***
犬の心単独ライブ『冬犬」
12月11日(木) 19:00~
@座・高円寺2
・OPコント 殉職
・思っていたより
・日本の冬
・出社
・自分の身体
・人生最高の日
・新世代
・エンディング
***
今年、KOC決勝に進出し、大きく飛躍の年となった、犬の心の単独ライブ、初日に行ってまいりました。
これがもう、本当に本当に素晴らしい単独でしたので、
私のつたなくて大して中身が無い感想ですが、勢いで書きのこしてみようと思います。
詳しいレポートは、お笑いナタリーさんの取材が入っていたのでこちらでご覧下さい。
KOCファイナリスト犬の心が単独ライブで変化のコントを披露
ここのブログでは、本当はひとネタずつ感想を書いていきたいところなのですが、
今回は特に、何か感想を言いたいと思ったらそのネタの肝の部分に触れてネタバレしてしまいそうなので、
詳しい感想は書かずに、単独全体の印象を少しずつ。
よろしければお付き合いください。
とにもかくにも、今回、見終わった後の満足感が半端ではありませんでした。
上質なコントを沢山見ることができて、本当に幸せで満ちたりた気持ちで帰路につきました。
一つひとつのコントが長尺で(15分くらいやっていたと思う)、そのコントの世界にじっくり浸ることができて、
そして、2人の世界に引き込むパワーが尋常じゃなくて。
座・高円寺は、きれいで広めで、客席も段差が大きくてかなり天井が高い会場なんですが、
全然舞台との距離感を感じませんでした。
それが実現したのは、コントのコント自体の面白さと、2人の演技力が両立しているから。
双方について書いていきたいのですが、まずはコントの本としての面白さについて。
私が犬の心を犬の心として認識して、しっかり見るようになったのは2008年の後半からなんですが、
その頃の犬の心と言えば、AGEAGEライブで「オシャレ空手選手権」「八曲署」「ローレライ」とかをバリバリやっていた時期。
特に、「犬の心の押見です」「池谷です」のショートコントを初めて見た時の衝撃は今でも忘れられない。
あんなコント、一度たりとも見たことなかった。
「常識」や「前提」「枠組み」、みたいなものを全部ぶん投げて、自分達のコントを作り上げていた。
シュールと一言で言えば簡単で、本当に理解不能なところも諸々あったけど(笑)、
それでも、斬新な設定を披露しつつ、観客にちゃんと理解させる余地を与えるところが本当に好きでした。
そこから時間は流れ。
今回の単独は、そういう、設定から斬新で飛んでるものはほとんどなかった。
ナタリーさんの記事で、押見さん自身が語っていたように、
いわゆる、「パターンで笑わせる」ものではなく、「人間性で笑わせる」という感じ。
一見普通の人に見えるいけやさんが変な人で、それをなだめる押見さんも実は変な人で、それに反抗するいけやさんもやっぱり変な人だった、みたいな(笑)
入口は、日常にありそうな普通の風景なのに、全く予想もつかない方向にどんどん進んでいく。
もちろん昔のテイストのコントも大好きですが、今回のも本当に面白くて。
芸歴17年目の彼らが、色々なコントを、色々な環境を経験したのちに辿りついた、
年を重ねたからこそ表現できる、哀愁や嫉妬、駆け引き、憎しみ、
そしてそれら全てが笑いに昇華される人間ドラマ。
今だからこそ表現できるものだと感じたのです。
もう一歩、コントの構造的な話をするとすれば。
今回、改めて思ったのが、犬の心はコントのその15分だけを表現しているのではないということ。
コントの登場人物が、本当にこの世の中に存在していて、
その人物の長い人生の一部を、切り取って見せてもらっている、という感覚。
例えば、KOCで披露した「手品」も、あの池谷さんと押見先輩の2人の間には、過去に告白した側された側という複雑な事情があって、
それが、本人達の「当たり前」のテンションの中、絶妙なタイミングで差し込まれてくるから、観客は大いに笑う。
ただ、観客からしたらすごい事実だけど、コントの中の当人達には共通認識だから取り立てて言うことでもない。
だから最初からそれが明かされるわけではなく、何かのきっかけで明らかになる、というリアリティ。
今回の単独でも、そういう構成面の妙を大いに堪能することができました。
そしてもう一つ、2人の演技力について。
犬の心の演技力がすごいなんて、今さらわざわざ言うことでもないし、みんなわかっているし、
それでも、改めて本当にすごいなぁと思わされた。
