ちゅう年マンデーフライデー

ライク・ア・ローリングストーンなブログマガジン「マンフラ」

神保町「エリカ」で珈琲時光

2005年12月20日 | 映画
 ちょっと二日酔いの土曜日、湯船につかってさっぱりし録画してあったホウ・シャオシェン「珈琲時光」を観た。

 フリーライターの陽子とその恋人らしい神保町の古書店の二代目肇、群馬あたりにいる陽子の両親、を主な登場人物として物語は進む。お盆の帰省、娘の下宿を訪ねる両親、台湾人作曲家江文也の資料集めに東京をめぐる陽子と肇の日常的な風景が静かに映し出される。だが台湾にいる陽子の実母、陽子のお腹にいる子供の父親、台湾人作曲家江文也など画面には登場しない人物たちの物語が、陽子をとりまく複雑な背景を語り、やがて訪れるだろうドラマや苦難を予感させる。

 とりわけ、娘の妊娠を知ってもひたすら沈黙し続ける父親役の小林稔侍がいい。やや身体を傾けて猫背気味にすわって酒を飲む姿を逆光気味にとらえたシーン、いつ口を開くのかという緊張感が伝わってくる。背中のたたずまいがいいのだ。さすが高倉健のそばで仕事をしていた人だと思った。

 御茶ノ水だか、秋葉原だかの電車がゆっくり交差するシーンを俯瞰でとらえた映像は、電車が芋虫のようでゾクッとする。30年前のような懐かしさを湛えて見える東京、神保町のレトロな喫茶店「エリカ」、ひたすら映画のゆっくりとした時間の流れとリズムに身をまかせる。そういうことができる映画は少ない。
 週明けの月曜、神保町へ行ったが、残念ながら「エリカ」に行く時間はなかった。
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