土屋龍一郎のブログ

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グレンファークラス

2006-02-01 00:23:41 | Weblog
 京都で「グレンファークラス(glenfarclas)」のとっても珍しいボトルのシングル・モルトウィスキーを飲んだ。
 先斗町(ぽんとちょう)の細い路地の狭い階段の突き当たりにある、「club dessert」というバーへは1994年ごろ偶然に飛び込みで入ってから、毎年1月の第3週に立ち寄る。マスター一人でつまみも食事もない、本当のバーだ。ビクターラズロに同じ名前の名曲があったけれど関係あるのかどうか知らない。いつも尋ねようと思って忘れる。もしかするともう尋ねたかもしれない。
 この写真を長野のバーRITAの増田さんに見せたら、「これはもう最近のものと全然違う世界のお酒です」とおっしゃっていた。味もこの世界のものとは思えなかった。何しろアルコール臭さとお酒本来のコクが渾然一体となっていて舌と口の中でくるりと回るのだ。1時間半かけて一杯のお酒を飲んだ。その間ずうっとシングルモルトのコレクターの写真集なんかを見せていただきながら楽しんだ。(それくらい居座っても怒られないくらいの品格と値段だった。)
 村上春樹氏の「もし僕らの言葉がウィスキーであったなら」という、題名からして少し酔っぱらってつけたようなアイルランド/スコットランドの紀行文がある。ここに出てくる奥さんが撮った写真を見るとこの国は緑と水が豊かなのに寒々としている。シングルモルトを飲む時はバーボンみたいに騒ぐ気持ちにならない。それはこの寒々とした景色が濃いウィスキーの色にとけ込んでしまっている、魔法が効いているせいだろう。