ちゅう年マンデーフライデー

ライク・ア・ローリングストーンなブログマガジン「マンフラ」

胸に頭突き、喜びは平手打ちで

2006年07月11日 | アフター・アワーズ
 これから流行るパフォーマンスは、気に入らないことを言ったやつには胸に頭突き、喜びを表すときは相手の頬の平手打ちか、髪の毛を引っ張ること。いうまでのなく今度のW杯でのジダンとガットゥーゾのパフォーマンスだ。この2人に、マラドーナがいなかったら、W杯はさぞかしつまらなかっただろう。イタリア映画「流されて」の下僕のような風貌のガットゥーゾは、試合になると体内麻薬が発生しているにちがいない。誰もが有終の美を思い描いていたジダンは、そうしたメロドラマを、一発の頭突きで拒否して見せた。真の哲学者であり、前衛アーチストなのだ。
怒ったら胸に頭突きを! 喜びは平手打ちで表せ!
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「ある夜、クラブで」死ぬほどいい女に会ったかい?

2006年07月11日 | 
 えー、多数のお運び、まことにありがとう存じます。ブログの更新も久しぶりで。

 ジャズ小説という分野があるのかどうかはチンパンジーのゴメスさんに聞いてほしいが、クリスチャン・ガイイ「ある夜、クラブで」(集英社・1,680円)はジャズ好きが喜びそうな小説ではある。ジム・トンプスンを中断して、といっても2時間くらいで読めてしまうのだけれど、面白く読みました。

 一度縁を切ったジャズの世界に、出張先の海辺の町で立ち寄ったジャズクラブでピアノトリオの演奏に刺激されて引き戻される元ジャズピアニスト。クラブオーナーのアメリカ人女性と恋におぼれ、都合よく妻は夫を迎えに行く途中で交通事故死してしまうという悲劇もあったけれど、いまはこの中年男女は結婚して幸せに暮らしているという話。これをピアニストの友人の画家が、こんな男と女がいたとさ、と語る拵えの小説。

 本の表紙はビル・エヴァンス「ワルツ・フォー・デビー」のジャケットがデザインされている。音を積み重ねて、ミステリアスなハーモニーを紡ぎだすビル・エヴァンスの演奏のように、複数の時と場所と人物のシーンが行ったりきたりしながら物語は進んでいく、いわばこの小説自体がジャズの演奏のようでもある。

 ジャズ小説たる材料は盛りだくさんだ。
 主人公の名前はシモン・ナルディス。「ナルディス」は「エクスプロレイションズ」以来、ビル・エヴァンスお気に入りの曲の名前。マイルスがキャノンボール・アダレイに贈った曲らしいが。で、女オーナーの名前はデビー・パーカー。もろデビーだよ。デビーはビル・エヴァンスのかわいい姪っ子だったが、こっちは粋で艶っぽく熟した大人の女。店の名前は「グリーン・ドルフィン」。店で演奏している若いアメリカ人トリオの名前は、ビル、スコット、ポール。黄金のビル・エヴァンス・トリオそのまんま。ビルは眼鏡をかけてまるで原子物理学者のような風貌とあるから、これはもう「ポートレイト・イン・ジャズ」だ。

 ナルディスはジャズピアノに革新的なスタイルの変革をもたらしたピアニストというから、これもビル・エヴァンスだ。で、そのスタイルをまねているのがこのピアノトリオのビルということになっている。「グリーン・ドルフィン」の扉を開けると、店に流れているのはコルトレーン。曲は不明。続いてソニー・ロリンズ「ヴィレッジヴァンガードの夜」。曲は不明だが「朝日のようにさわやかに」にちがいない。そしてモンクとジョニー・グリフィンだから「ミステリオーソ」か。とまあ、ジャズ好きを喜ばせるような材料があちこちにちりばめられている。

 おそらく主人公のナルディスは50代、1日2回のセックスはつらそうだし。デビーは股の内側にしわがよっているのが発見されるが、まあ、40代半ばかな。小説の中の演奏曲目に「ホワット・アー・ユー・ドゥーイング・ザ・レスト・オブ・ユア・ライフ」があったけれど、そう、中年男が望む「これからの人生」のおとぎ話なのでした。

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