土屋龍一郎のブログ

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マーラー

2005-10-29 19:15:07 | Weblog
 ステレオを聞くことが出来る環境を作ったので、久しぶりに昔のレコードを引っ張り出してきて聴いている。磨り減るくらいに聴きまくった昔の曲を当時のレコードで聴くとレコードについた傷のせいでプツプツという針飛びの音まで懐かしい。純粋に曲調だけを聞いているCDとは違う、生々しい楽しさがある。
 聞こえない音が聞こえる気がする。

 1980年代に父が付き合いで買い揃えたソニーの「The great collection of classical music」という、100枚セットのレコードコレクションがある。父は全くクラシック音楽なぞ聞くタイプではないから、なにかの勉強になるかと思って私が預かっていた。その後東京での学生生活でなんどか引越し、社会人として何回か引っ越すたびに100枚のLPと専用ケース(これがとてつもなく重い)は全国を転々としてきた。が、一度もこれらのレコードは聴かれることがなかった。正確にいうとたった一度針を落としたけれど、クラシック音楽に興味がなかった若いときには、ぜんぜんつまらなくて箱に戻したのだった。

 おっさんになって、最近「おお、そういえばこのシリーズがあった」とおもって、二枚組みになっていた、グスタフ・マーラーの交響曲第5番というものをかけてみた。
 ぶっ飛んでしまった。
 この迫力、繊細なハーモニー、100年も前に作曲されたとは思えない斬新なテーマ、逆に最近の音楽の要素の源がちりばめられている。部屋の空気を震わせるくらいぎりぎりまで音量を上げる。音符の渦に包み込まれてしまう。レコードプレーヤーもスピーカーもやっと本当の仕事をしているぞといわんばかりに音を奏でる。
 しびれた。
 鬼の霍乱のような偶然の出来事に、新鮮な感動を受けることが出来た。

 ああ、そういえば本当は今夜、ウィーンでウィーンフィルハーモニーを聴いていたかもしれなかったのだ。