積雪の多寡により幅が有る。
大場谷地のミズバショウ群生 2016/05/15
大場谷地のミズバショウ 2012/05/27
(右上)コバイケイソウの芽出し 2012/05/27
ニッコウキスゲの芽出し 2013/06/10
(右上)ツルキツネノボタン 2010/06/15
ワタスゲの花 2009/06/02
(大場谷地では)ミズバショウが終盤になるとタテヤマリンドウが咲き出す。
タテヤマリンドウ 2010/06/15
湿原周囲の樹林下には低山と共通のスプリングエフェメラルが多い。
ニリンソウ 2016/05/15
(右上)エンレイソウとキクザキイチゲ 2019/06/09
カタクリ 2016/05/15
(右上)エゾエンゴサク 2016/05/15
ミヤマカタバミ 2019/06/09
六月上旬、高所の山腹や樹林下はまだ雪に覆われていることが多く、花はまだ咲いていない。
しかし後生掛温泉や焼山山頂など噴気孔のあるエリアで
早く雪解けした場所ではイソツツジやイワカガミが咲き出していた。
イソツツジ 2019/06/09
(右上)イワカガミ 2019/06/09
ミネズオウ 2019/06/09
主稜線にて。
コケモモ 2018/06/18
以上。
「花図鑑2(初夏の亜高山帯針葉樹林)」に続く。
(本頁は「サワオグルマがいっぱい。」の続きである。)
5月15日の午前中は仙北市のとある山で七年ぶりにトガクシショウマを見た。
その後、O氏と別れ、単身で八幡平方面に向かった。
今話題のドラゴンアイや大沼湿原で花を見ようと思ったからだ。
途中、玉川ダムサイトに立ち寄り、そこで昼飯とした。
こちらは宝仙湖越しに、面白い形をした小山が並んで見える。
左から黒森、そして女神山、男神山の重なり。それらの右奥に連なる緩い山は焼山火山だ。
宝仙湖から先は緑が濃くなった森の中を駆ける。
玉川温泉より先の道路端には昨年までと同様、入林禁止の規制線が張られていた。
ところがどうしたことだろう。
鹿角市との境界、大場谷地の駐車場には規制線が無くなっていた。
ここは確か2017年5月、クマによる悲惨な死亡事故が有って以降は
駐車場がロープやバリケードで封鎖されており、湿原も立ち入り出来なかったのだが・・・。
湿原から戻って来た人も居たので、私も入ってみることにした。
トガクシショウマ同様、七年ぶりだ(2017年の記録はこちら)。
なお先ほどのブナの葉隠れ姫探索の時と同様、鈴と笛はしっかりと身に着けていた。
湿原は既に雪が融けて褐色の枯原が現れていた。
周囲の森のブナの新緑がとても奇麗だった。
五分ほど歩くと奥の方でミズバショウが咲き出していた。
個人的には今年初めて見るミズバショウ群生だった。
ミズバショウは奥へ行くほど密度が濃くなった。
黄色い花が混じって咲いている。
これはエゾノリュウキンカだ。
振り返ると
バックのお山は焼山火山(1366m)。
(右上)エゾノリュウキンカをアップで。
数は少ないが、他の花を。
濃色のキクザキイチゲ
アキタブキ
(右上)ミズバショウ
元気な緑の芽出しはコバイケイソウ。
六月中旬以降はこの花がこの湿原の主役となる。
もうそろそろおいとましよう。バックのお山は焼山火山(1366m)。
湿原の奥の林にはサンカヨウが群生しているが、今はまだ雪の下敷きだ。
こちらのサンカヨウは湿原を抜けて鹿角市側に少し下りた林で見たもの。
同じ場所でシラネアオイとニリンソウ。
オオバキスミレ
(右上)スミレサイシン
結局、今日は八幡平の大沼湿原やドラゴンアイに行けなかったが、
ミズバショウとリュウキンカは大場谷地で十分堪能できた。
以上。