<高橋克也容疑者>カメラ1000台分析…タクシーも解明より転載
毎日新聞 6月22日(金)2時33分配信
地下鉄サリン事件などで特別手配された高橋克也容疑者(54)が逮捕されて22日で1週間。追跡捜査に、最も効果を発揮したのは防犯カメラの画像だった。警視庁はコンビニや金融機関など約200カ所のカメラ約1000台の画像を回収・分析した。今や、捜査には欠かせないツールとなりつつある防犯カメラ画像の捜査の舞台裏を追った。
「信号もないのに時間がかかりすぎだ」。高橋容疑者が潜伏していた川崎市の社員寮近くの道路に設置された2台の防犯カメラの画像を見比べていた捜査員がつぶやいた。2台の防犯カメラは約50メートル離れており、その間を車やタクシーが数秒単位で走り抜けていった。しかし、1台だけ30秒程度で通過するタクシーがあった。
高橋容疑者が寮を出たのは6月4日午後3時半ごろ。「このタクシーに乗ったかもしれない」。捜査員はカメラに映ったタクシー会社に急行、運転手から事情を聴き、高橋容疑者が利用したタクシーを特定した。
画像は警視庁の捜査支援分析センターの「モバイルチーム」が中心となり、捜査1課なども加わった計40人が24時間態勢で分析した。すべて目視で確認する地道な作業だ。
だが、集めてきた画像は、そのままでは捜査に活用できない。警視庁の捜査員も相談に訪れる民間の科学鑑定機関「法科学鑑定研究所」(東京都新宿区)によると、画質の悪い防犯カメラが多く、顔の識別が難しいことも少なくないという。
その場合、顔を拡大するとモザイク状になるため、マス目とマス目の境界をぼかす「近接化処理」が必要となる。その上、色の境界を強調する「先鋭化処理」を行うと、目鼻立ちをくっきりできるという。山崎昭所長は「長時間記録するカメラが多く画質はよくない。ドラマのように一瞬で顔を識別できるわけではなく、地道な作業です」と話す。【松本惇】
警察庁などによると、全国の警察が設置・運用する街頭防犯カメラは、16都道府県で計791台にのぼる(3月末時点)。秋葉原の無差別殺傷事件のあった08年以降、繁華街を中心に倍増した。高橋容疑者が潜伏していた川崎市内には約50台が設置されている。
今年5月の東京メトロ渋谷駅(東京都渋谷区)の殺人未遂事件でも、駅のカメラの画像がきっかけで犯人が特定されるなど、捜査に効果を発揮している。
警視庁は昨年、地下鉄サリン事件のような重大事件に備え、地下鉄駅構内のカメラ映像をリアルタイムで警察に転送できるシステムを試験的に導入。また日立国際電気(東京都千代田区)は、3600万枚の顔の画像から探したい顔の類似画像を1秒間で検索できる「類似顔画像検索システム」を開発し、実用化への準備を進めている。【村上尊一】
毎日新聞 6月22日(金)2時33分配信
地下鉄サリン事件などで特別手配された高橋克也容疑者(54)が逮捕されて22日で1週間。追跡捜査に、最も効果を発揮したのは防犯カメラの画像だった。警視庁はコンビニや金融機関など約200カ所のカメラ約1000台の画像を回収・分析した。今や、捜査には欠かせないツールとなりつつある防犯カメラ画像の捜査の舞台裏を追った。
「信号もないのに時間がかかりすぎだ」。高橋容疑者が潜伏していた川崎市の社員寮近くの道路に設置された2台の防犯カメラの画像を見比べていた捜査員がつぶやいた。2台の防犯カメラは約50メートル離れており、その間を車やタクシーが数秒単位で走り抜けていった。しかし、1台だけ30秒程度で通過するタクシーがあった。
高橋容疑者が寮を出たのは6月4日午後3時半ごろ。「このタクシーに乗ったかもしれない」。捜査員はカメラに映ったタクシー会社に急行、運転手から事情を聴き、高橋容疑者が利用したタクシーを特定した。
画像は警視庁の捜査支援分析センターの「モバイルチーム」が中心となり、捜査1課なども加わった計40人が24時間態勢で分析した。すべて目視で確認する地道な作業だ。
だが、集めてきた画像は、そのままでは捜査に活用できない。警視庁の捜査員も相談に訪れる民間の科学鑑定機関「法科学鑑定研究所」(東京都新宿区)によると、画質の悪い防犯カメラが多く、顔の識別が難しいことも少なくないという。
その場合、顔を拡大するとモザイク状になるため、マス目とマス目の境界をぼかす「近接化処理」が必要となる。その上、色の境界を強調する「先鋭化処理」を行うと、目鼻立ちをくっきりできるという。山崎昭所長は「長時間記録するカメラが多く画質はよくない。ドラマのように一瞬で顔を識別できるわけではなく、地道な作業です」と話す。【松本惇】
警察庁などによると、全国の警察が設置・運用する街頭防犯カメラは、16都道府県で計791台にのぼる(3月末時点)。秋葉原の無差別殺傷事件のあった08年以降、繁華街を中心に倍増した。高橋容疑者が潜伏していた川崎市内には約50台が設置されている。
今年5月の東京メトロ渋谷駅(東京都渋谷区)の殺人未遂事件でも、駅のカメラの画像がきっかけで犯人が特定されるなど、捜査に効果を発揮している。
警視庁は昨年、地下鉄サリン事件のような重大事件に備え、地下鉄駅構内のカメラ映像をリアルタイムで警察に転送できるシステムを試験的に導入。また日立国際電気(東京都千代田区)は、3600万枚の顔の画像から探したい顔の類似画像を1秒間で検索できる「類似顔画像検索システム」を開発し、実用化への準備を進めている。【村上尊一】