何がすごいのかを言葉で表現するのは難しいんだけど、間とか抑揚とか、テンションの上がり方、上がるタイミングとか。
特に今回の単独は、「犬の心」なんだけど、押見泰憲といけや賢二という、2人の個人の真剣勝負という感じがして。
自分がどんな演技をしても、どれだけ振り切っても、
相手がきちんとそれを拾って返してくれる、という絶大な信頼感があるように感じられて。
それがあるからこそ、双方が高めあっていく演技ができる。
そんな瞬間が垣間見えて、かっこよかった。
エンディングでは、「今日は何曜日でしたっけ?」と何気なく聞いた押見さんに、
いけやさんが「木曜日です。病院が休みの日ですね!!」と明るく答えて、会場微妙な空気に……
押見「……長年連れ添ってますけど、こういう時、本当に上手くいかない」(笑)
さっきまで、あんなに息ぴったりのコントを見せてくれたコント師とは思えない(笑)
その事実にも笑ったけど、「長年連れ添ってる」っていう押見さんのワード選びにも笑ってしまった。夫婦か!(笑)
……それと同時に、ふと心に浮かんだのは、
今年解散を発表した多くのコンビのこと。
彼らのように17年目を迎えることが出来なかった、私が今までよく見ていた多くのコンビのこと。
犬の心と同じように年月を重ねることができるコンビばかりではない。
家族の事情もあるだろうし、それまで気持ちが続かないコンビだってたくさんいるだろう。
そんな中で、解散をしたコンビや、解散を考えているコンビに、
葛藤している芸人さんを前に、犬の心を例に挙げて、
「いつかはああなれるから頑張れ」なんて、
「いつか賞レースの決勝に行けると思うから頑張れ」なんて、
そんな無責任なことは言えない。
言えないけど……これだけは言える。
売れなくてもがいた日々も、上手くいかなくて試行錯誤した日々も、
きっと無駄ではない。
そういう道なき道を通ったからこそ、今表現できるものがある。
犬の心はそれを見せてくれたから。
進化を続ける17年目の犬の心は、
今が一番、かっこいい。
「冬犬」は、凍てつくような冬の朝に、一筋の陽の光が差してきて、
心がじんわりと温かくなるような、
そんな、柔らかくて、幸せな満足感で心が満たされる単独ライブでした。
犬の心単独ライブ『冬犬」
12月11日(木) 19:00~
@座・高円寺2
・OPコント 殉職
・思っていたより
・日本の冬
・出社
・自分の身体
・人生最高の日
・新世代
・エンディング
***
今年、KOC決勝に進出し、大きく飛躍の年となった、犬の心の単独ライブ、初日に行ってまいりました。
これがもう、本当に本当に素晴らしい単独でしたので、
私のつたなくて大して中身が無い感想ですが、勢いで書きのこしてみようと思います。
詳しいレポートは、お笑いナタリーさんの取材が入っていたのでこちらでご覧下さい。
KOCファイナリスト犬の心が単独ライブで変化のコントを披露
ここのブログでは、本当はひとネタずつ感想を書いていきたいところなのですが、
今回は特に、何か感想を言いたいと思ったらそのネタの肝の部分に触れてネタバレしてしまいそうなので、
詳しい感想は書かずに、単独全体の印象を少しずつ。
よろしければお付き合いください。
とにもかくにも、今回、見終わった後の満足感が半端ではありませんでした。
上質なコントを沢山見ることができて、本当に幸せで満ちたりた気持ちで帰路につきました。
一つひとつのコントが長尺で(15分くらいやっていたと思う)、そのコントの世界にじっくり浸ることができて、
そして、2人の世界に引き込むパワーが尋常じゃなくて。
座・高円寺は、きれいで広めで、客席も段差が大きくてかなり天井が高い会場なんですが、
全然舞台との距離感を感じませんでした。
それが実現したのは、コントのコント自体の面白さと、2人の演技力が両立しているから。
双方について書いていきたいのですが、まずはコントの本としての面白さについて。
私が犬の心を犬の心として認識して、しっかり見るようになったのは2008年の後半からなんですが、
その頃の犬の心と言えば、AGEAGEライブで「オシャレ空手選手権」「八曲署」「ローレライ」とかをバリバリやっていた時期。
特に、「犬の心の押見です」「池谷です」のショートコントを初めて見た時の衝撃は今でも忘れられない。
あんなコント、一度たりとも見たことなかった。
「常識」や「前提」「枠組み」、みたいなものを全部ぶん投げて、自分達のコントを作り上げていた。
シュールと一言で言えば簡単で、本当に理解不能なところも諸々あったけど(笑)、
