先日、歌舞伎座の楽日夜の部に『夏祭浪花鏡』(並木千柳・三好松洛 作)と『天守物語』(泉 鏡花 作、戌井市郎・坂東玉三郎 演出)を観に行ってきました。お目当ては玉三郎さんのお姿を拝見することでしたが、海老蔵君(以下、エビ君)も大活躍でした。昼の部もよかったのですが、夜の部でもエビ君は、とても素敵ですごくカッコよかったです。男が男を観てカッコいいなんて、そうそう言える台詞じゃないと思います。やっぱり天才の血を引いているというか、役者の上質の魂というか遺伝を受け継いだ人なんだろうな、とつくづく思いました。
(正直に言うけど、僕は“悪エビ君”といつも揶揄していたけど、今度から“良エビ君”とニックネームを変更します!)
エビ君は凄いよ、段々段々、役者として名演技を披露し確実に進化してるし、内面というか魂の純度がさらに光り輝いていると思うし、上品かつ気高い精神の持ち主にちょっと見えてきたような気がしました。歌舞伎界の次世代の代表選手ですね。
『夏祭浪花鏡』
「団七が刺青を顕わにして、さまざまな見得をみせながら、泥まみれの義平次を殺す件は、歌舞伎の殺し場の代表的な場面で、この作品の眼目です。そして団七が血と泥を洗い流し、祭りの雑踏に紛れて花道を引っ込んでいく幕切れまで見どころが続きます。」
「〈鏡花の語感〉
鏡花は潔癖性だった。外出時、消毒液を持ち歩いた。神社仏閣の前を通る時は、眼鏡を外して拝礼したという。自作の表記では”文字恐怖症”を発揮し、「豆腐」を嫌って「豆府」と書いた。独特な字訓も見られる。『天守物語』では「串戯」で「じょうだん」、「夥間」を「なかま(仲間)」、「生効」は「いきがい」と読ませている。耳で聞けば、「串戯」も「冗談」と同じ音だが、鏡花は表記を大切に考えた。そんな鏡花に敬意を表し、上演台本も原作の表記を尊重している。」
七月大歌舞伎 パンフレットから引用