3年間大阪勤務だったHGさんは営業の合間に京都の寺社めぐりをし、ひそかに清明神社の護符を鞄にしのばせているオカルト派で、そのHGさんと新宿の沖縄食堂にてオリオンビール、シークワーサーサワー、久米仙などをあおり、うみぶどう、ゴーヤーおひたし、とうふよう、豚軟骨唐揚などなどをいただきながら、京都の国立博物館はいいとか、最近は「ブリキの太鼓」にはまっているとか、ぼくが初めて行ったコンサートは克美茂(エイトマンの主題歌を歌っていた人です)だとか、そんな話題から、みうらじゅんを大明神と崇めるHGさんなので当然ながら話はボブ・ディランにおよび、スコセッシのディラン伝記ドキュメント「ノー・ディレクション・ホーム」が面白かったなどと盛り上がっていると、隣の席にひとり泡盛をあおっている小太りの男がしきりにわれわれの話にうなづいているのが目の端に見えるのだが、こちらはさらに最近の日本映画界は立教出身監督ががんばっているとかの話になって「青山」と言う名前が出るや、やおら「青山真治でしょ」と、もうがまんしきれなくなったように話に割り込んできて、「やー、ディランとかさっきから話が僕とかぶっているんですよねー」といかにもオタクっぽいしゃべり方で目を細め、そんなにわれわれのくだらない話に喜んでもらったのではとちょっと仲間に加えてあげるとさらに満足そうにうなづいて杯を重ねているのであった。
「やー、いつくるかと思っていたらやっぱりきましたねー、あのオタク君。ぼくらもオタク仲間にみえたんでしょうかねー」とHGさん、おもわぬ闖入者の出現で妙におかしい酒宴となり、昼間に電線に止まっていた鳩の糞害でコートを汚された不機嫌もすっかり忘れた一夜であった。
そういえば、公園で鳩が群がっていると鳩を足で踏み潰そうとする「鳩を踏む女」がいたっけ。なんでも首の油脂が浮いたようなテラテラがきらいなんだとか。この日ばかりはぼくも鳩をふんでやりたくなっていたが、とりあえずボブ・ディランに感謝だ。
「やー、いつくるかと思っていたらやっぱりきましたねー、あのオタク君。ぼくらもオタク仲間にみえたんでしょうかねー」とHGさん、おもわぬ闖入者の出現で妙におかしい酒宴となり、昼間に電線に止まっていた鳩の糞害でコートを汚された不機嫌もすっかり忘れた一夜であった。
そういえば、公園で鳩が群がっていると鳩を足で踏み潰そうとする「鳩を踏む女」がいたっけ。なんでも首の油脂が浮いたようなテラテラがきらいなんだとか。この日ばかりはぼくも鳩をふんでやりたくなっていたが、とりあえずボブ・ディランに感謝だ。