それでも、斬新な設定を披露しつつ、観客にちゃんと理解させる余地を与えるところが本当に好きでした。
そこから時間は流れ。
今回の単独は、そういう、設定から斬新で飛んでるものはほとんどなかった。
ナタリーさんの記事で、押見さん自身が語っていたように、
いわゆる、「パターンで笑わせる」ものではなく、「人間性で笑わせる」という感じ。
一見普通の人に見えるいけやさんが変な人で、それをなだめる押見さんも実は変な人で、それに反抗するいけやさんもやっぱり変な人だった、みたいな(笑)
入口は、日常にありそうな普通の風景なのに、全く予想もつかない方向にどんどん進んでいく。
もちろん昔のテイストのコントも大好きですが、今回のも本当に面白くて。
芸歴17年目の彼らが、色々なコントを、色々な環境を経験したのちに辿りついた、
年を重ねたからこそ表現できる、哀愁や嫉妬、駆け引き、憎しみ、
そしてそれら全てが笑いに昇華される人間ドラマ。
今だからこそ表現できるものだと感じたのです。
もう一歩、コントの構造的な話をするとすれば。
今回、改めて思ったのが、犬の心はコントのその15分だけを表現しているのではないということ。
コントの登場人物が、本当にこの世の中に存在していて、
その人物の長い人生の一部を、切り取って見せてもらっている、という感覚。
例えば、KOCで披露した「手品」も、あの池谷さんと押見先輩の2人の間には、過去に告白した側された側という複雑な事情があって、
それが、本人達の「当たり前」のテンションの中、絶妙なタイミングで差し込まれてくるから、観客は大いに笑う。
ただ、観客からしたらすごい事実だけど、コントの中の当人達には共通認識だから取り立てて言うことでもない。
だから最初からそれが明かされるわけではなく、何かのきっかけで明らかになる、というリアリティ。
今回の単独でも、そういう構成面の妙を大いに堪能することができました。
そしてもう一つ、2人の演技力について。
犬の心の演技力がすごいなんて、今さらわざわざ言うことでもないし、みんなわかっているし、
それでも、改めて本当にすごいなぁと思わされた。
何がすごいのかを言葉で表現するのは難しいんだけど、間とか抑揚とか、テンションの上がり方、上がるタイミングとか。
特に今回の単独は、「犬の心」なんだけど、押見泰憲といけや賢二という、2人の個人の真剣勝負という感じがして。
自分がどんな演技をしても、どれだけ振り切っても、
相手がきちんとそれを拾って返してくれる、という絶大な信頼感があるように感じられて。
それがあるからこそ、双方が高めあっていく演技ができる。
そんな瞬間が垣間見えて、かっこよかった。
エンディングでは、「今日は何曜日でしたっけ?」と何気なく聞いた押見さんに、
いけやさんが「木曜日です。病院が休みの日ですね!!」と明るく答えて、会場微妙な空気に……
押見「……長年連れ添ってますけど、こういう時、本当に上手くいかない」(笑)
さっきまで、あんなに息ぴったりのコントを見せてくれたコント師とは思えない(笑)
その事実にも笑ったけど、「長年連れ添ってる」っていう押見さんのワード選びにも笑ってしまった。夫婦か!(笑)
……それと同時に、ふと心に浮かんだのは、
今年解散を発表した多くのコンビのこと。
彼らのように17年目を迎えることが出来なかった、私が今までよく見ていた多くのコンビのこと。
犬の心と同じように年月を重ねることができるコンビばかりではない。
家族の事情もあるだろうし、それまで気持ちが続かないコンビだってたくさんいるだろう。
そんな中で、解散をしたコンビや、解散を考えているコンビに、
葛藤している芸人さんを前に、犬の心を例に挙げて、
「いつかはああなれるから頑張れ」なんて、
「いつか賞レースの決勝に行けると思うから頑張れ」なんて、
そんな無責任なことは言えない。
言えないけど……これだけは言える。
売れなくてもがいた日々も、上手くいかなくて試行錯誤した日々も、
きっと無駄ではない。
そういう道なき道を通ったからこそ、今表現できるものがある。
犬の心はそれを見せてくれたから。
進化を続ける17年目の犬の心は、
今が一番、かっこいい。
「冬犬」は、凍てつくような冬の朝に、一筋の陽の光が差してきて、
心がじんわりと温かくなるような、
そんな、柔らかくて、幸せな満足感で心が満たされる単独ライブでした。
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