【伊達の特定避難勧奨地点解除へ】線量、除染、賠償は... 住民、行政に温度差 不安除去し分断解消図るより転載
特定避難勧奨地点について報じる紙面に目を通す男性=13日、伊達市
局地的に放射線量が高い「特定避難勧奨地点」に指定された伊達市の128世帯が14日にも解除されることが明らかになった13日、市は指定世帯への連絡など解除に向けた準備に入った。指定の有無で地域内には分断が起きており、市は解除で地域の一体化を図る考え。住民の中には放射線量を不安視して解除後も帰宅を見合わせる動きがあり、行政と一部住民の思いは必ずしも一致してはいない。住民の不安をいかに取り除くかが課題となる。
■自宅で正月を
「ようやく地域の回復に向かうことができる」。東京電力福島第一原発事故に伴い指定された特定避難勧奨地点の解除方針を聞いた伊達市の担当者は胸をなで下ろした。
昨年6月末の指定以降、市は世帯ごとの指定ではなく、地域全体を指定するよう政府に求めた。しかし、状況は改善されず、指定の有無で賠償などに差が生じ住民間で心情的な摩擦が生まれた。
このため市は、地域内で家屋や通学路など生活圏の除染を徹底してきた。来年3月中の終了を目指した計画よりも早いペースで、現在、約85%の除染を終え、放射線量が大幅に低減。市は政府に対して早期の指定解除を求めてきた。市関係者は「解除されれば、ある程度時間がかかっても、地域コミュニティーが以前のようになってくれるのでは」と期待を掛ける。
13日、市職員らは解除に備え、打ち合わせなどに追われた。仁志田昇司市長は「放射線量が下がるという帰宅条件は整った。戻れば自宅で正月を迎えられる」と話した。
■戻らない
伊達市の特定避難勧奨地点に指定された世帯は、早く避難した家族や、指定後も住んでいる住民などさまざま。昼間は避難先から自宅に戻って過ごしている人もいる。
「地域全体を除染する前に解除するなんて...」。伊達市霊山町で自宅が特定避難勧奨地点に指定されている会社員女性(42)は突然の政府方針に驚き、不安を募らせた。
自宅に父親を残し、市内の他の地域でアパートを借りて母親と小学生の長女(7つ)と暮らす。自宅の除染は終わり、毎時3.0マイクロシーベルトを超えていた放射線量は十分の一程度に下がった。しかし、通学路などの除染は終わっていない。「安心できるまでは戻るつもりはない」と言い切った。
市内霊山町の無職女性(73)の自宅は、指定世帯と数10メートルしか離れていない。放射線を心配し、同居していた長女は県外に避難し、女性は1人暮らしになった。「賠償金をもらっている指定世帯と境遇が違い過ぎ、どうしても割り切れない。解除されても複雑な思いは消えそうもない」と明かした。
市内霊山町の行政区長の1人は住民間の分断を嘆いた。自身の自宅も指定され、福島市内にアパートを借りて自宅と行き来する。指定されなかった世帯の住民から「賠償金でいい思いをして」と言われた言葉が頭から離れない。原発事故前は餅つき大会や芋煮会などの多くの催しを住民みんなで楽しんでいた。「また仲良く暮らせる日がいつか来るのだろうか」
■きめ細かく対応
指定解除後に早期に地域コミュニティーを取り戻すため、伊達市は住民からの個別相談に応じていく方針だ。
避難世帯の放射線への不安解消のためには、地域の放射線量などの説明や住民に配布しているバッジ式積算線量計で、自宅に戻った後の線量の変化を把握し問題がないか、慎重に確認する。
一方で避難世帯が希望すれば、当面、避難先にとどまることができるような支援も検討している。
これまでも、除染で指定の有無を区別せずに作業を進めるなど、配慮を重ねてきた。担当職員は「感情的なしこりをなくすため、今後も可能な限り努力を続ける」としている。
(2012/12/14 09:01カテゴリー:3.11大震災・断面)福島民報
特定避難勧奨地点について報じる紙面に目を通す男性=13日、伊達市
局地的に放射線量が高い「特定避難勧奨地点」に指定された伊達市の128世帯が14日にも解除されることが明らかになった13日、市は指定世帯への連絡など解除に向けた準備に入った。指定の有無で地域内には分断が起きており、市は解除で地域の一体化を図る考え。住民の中には放射線量を不安視して解除後も帰宅を見合わせる動きがあり、行政と一部住民の思いは必ずしも一致してはいない。住民の不安をいかに取り除くかが課題となる。
■自宅で正月を
「ようやく地域の回復に向かうことができる」。東京電力福島第一原発事故に伴い指定された特定避難勧奨地点の解除方針を聞いた伊達市の担当者は胸をなで下ろした。
昨年6月末の指定以降、市は世帯ごとの指定ではなく、地域全体を指定するよう政府に求めた。しかし、状況は改善されず、指定の有無で賠償などに差が生じ住民間で心情的な摩擦が生まれた。
このため市は、地域内で家屋や通学路など生活圏の除染を徹底してきた。来年3月中の終了を目指した計画よりも早いペースで、現在、約85%の除染を終え、放射線量が大幅に低減。市は政府に対して早期の指定解除を求めてきた。市関係者は「解除されれば、ある程度時間がかかっても、地域コミュニティーが以前のようになってくれるのでは」と期待を掛ける。
13日、市職員らは解除に備え、打ち合わせなどに追われた。仁志田昇司市長は「放射線量が下がるという帰宅条件は整った。戻れば自宅で正月を迎えられる」と話した。
■戻らない
伊達市の特定避難勧奨地点に指定された世帯は、早く避難した家族や、指定後も住んでいる住民などさまざま。昼間は避難先から自宅に戻って過ごしている人もいる。
「地域全体を除染する前に解除するなんて...」。伊達市霊山町で自宅が特定避難勧奨地点に指定されている会社員女性(42)は突然の政府方針に驚き、不安を募らせた。
自宅に父親を残し、市内の他の地域でアパートを借りて母親と小学生の長女(7つ)と暮らす。自宅の除染は終わり、毎時3.0マイクロシーベルトを超えていた放射線量は十分の一程度に下がった。しかし、通学路などの除染は終わっていない。「安心できるまでは戻るつもりはない」と言い切った。
市内霊山町の無職女性(73)の自宅は、指定世帯と数10メートルしか離れていない。放射線を心配し、同居していた長女は県外に避難し、女性は1人暮らしになった。「賠償金をもらっている指定世帯と境遇が違い過ぎ、どうしても割り切れない。解除されても複雑な思いは消えそうもない」と明かした。
市内霊山町の行政区長の1人は住民間の分断を嘆いた。自身の自宅も指定され、福島市内にアパートを借りて自宅と行き来する。指定されなかった世帯の住民から「賠償金でいい思いをして」と言われた言葉が頭から離れない。原発事故前は餅つき大会や芋煮会などの多くの催しを住民みんなで楽しんでいた。「また仲良く暮らせる日がいつか来るのだろうか」
■きめ細かく対応
指定解除後に早期に地域コミュニティーを取り戻すため、伊達市は住民からの個別相談に応じていく方針だ。
避難世帯の放射線への不安解消のためには、地域の放射線量などの説明や住民に配布しているバッジ式積算線量計で、自宅に戻った後の線量の変化を把握し問題がないか、慎重に確認する。
一方で避難世帯が希望すれば、当面、避難先にとどまることができるような支援も検討している。
これまでも、除染で指定の有無を区別せずに作業を進めるなど、配慮を重ねてきた。担当職員は「感情的なしこりをなくすため、今後も可能な限り努力を続ける」としている。
(2012/12/14 09:01カテゴリー:3.11大震災・断面)福島民報