【人生をひらく東洋思想からの伝言】
第36回
「大祓詞(おおはらえ・おおはらい ことば)」
大祓詞は、神道の祭祀に用いられる祝詞の一つで、
日本で最も古い祝詞(のりと)がいくつかある中のひとつですが、
この祝詞だけがいまだにずっと唱え続けられ、全国の神社で毎日唱えられています。
日本人は、共生(きょうせい)という生き方で自然と一つになってきた民族ですから、
この共生という生き方で相手とひとつになる。そういうところから、
自然の知恵がそのまま脳の中に伝わり、それがそのまま言葉になってできた、
世界でも特異な言葉でないかと思います。
古来より、日本語の事を、日本の原点の言葉という意味で、
「大和言葉(やまとことば)」という表現をしております。
この大和言葉の基本は、「あ、い、う、え、お」の一言ずつに意味があるということです。
例えば、大和言葉で昔、「にほん」とは言いませんでした。
「とよあしはらのみずのくに(豊葦原瑞穂国)と言っていました。
アシが茂って、お米がよくできる国ということです。
こういう言葉で日本の国を表現する。
ですから、単に「にほん」と言うのではなく、
日本というものはどういう国なのかということを表現して、
日本を表そうする。これがいわゆる大和言葉の原点なのです。
ですから、「おおはらい」というと、今は「祓」という難しい字を書きますが、
本来の日本語は「はらい」という仮名です。
「は」というのは、生まれるという意味です。
「は」を二つくっつけたら、「はは」、お母さんになりますし、
木の葉の「葉」も「は」ですよね。
「葉」というのは、われわれが出す二酸化炭素を酸素に生まれ変わらせるものですね。
ですから、「は」というのはい、生まれるという意味でしょう。
「ら」というのは、「君ら、ぼくら」の「ら」で、たくさんという意味です。
「い」というのは、「いのち」です。
ですから、「いのちがたくさんうまれる」ということが、「はらい」の本来の意味なのです。
しかし、なかなか漢字の「祓」の意味から考ええると、本当のことがわからなくなります。
まさに、北風と太陽の物語ではないですが、無理やり除去しようとするのではなく、
太陽の素晴らしいエネルギーを与えれば、覆い隠しているものが自然に脱がされていくということです。
罪や穢れというのは、神道の世界ではすべて我欲の表れと言われています。
神様がくれた素晴らしい人間の姿を包み隠してしまう罪(包む身)。
われわれを生かしている神様の尊い気を枯らしてしまう穢れ(気枯れ)。
まさに神様の素晴らしい力やエネルギーをいれることで、いのちが蘇ってくる。
それが「祓い」だと日本の神道では伝えています。
私の母方のご先祖様に、神主だった方がいまして、自然とその遺伝子があるのか、
神道は物心ついたころから興味を持っていました。
まさに、日本の自然から育まれた知恵であり。叡智ですね。
そういう教えをお互いに分かち合っていきたいものです。
参考 (『大祓知恵のことば』 葉室頼昭著 春秋社)