カジュアル・アミーガ         本ブログの動画、写真及び文章の無断転載と使用を禁じます。

ある日カッパ姉ちゃんとカメラおじさんの家に一匹の子犬がやってきた。
日々のうつろいの発見と冒険を胸に生きていこう!

松屋・ミッフィーのクッキー~シーちゃんのおやつ手帖136

2010年05月07日 | 味わい探訪
オランダの絵本作家ディック・ブルーナ氏が描く
「ミッフィーちゃん」が誕生して今年で55年。
それを記念して「ゴーゴー・ミッフィー展」が
5月10日まで銀座松屋にて開催中です。
会場にはミッフィーの絵本原画や、55周年を祝
うバースデー・カードなどが展示されています。
また、絵本や文房具、食器や衣類など可愛いオ
リジナル・グッズもたくさん販売中で見逃せません!
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

さすらいー若葉のころ15

2010年05月07日 | 投稿連載
若葉のころ 作者大隅 充
     15
ちょうどその時。アルバイトのホール係の稲田さ
んが事務室に入って来て、佐伯さんに早引きする
ように言われて降りて来たと言って更衣室へ入っ
て行く。
「そうなの。電車もバスもこのままだと止まるかも
しれないよ。早く帰ろう」と彼女に声をかけた私は、
ホールのレジ締めと戸締りをするために4階の展望
食堂へ上がって行く。
 私は、照明が落とされて薄暗いホールの壁一面の
ガラス窓のすべてにブラインドを下ろして、展望食
の入り口に閉店いたしましたというプレートを下げ
て鍵をする。扉の施錠を確かめて廊下の突き当たり
のエレベーターに戻り、下りのボタンを押す。
烈しい雨風の吹きつける音で展望階が廊下ごと揺れ
ている。
 私は、エレベターに乗る時もう一度廊下の窓から
真下の岬の海を見た。怖ろしく牙を剥いた波が高々
と白い飛沫を上げて岬の防波堤を痛めつけているの
が檻の中で吠え立てる若獅子のようで二の腕に鳥肌
がたつ。
 すぐにエレベーターが来て、一階に着いた時乗っ
て来た支配人とすれ違った。
「ああ。すみれさん。佐伯さんたちがいたんで言う
の忘れていた。今朝早く女の人が君を訪ねて来たよ」
「わたしを?」
 私は、エレベーターの開いたドアを片手で押さえ
て支配人の話をもっと聞こうと耳を傾ける。
「まだ8時前だったので9時になったらすみれさん
は来るけどって言ったらもう一度来ますと傘さして
出て行った。」
「髪が長くて、私ぐらいの年でした?」
 私はトモミぐらいしか思いつかなかった。
「いや、若い子。奇麗な都会的な女の子」
「若い・・・」
「俺、そのまま天候のことで本部事務所にこもった
きりですみれさんにそのこと言うの忘れてて・・・
ちょっと変な子だった。」
「・・・何か言っていました。」
「それが・・ちょっと言いにくいけど・・」
ガタンとエレベーターのドアが閉まりかけたので支
配人と二人してドアをこじ開けて慌てて押さえる。
「何ですか・・言ってください。」
「それが・・怒ってた。」
「怒ってた?」
「・・・ふざけないで!いい年して見っとも無いこ
としないで!って・・・」
支配人は芝居っ気たっぷりに言う。
 私は、その再現された言葉が信じられなかった。
今の今まで誰からもそんな汚い言葉をあびせられた
ことがない。しかも支配人のその伝聞がかなりその
時のその女の激昂した感情を丁寧に物まねしていた
ので余計その暴言が生々しく私の心臓を直撃する。
「いやいや。俺が言ってるんじゃないよ。その若い
子が言ったの。そう伝えてくださいって・・・それ
も物凄い剣幕だった・・」
「誰かしら・・・思い当たらないわ。」
「すみれさんの名前を知っていた。その子。正直ナ
イフでも隠し持っているんじゃないかと思うくらい
の迫力だった。」
「いやー、誰だろう・・・そんな恨まれるようなこ
と・・・心当たりないわ・・」
「そうだよね。すみれさんぐらいマジメな人いない
ものね。」
 まったく見当がつかない。
「名前は・・・名前名乗ってませんでした?」
「それがかなり興奮していて・・お名前を教えてく
ださいと言ってもなかなか言わないで・・今わたし
が言った通り伝えてくださいと言って泣き出して出
て行こうとしたんだ・・」
「結局名乗らず・・・?」
「うーん・・それが・・ちょっとあまりにも失礼だ
と思って追い駆けて名前だけでもと言ったら、小さ
な声で『ワタケ』って言った。」
「ワタケー!」
 嵐の吹き荒れる音がすっと消えた。
一階のロビーホールも室内照明の色が赤々と広がっ
ているように感じる。それは嵐の外が夕闇の暗さに
なってこのマリエントを取り囲んでいたために室内
の明るさが際立っているからだった。私は、エレベ
ーターの扉から手を離して外を見て再び支配人に目
を向ける。
 支配人は、私の変化を探ろうとエレベーターから
降りて私の肩に手をおく。
「やっぱり知ってる人?」
「・・・いえ、誰かわからないです。」
「そうう。人違いかな・・同姓同名ってあるから。」
「すいません。変なことで・・・私、帰ります」と
車のキーをバッグから出すと歩き出してふと止まる。
「又来るって言ったんですか。」
「いや、この嵐じゃ今日はもう来ないだろう」と支
配人は、エレベーターに乗り込んだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする