短編集でした。1つ目が表題作で、主人公の学生が旅先で旅芸人の一家と出会い、かわいい踊り子に惹かれていく作品。「子供なんだ。私達を見つけた喜びで真裸のまま日の光の中に飛び出し、爪先で背一ぱいに伸びる程に子供なんだ。」この作品の魅力はこの文章に全部あらわされていると言ってもいいでしょう。
他に、湯場で強く生きる女達を描いた「温泉宿」。よく分からないけど生きることの悲しみを描いた「抒情詩」。小鳥の命の儚さが描かれた「禽獣」。寂しい感じの作品が多いが、「伊豆の踊子」はそれだけではなく、爽やかな物語でした。