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ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

さすらいー幽霊屋敷15

2009年05月29日 | 投稿連載
幽霊屋敷 作者大隅 充
      15
ミイラのソウイチロウ君は、町はずれの火葬場で
助役の佐藤さんの元で葬式が行われた。
警察の取調べでは、十五年前のこの火葬場での惣
一郎君の遺骨の有無が問題になった。深い悲しみ
に包まれて密葬にしていわゆる人を集めての葬儀
を行わなかったのはいいが、火葬場は惣一郎君の
遺体をどうしたのかという疑問に対して夕張道央
葬儀社は、北海道日々新聞の取材に答えた。
それは、引退して今は老人ホームで寝たきりの温
田留蔵会長の口からその真相を語ったのが夕刊の
地方版に鉱山王のミイラ事件という大きな記事に
なって載った。
 当時葬儀社の社長をしていた温田爺さんは山元
惣介翁と懇意にしていて惣介翁の強い頼みで書類
上火葬したことにしたと語り、さらに元々北大の
生物学科を卒業していた惣介翁が自分の手で自分
の息子をミイラ処理するのを当時手伝ったという
ことがその記事に書かれていた。
 あの時山元惣介翁は息子の葬儀といっても偏屈
で小学校の関係者や町の人の誰も受け付けずにか
つての山元鉱産の関係者の数人で簡単に行われた
という古い記事のコピーも同時に新聞に載っていた。
当然誰もが札幌郊外の山元家の墓地に惣一郎君は
埋葬されているものと思っていた。
それが十五年もシューパロの洋館にミイラになっ
ていたんだ。そして女房も子供も早死にされて孤
独にひっそりミイラの惣一郎君と暮らしていた主
の惣介翁も五年後林道で心筋梗塞で倒れてあの世
に逝ってしまった。
誰にも隠し部屋のことを言わずに。
 やがてシューパロの洋館は廃屋になって十年。
借金の形で国有地として解体されることなく幽霊
屋敷と呼ばれるようになってしまった。新聞社の
取材に立ち会った熊谷の親父さんの話だとこの山
元惣一郎君に関わる真実の物語をホームのベッド
で葬儀屋の温田留蔵爺さんは、泣きながら語った
そうだ。
惣介翁がどれだけ一人息子の惣一郎君を愛してい
たか、あんな悲しい顔のオヤジさんを見たことが
ない。どうしても息子を手放したくなかった。
確かに悪いことだとわかっていたが手伝ってしま
った。そういうと温田爺さんは黙りこんだそうだ。
だからミイラの惣一郎君の火葬は、夕張道央葬儀
社がただで行い、助役の佐藤さんの呼びかけで町
の郵便局長や清水沢病院長、熊谷の親父さん、教
頭の数人で葬儀をすませた。
山元惣介翁の親戚縁者は、元々少なかったのに借
金で離散して行方が知れず結局かつて山元鉱業の
課長をやっていた助役の佐藤さんが自費で出して
やったのだった。
 ぼくは、タツヤ兄ちゃんと惣一郎君の葬儀をや
っている間もあれから毎日ラリーに餌やりに行った。
市役所の土木課の人が幽霊屋敷に新たに鉄の柵を
つくったので洋館に入れなくなった。
しかしタツヤ兄ちゃんは、裏の崖道から温室のあ
る庭へ廻るけもの道を発見して、ギリシャ彫刻の
ペガサスやビーナスが四隅に飾られた大理石のテ
ラスの軒下でラリーに餌をやった。
そして僕は、とっても重要なことを知った。
それは、このラリーがニ匹の白と茶の子犬を産ん
で育てていたことだった。
兄ちゃんは、ちょうど一ヶ月になるといい、実は
深田画伯のお嬢さんのあかりさんが東京に引っ越
す直前に生まれてこの子たちのこともあってラリ
ーの面倒を看るように頼まれたんだと男同士の秘
密だと硬く口止めされながらも話してくれた。
 僕は、丸っこくて人懐こい子犬にチャータとコ
ロと名づけられているのを知った。
特に茶色のチャータは、やんちゃでミルクをやる
ときでも僕の指をカリカリ噛んでなかなかじっと
抱かれてくれなかった。
白毛のコロは、メスで器量がよく大人しかった。
タツヤ兄ちゃんは、コロはたぶんメロン館の館長
の奥さんがすぐにでも引き取ってくれるだろうが、
チャータは俺らで面倒みるしかないなと優しい目
で言った。
母親ラリーからくっ付いて離れず僕らが手を出す
とチャータは、血が出るぐらいガリガリ噛んでち
っとも懐こうとしない。
大人しく尻尾を振るのは、餌のミルクをやる時だ
けだった。
でも僕は放課後秀人に内緒でラリーとチャータと
コロに会いに行くのがあかりさんとつながってい
るようで楽しくてならなかった。
そのうちタツヤ兄ちゃんは、僕のことをすっかり
信用してくれて三日に一回は、僕ひとりで餌をや
りにいくようになった。
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新潟・マツヤのロシアチョコレート~シーちゃんのおやつ手帖95

2009年05月29日 | 味わい探訪
今回初めてお菓子のパッケージを描くことに挑戦しました。
マトリョーシカ型の箱はあまりに可愛いくて、描かずには
いられませんでした…!
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