四方なだらかな山に囲まれて、そして一方はもくもくともりあがった由布岳である。
由布岳はいい山だ。おごそかさとしたしさとをもっている。
中腹までは雑木紅葉、中腹から上は枯草、絶頂は雪、登りたいなあと思う。
ここは由布院中の由布院ともいうべく、湯はあふれているし、由布岳は親しくみおろしている。
山々夕陽時という、私は今日幸にして、落日をまともに浴びた由布岳を見たことは、ほんとうにうれしい。
宿は評判だけあって、気安くて、親切で、安くてよろしい。
さらに、ぶくぶくと湧き出る内湯はもったいないほどよろしかった。
ここちようねる
今宵は由布岳の下
寝たいだけ寝たからだ
湯に伸ばす。
昭和5年11月12日
-山頭火-
昭和5年11月12日
-山頭火-