回数「基準」超えたら届け出義務化へ
安倍内閣は、2018年度の介護報酬の改定で、ホームヘルパーが家事支援を行う「生活援助」を、一定の回数以上を利用する場合、ケアマネージャーに対して保険者(自治体)へ届け出るよう義務付けようとしています。
10月実施に向け基準案
厚生労働省はこれについて10月実施に向け、月27回~43回とする要介護度別の「届け出基準回数」案を公表しパブリックコメントを行いました。
全国で約2万4千人が対象となる見込みです。生活援助の利用制限をねらうもので、撤回を求める声が広がっています。
ケアマネージャーに「届け出義務」
届け出基準回数案は「通常の利用状況からかけ離れた利用回数」として、最近1年間の給付実績に基づき、介護度別に各月の「全国平均利用回数+2標準偏差値」を算出、最大月の回数としています。
要介護1=27回、要介護2=34回、要介護3=43回、要介護4=38回、要介護5=31回です。
10月から実施されると、生活援助を基準以上に利用する場合、ケアプランを作成したケアマネージャーが保険者の自治体に届け出なければならなくなります。
1日1~2回の利用なのに
保険者(自治体)は介護・医療関係者らを集めて開く「地域ケア会議」でケアプランを検証。「不適切」と判断すればケアプランの是正を求めることになります。
基準とされる回数は一日にすれば1~2回です。こうした利用にも届け出を求める制度に反対の声が高まっています。
ケアマネージャ業務支援のためのインタネットサイトが行ったアンケートでは「どうして義務化するのか意味が分からない。反対!」が40%で最多。「なんだか釈然としない」39%で、8割が否定的です。
150人中10人が「基準」上回る例
区内のケアマネ事業所「ケアサポートセンター千住」では約150人のケアプランのうち10人が基準案を上回るといいます。
利用回数は月43回から84回。いずれも要介護3~5の中・重度者で独居か日中独居です。8人が認知症か精神疾患の患者です。
センターの所長さんは「在宅の中・重度者を1日2回、3回の生活援助が支えています。ケアマネージャーが必要と認める援助なのに保険者に届けてチェックを受けるなど、ケアネーの専門性を否定し、業務を増やすだけです」と憤ります。
必要な生活援助の提供を躊躇(ちゅうちょ)させる
埼玉県で介護事業を展開するNPО法人「暮らしネット・えん」の代表理事は「理解できないとパブリックコメントを出しました。地域ケア会議の席であげつらわれたくないと、ケアマネ―ジャーが必要な生活援助の提供を躊躇する可能性があります。生活援助は在宅重視の介護保険の命綱なのに逆行します」と語ります。
認知症家族ら「撤回」求める
認知症の人と家族の会の理事の方は「財務省が生活援助の利用に上限設定を求めたことが議論の出発点です。この仕組みが利用制限として機能することは明らかです。在宅で暮らす認知症の人の生活が立ち行かなくなる」「会として撤回を強く求めていきたい」と話しています。