旅するくも

『旅が旅であることを終わらせる為の記録』

FORMOSA自転車の旅2

2012-03-01 21:34:39 | Quiet Adventure
FORMOSA自転車の旅の二日目、大型トラックの轟音とともに起床し、うまれて初めて
中央分離帯で朝を迎えた。

薄暗い中でテントをたたみ、荷物をバックパックに詰め、自転車を中央分離帯から
歩道まで転がし、「いざ、花蓮!」とペダルに足をかけ自転車に股がったときだった。
「バキーン!」とケツに激痛がはしる。
ママチャリ仕様でフカフカしているはずのサドルが、板のように硬い。
いや違う。
僕のケツが板のように硬くなっているのだ。
それでも痛みに耐えて「フガ!フガ!」と言いながら進むが、今度は信じられないほど
ペダルが重い。
太ももの筋繊維が全て切れてしまったかのように脚に力が伝わらない。
予想以上に身体が疲労していた。

しばらくすると、ケツの感覚が麻痺して痛みを感じなくなった。
そうまでして台湾を一周する必要があるのかとも考えたが、まだ進みたいという気持ちの
方が勝っていた。
なんたって、まだ二日目の朝なのだ。

陽が昇って暑さを感じ始めた頃、道はあいかわらず退屈な田舎道。
一時間に一度の目安でコンビニで休憩して水分を補給するが、昨日と違い、今日はやけに
自転車に乗っている人が多い。
みんな台湾製の立派なロードレース用の自転車「GIANT」に乗っている。
彼らの目が「お前の、その自転車はなんだ?」と大声で言っているが、無視して先を急ぐ。

午後になるとヘッドフォンから聴こえる曲を陽気に歌い、右手の二本指をブレーキに
掛けて、たいして弾けもしないベースを一生懸命に弾いている僕がいた。
それは、それまでの退屈な田舎の景色が一変し、海沿いの道で風を受けながら走って
いたからということと、なにより、いつも複数で行動する台湾ウォークから離れて、
久しぶりにひとりになれたからだった。
ひとりは楽しい。
結局、ひとりが好きだったんだと、自分が少しわかった気がした。

みんな仕事なんか休んじまって、台湾を自転車で一周すればいいのにと、勝手なことを
思っていた。