今年の1月に省エネルギー基準が一部改正されました。
すでに時間が経っていますが、このブログ上で長期優良住宅や自立循環型住宅をご紹介しているので、この省エネ基準は触れておいた方がいいかなと思いました。
そもそも省エネに関する基準は、1980年に通称「旧省エネ基準」が制定され、現在では性能表示の等級2としてランクされています。
その後、1992年に断熱性能の強化が行われた通称「新省エネ基準」へと改正され、この基準は性能表示の等級3としてランクされています。
そして1999年には、さらなる断熱性能の強化と気密住宅の追加、換気・暖房設備に関する規定の追加が行われた通称「次世代省エネ基準」へと改正されています。なお、この基準は性能表示の等級4としてランクされています。
それ以降、次世代省エネ基準は2001年と2006年に一部改正があり、今年再び改正されたというのがこれまでの経緯となります。
上記の様に省エネ基準は、「旧省エネ基準」「新省エネ基準」「次世代省エネ基準」と大きく3種類に分類できますが、暖冷房負荷の基準で比較すると次世代省エネ基準は、旧省エネ基準の50%、新省エネ基準の30%の低減率となっています。
つまり、築30年の建物と築10年以内の次世代基準対応の建物を比較すると、冷暖房費が2倍違うと言えるんです。
これだけ違えば建て替えの際、次世代基準対応の住宅にしたり、既築住宅を次世代基準に合わせた断熱改修等が積極的に行われても良さそうな気もするのですが、実は余り普及していないんです。
法律上、規制(届け出)の対象となっているのは2000㎡以上の住宅・建築物で、戸建規模の住宅には特別縛りはありません。今年の改正で対象面積が300㎡まで引き下げられましたが、それでも戸建レベルではなく、戸建住宅は、性能表示やフラット35等の融資を受ける際の割増基準としての縛り程度となっています。
そもそも性能表示が普及していない事や、公庫融資がなくなってからは銀行からの民間借り入れが増えた事が、次世代省エネ基準の普及を遅らせた気もするのですが、少しでも普及させようと基準を一部簡素化したのが、今年の改正の一番の特徴と言えます。
この省エネ基準は、ちょっと複雑ですが「建築主の判断基準」と「設計・施工指針」の二つから構成されています。
「建築主の判断基準」は、簡単に説明すると住宅における省エネ性能を計算によって導く方法で、その計算方法は2種類あります。(性能規定と言われています)
「設計・施工指針」は、いくつかのランクに区分された表の中から、材料を選択する事で省エネ性能を導く簡易的な方法です。(仕様規定と言われています)
単純に「設計・施工指針」の方が便利で使いやすいのですが、目標とする性能の大枠には入っているものの、具体的にどのくらいの性能かが分からないという欠点があります。
結局の所、性能規定を用いた方が、目標とする必要な性能を出す事が出来ますし、仕様規定に比べれば、ある意味コストダウンを目指す事も出来ます。
また、仕様規定が「床」「壁」「天井」「開口部」の断熱性能の種類を選択するだけと言っても、透湿抵抗は仕様規定に触れられていないので、「断熱材の正しい使い方」を理解していなければ、いくら仕様規定に沿ったとしても大きな欠陥(内部結露)を生む可能性があります。ですから、仕様規定を使うにしても、性能規定で定められている基準を十分に把握する必要があり、それを正しく説明するのが設計士の役割と考えています。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます