子どもとうさぎとねこと音楽のある風景

息子いっちゃん(2006年3月生)と3匹のうさぎと3匹のねこのいる歌と琴が好きな主婦の記録

琴芸談 「なんかきれいね・・・」

2008年02月11日 | 私の周辺

「なんか、きれいね・・・」
これは実は忠告の言葉なんです。


先日の芸事の記事に続いて、お琴のお稽古のお話です。


高校3年生。
今までやってきたことや持っていた価値観に疑問を感じて、ぱったりと受験勉強をやめてしまった私。
尾崎豊の歌にはまっていたわけもないけど、大人の世界に反発を感じて・・・。
それでも、私はこれをやるんだ!という道も決められず、煮え切らないままに京都で浪人生活をして、翌春大阪の大学に入学しました。
大学で勉強する理由をなんとなくこじ付けで脇に挟みつつ、ひとつだけ、自分でしっかりと誓ったことがありました。
「私はお琴をがんばる!」

高校の勉強生活では自分はズタボロで、3年生のセンター試験の模擬で世界史が1ケタの点数のこともありました
高校2年生のときに琴教授資格の試験を受け、わけもわからないままに無心でお稽古と勉強をして、結果、何ら予想しなかったことに、成績は三番、優をもらいました。

小さいころから「あんたは何事も本気でがんばらん子や。」と、親によく嫌味を言われていました。
いつも全力投球している妹の方が人間的に上のような気もしていました。

遅い反抗期、勉強は一度ズタボロになり、家元制度にも反発を感じして、お琴の成績はよかったものの、お琴の社会では心がボロボロになるほど親や師匠に激しく叱られたことがありました(何を叱られたのかは忘れましたが)。
母親には勉強のことでも、お琴のことでも、鬼のようにこれでもかというほど叱られ傷つき、浪人で京都に出たときは、本音はほっとしたぐらいです。

(傷について語るのは潔いことじゃありませんね。すみません。)

とにかく、大学には入ったけど、ほんとのところ、自分は自信というものをほとんど失っていたと思います。

それでも、「求めよ、さらば与えられん!」とでもいうのか、「私はお琴でがんばるしかない!」と思ったところに、幸いがやってきました。
大学の邦楽クラブに入ったら、そこに指導にいらしていた先生に出会って、「この人しかいない!」という師匠との出会いがあったのです。
即、「先生、私にお琴を教えて下さい!」と、個人レッスンもお願いしました。

「とにかく、古典を教えて下さい」という私に、師匠は古典をしばらく教えて下さいました。
唄(地歌)の唄い方も初めてきちんと教えていただきました。
そして、自宅で自分なりに稽古してきた私の唄を聞いておっしゃったのがこの言葉です。
「なんか、きれいなのよね・・・。」

これは誉め言葉ではありません。
きれいに取り繕っている唄い方だということです。
「私も若いころに師匠にお稽古つけてもらっていて、言われたことがあるのよ。凄い声ねって。
初めはひどい声だったと思うのよ。
初めはきれいじゃなくていいの。とにかく大きな声で練習しなさい。
声を出し切って、そのうちに声色を変えたり、変化をつけたりできるようになるんだから。」
こんなようなことを言われました。

駆け出しの彫刻家が作品を作るとします。
小さな木片では削っているうちに形が崩れてきて、最後には小さく不本意な形に収まってしまうかもしれません。
でも、土台が大きい、大木を彫り始めるなら、途中で失敗してもまた形を整えて行くことができる。
まず、大木にならないと。
自分で解釈したのは、こんなことではないかと思います。

「きれいね」が誉め言葉でなくなる。
「きれい」を目指す音楽なのに・・・。
この逆説に驚いたものです。

何も本気でがんばったことがない。
その言葉は私の心で、いつも引っかかっていました。
でも、お琴をがんばると決めた日から、私は毎日、欠かさずに練習しました。
それだけ音の世界が好きでもあったし、また、自分を支えていられるのはこの一筋の道しかないという危うさでもありました。

どこか視野が狭いお琴道でもあったけど、そこで私は公私ともに人生で一番敬愛する師匠に出会い、音の玉手箱のような時間を師匠のお稽古で見せていただきました。
「きれい」ではない声を懸命に出しつつ、味わいある唄が唄える日を目指しました。
がむしゃらでちょっとかっこ悪い青春時代と「凄い声」。なんだか、同じですね

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4 コメント

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素敵です (Naooon)
2008-02-12 22:36:42
全然かっこ悪くなんてないっ!
何か一つ、これだけはという物があって、それに精一杯力を注いできたという自信は、長い人生ずーっと心の支えになってくれると思います。

私は何一つ取り柄が無いし、好きなことはと聞かれても即答できない空っぽな人間です。
色々な葛藤や誘惑がある中で『これだけは』というものを見つけられただけでも本当に羨ましいな。

ぜひ今度きれいでなくなった歌声を聞かせてください

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恐縮です (3うさの母)
2008-02-13 09:35:12
もう少し賢い人なら、ちゃんと家元制度の中での生き方を学んで大人になって行くのに、私は今思えば恥ずかしいことばかりしてました
大きな回り道をしないとわからない頑固者でして・・・。

私から見ると、Naooonさんみたいに若くしてお店の代表になっておばさんたちを指導しながらきちんと仕事してた姿の方が大人で立派だと思いますよ~。

唄はまだ修行レベルなので、「きれいじゃない」段階です。これがまた多少「きれい」になってきたら聞いて下さい
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Unknown (ウッシー)
2008-02-18 19:23:59
ご自分がこれだ、と思ったことを続けてください。
私に言えるのはそれだけです。
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Unknown (3うさの母)
2008-02-19 00:11:57
自分に時間ができたら、また弾いてみようと思います。
ブランクが長いので、ダイエットと弾くための筋力作りにちょっとづつトレーニングをしなきゃと思っています
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