カジュアル・アミーガ         本ブログの動画、写真及び文章の無断転載と使用を禁じます。

ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

こちら、自由が丘ペット探偵局-21-

2008年08月01日 | 投稿連載
 こちら、自由が丘ペット探偵局  作者 古海めぐみ   
        21
 ちょうど同じ時刻。犬飼健太も大きな欠伸をしていた。場所は自由が丘の
マリ・クレール通りの本屋の二階にあるカフェのカウンター席だった。
健太はエスプレッソのカップを口に持っていったが空っぽでペロリと舌でカップ
の淵を舐めて、水を代わりに飲んだ。
「ああ。犬飼さん。お代わりします?」
佐藤沙織がハンドバッグから封筒を出しながら云った。
「いや。もういいっす。」と答えて沙織から受け取った謝礼の封筒の中を指を
入れて確認すると、急にニヤニヤと頬がほころびた。
「確かに。有難うございます。」
その封筒のお金は、健太に頼んだ悪質ブリーダーの隠れ家の発見に対するお礼
だった。
「あのー。わんにゃん天国堂のワンちゃんがどんなとこで飼育されているか、
場所がわかっただけでもなんだか少しほっとするわ。」
「あのケージの狭さはひどい。部屋の奥にもあってワンワン鳴いていたけど
ほとんど散歩もさせていないヤツがいるんじゃないかな。」
「ええー。それじゃ死んでしまう。」
「裏庭も昼間もう一度行って見たけど草ぼうぼうで売れ残った成犬がどうなっ
ているか。一戸建てと云っても小さいから、夫婦ふたりで世話するのも大変だ
と思うね。」
「わたし、今度あそこから被害者がでたら、ミカさんたちと押しかけるわ。
絶対。」
と立ち上がった。
「まあ。ああいう強かなバァバァは、なかなか尻尾を出さないと思うよ。」
健太もそういいながらレジの方へ行った。
「ここは、私、払います。」
佐藤沙織は、健太の前を塞いでコーヒー代をカードで払った。
店の入口から階段の下まで壁にショーケースを作って陶器や花瓶を飾られて
いた。沙織と健太が降りて行きながら、そういえばと思い出したように迷子の
ナナの話を沙織が持ち出した。
「あの、保健所で保護されたナナちゃんって言いましたっけ、その後どうなり
ました」
「はい。ナナ公。」
「せっかく見つかったって云うのに飼い主が引き取らないなんて・・・」
「同じ、あの、ワンニャン天国堂で購入した犬ですよ。」
「そうなんですか。でもとっても立派な犬みたい。わたし、引き取ろうかしら。
そのワンちゃん。」
と立ち止まって振り返ったので健太の胸に沙織の鼻がぶつかった。
嗅いだこともない甘い香水が健太の鼻先に立ち上った。
健太は思わずくしゃみをした。
「いやいや。保健所は、飼い主以外の人からの貰いうけはしないんです。」
「だって一週間で殺されちゃうんでしょ。」
「最終的に東京都の動物愛護センターへ送られてからナナを見つけて貰い受
けるしかないんです。」
「動物愛護センター?」
「城南島にある処刑所です。」
「まあー」
「嫌なもんです。あまり行きたくないっす。」
「じゃナナちゃん、誰かが貰わないと殺されちゃうの。わたし、何とかして
やりたい。」
「まあ、どうせぼくが貰いに行こうと思っていたので引き取ってきたら、
ナナを見てよければ飼って戴いてもいいですけど・・」
「そうですか。是非会わせてください。そして是非ナナちゃんを助けて
ください。」
「はい。」
夕方の買い物客で賑わうマリ・クレール通りへ健太も沙織も出てきた。
「じゃ、ナナの件で連絡します。」
「お願いします。わたし、ちょっと夕食の買い物して帰りますから、これで。」
と佐藤沙織は、丁寧に頭をさげて石畳をパンプスで歩いて行った。
健太はその腰のくびれのキレイな沙織の姿が人ごみに見えなくなるまで見送った。
「先輩、ヒトのお得意さんを盗らないでよ。」
健太は、?と振り返った。
「うちの子供服のメンバー会員ですから。佐藤さん。だめですよ。誘惑しちゃ」
メガネの奥からイヤらしい目つきで上田祐二が吸っていたタバコを携帯
フォルダーにねじ込んで健太の後ろから声をかけた。
「冗談でしょ。ユウジ。オレ、トシマだめだって知ってるでしょ。仕事だよ。
仕事。」
「本当かな・・・」
「バカ野郎。」
「まあ、冗談ですって。冗談。」
「なんだい。お前。こんなとこで。まじめにショウバイやれよ。サチさんや
由美ちゃんにばかり店任せないでよ。」
「親じゃないんだから。そういうコゴトはやめてください。こっちは、先輩
を探しに来たんですから。」
「オレを?何?」
「春ちゃんがさっき来て、先輩とぼくに頼みがあるって・・」
「春ちゃんがー」
途端に健太の声のテンションが一オクターブ上がって、目が爛々と輝いて外灯
が点るみたいにぱぁと明るくなった。
「あの、おばあちゃん。ハルさんっていう」
「ああ。行方知れずのハル婆さんー。」
「そのハルおばちゃまから電話が春ちゃんとこにさっきあったんだって。」
「ほお、よかったな。息子夫婦の家に帰ったのか。」
「それが奥多摩湖にいるって。」
「奥多摩湖?」
「奥多摩の森にいるけど、ホテルに戻れないって・・」
「バカか、だからボケ老人はやっかいなんだよ。すぐに息子さんに知らせたのか?」
「駄目なんです。息子さんに知らせたら死ぬって云ってるらしい。」
「バカの三乗か。あの婆さん。」
「それでオレの車で春ちゃんと健太先輩で向かえに行ってほしいって・・」
「って誰が?」
「もちろん春ちゃんが。」
「今から奥多摩までかよ!」
祐二は鼻の頭に汗をぷつぷつとかいて、しょうがないでしょという顔で頷いた。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

リスケット~シーちゃんおやつ手帖57

2008年08月01日 | 味わい探訪
鎌倉ニュージャーマンと言えば、
リスケットの他に「鎌倉カスター」が有名です。
ふわふわのスポンジ生地の中にカスタードクリームが
たっぷり入っていて、こちらも美味しいです☆

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする