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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

さすらいー幽霊屋敷14

2009年05月22日 | 投稿連載
幽霊屋敷 作者大隅 充
      14
サーチライトの中でその幽霊の目が二つピカッ
と光った。
僕は、一階の床下から見たあの、白い幽霊が戻
ってきたとすぐにわかったけれど、真正面から
今度ははっきりと見た。
それは、幽霊ではなく一匹の大きな犬だった。
ヴヴヴヴっっっ
オオカミの牙を剥いて僕と秀人に唸った。
焦げ茶色のビロードの毛に包まれた巨大な犬は
白いカーテンを首に巻きつけて、裾の方が切れ
切れに破れて引きずっていた。ちょうど白夜の
マントを着た筋肉質のドラキュラのようにその
犬は見えた。
赤い口から泡だった涎を垂らして、ゆっくりと
艶々の長い脚で近づいて来て来た。
ぼくはと秀人は兄ちゃんの後ろに隠れた。
ラリー!
タツヤ兄ちゃんは、その犬を呼んだ。
するとクウンと鼻で鳴くと尻尾を振りながら頭
を低くして兄ちゃんの股の中に入ってきた。
「ラリー。又野犬と戦ったのか。」
とラリーの頭と顎を撫でて、首を抱きしめた。
ラリーと呼ばれた大型犬は、甘えるような声を
出してクンクンと鳴いた。
「どうしたんだ。これを引っ掛けたのか。」
と首に巻きついている白いカーテンをライトを
当てて外しにかかると、一番最後の巻きの先が
金属のフックになっていて、それがラリーの首
の皮に突き刺さっていたのだった。
「これじゃ、痛くてたまらんべ。」
兄ちゃんは、恐る恐るフックを抜いた。
わぁぁーん。とラリーは大げさに鳴くとカーテ
ンが外れたうれしさに兄ちゃんの口をペロペロ
といつまでも舐めた。
わかった。わかったーよーし、わかったー
僕は、すっかりここが幽霊屋敷でソウイチロウ
のミイラと一緒にいることなんか忘れて今日は
じめて暖かい気持ちになった。
そしてふっと振り返ったら、ラリーと兄ちゃん
と僕らの魔法の氷が解けた生温い心の通う様子
をデスクのソウイチロウくんがじっと微笑んで
見ていた。
x    x    x
 次の日。町はヤマモト洋館のミイラのことで
大騒動になったが、僕は山元惣介翁が自分の一
人息子を火葬せず内緒で屋敷の隠し部屋でミイ
ラにしてずっと死ぬまで一緒に住んでいたとい
う北海道中を騒がすスキャンダルなんかより、
タツヤ兄ちゃんが夜道にぽつりと言ったラリー
についての言葉がずっと引っかかって給食もほ
とんど食べずに残した。
それは、ラリーはあかりちゃんに頼まれてこの
シューパロの森で飼っているんだ、という告白
だった。
絶対誰にも言うなよ、と秀人と僕は念をされた
がどうして深田あかりさんは、あの巨大な犬を
内緒で森の幽霊屋敷で飼っていたのか、それも
タツヤ兄ちゃんに頼んでまで。
僕は、職員室で秀人と二人教頭先生にこっ酷く
叱られて正座させられても、夕方CATVの取
材チームが僕の家まで来て根掘り葉掘りインタ
ビューされて少し英雄気分になっても、頭の中
はずっとラリーとあかりさんのことだけがぐる
ぐると?マークのまま回っていた。
シューパロ湖から先の国道はまる一日通行制限
になって、警察と消防隊員と検死官とがヤマモ
ト洋館でソウイチロウくんを運び出す間誰も近
づけなかった。
 夜父ちゃんがタクシーで東京のテレビ局の若
いレポーターの女の子を逆方向から国道を回っ
てヤマモト洋館の建物が見える位置まで連れて
ってやったことを酒を飲みながらうれしそうに
身振り手振りでしゃべっていたが、その内カメ
ラマンの態度が悪かったが、レポーターの女の
子が可愛くて東京の娘っこは、いい匂いがした
と鼻の下をダラーリと伸ばして酔っ払いだすと
母ちゃんがフライパンでポカンと父ちゃんの頭
を殴った。
父ちゃんは、例によって夫婦喧嘩をすると駅前
の居酒屋に逃げて行った。
午前二時を過ぎて母ちゃんに言われて駅前まで
父ちゃんを迎えに行ったら、バッタリタツヤ兄
ちゃんにあったのでラリーのことをもっと詳し
く教えてもらった。
それは、こうだった。
去年の春。タツヤ兄ちゃんが保健所に連れて行
かれる捨て犬のラリーを預かった。しかし熊谷
のおじさんも犬嫌い、車で送り迎えをしていた
深田画伯も犬アレルギー。どうしようか困って
いたときに深田あかりさんがシューパロのヤマ
モト洋館でこっそり飼いましょうと提案したと
いうのだった。
しかしそのあかりさんも秋には東京へ引っ越す
ことになって、お年玉を貯めていた郵便貯金か
らあかりさんが十万円を兄ちゃんに預けてタツ
ヤ兄ちゃんが密かにシューパロの森で死にかけ
たラリーを飼っていたのだった。
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三原堂の池ぶくろう最中~シーちゃんのおやつ手帖94

2009年05月22日 | 味わい探訪
作家・江戸川乱歩が愛したことで有名なお店。
菓子の名前も「乱歩の蔵」「蔵のどら焼き」など、
彼に因んだ物が幾つかあります。
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