風に吹かれ、淡い色の花弁がハラハラと散る。
「まるで…雪のようですね」
緑の髪の奥の青い瞳が細められる。
その傍らで鳶色の瞳が柔らかく微笑む。
「さくらふぶき って言うんだよ。」
「サクラ…フブキ?」
「そう。
桜の花の散る光景を、雪が降る様子に例えているんだ。」
「…本当に雪のようですね。」
ロゼの呟きにタケルがそっと頷く。
「俺は…」
タケルの声音が少し深い色を帯びる。
「…雪はあまり好きじゃないんだ。」
その声にロゼがタケルを振り向く。
「雪は…哀しい…」
刹那。
ロゼの脳裏に一瞬よぎる光景。
雪の中に倒れていく緋色の外套をまとった女性が。
白い大地で碧い瞳を閉じていく緑の髪の少年。
「ごめんなさい。私…。」
「…俺の方こそすまない。君に思念が流れ込んでしまった…。」
瞳を伏せてしまったロゼを宥めるように、タケルが寄り添う。
「でも。
今は俺は一人じゃない。」
伏せられたロゼの瞳が瞬き、タケルを見つめる。
「俺にはいつも傍にいてくれる人がいるから」
そう言ったタケルの視線がロゼから離れ、眩しい光を見るように細められる。
「君と…桜を見られて良かった。
春を迎えられて良かった。」
穏やかなタケルの声に、ロゼが小さく頷いた。
「タケルさーん!」
桜吹雪の向こう側から声がかかる。
「タケルっ!遅えーよ!早く来いって!」
「そうそう、タケルとロゼが居なくっちゃ。今日の主賓なんですもの。」
「小母さんの弁当、旨そうだよー♪」
仲間達の声がタケルとロゼを招く。
その声に、2人は顔を見合わせクスリと笑った。
「すぐ行く!」
タケルの声が青空に届くように爽やかに響いた。
*****************************************************************
あとがき。
桜吹雪の中に立つ、タケルとロゼ。
すっごく久しぶりに地球に帰って来たら、桜の時期だったと。
雪を思うと切なくなってしまうタケルですが。
今はもう大丈夫。
ロゼがいますもんね。
このお話は、震災後に自分の心の平衡感覚を取り戻そうとして書いたものです。
今年は桜を愛でる余裕が無い方達も多いでしょう。
そんな方々も、いつか、桜を愛でる時が来ますように。と、願ってやみません。
「まるで…雪のようですね」
緑の髪の奥の青い瞳が細められる。
その傍らで鳶色の瞳が柔らかく微笑む。
「さくらふぶき って言うんだよ。」
「サクラ…フブキ?」
「そう。
桜の花の散る光景を、雪が降る様子に例えているんだ。」
「…本当に雪のようですね。」
ロゼの呟きにタケルがそっと頷く。
「俺は…」
タケルの声音が少し深い色を帯びる。
「…雪はあまり好きじゃないんだ。」
その声にロゼがタケルを振り向く。
「雪は…哀しい…」
刹那。
ロゼの脳裏に一瞬よぎる光景。
雪の中に倒れていく緋色の外套をまとった女性が。
白い大地で碧い瞳を閉じていく緑の髪の少年。
「ごめんなさい。私…。」
「…俺の方こそすまない。君に思念が流れ込んでしまった…。」
瞳を伏せてしまったロゼを宥めるように、タケルが寄り添う。
「でも。
今は俺は一人じゃない。」
伏せられたロゼの瞳が瞬き、タケルを見つめる。
「俺にはいつも傍にいてくれる人がいるから」
そう言ったタケルの視線がロゼから離れ、眩しい光を見るように細められる。
「君と…桜を見られて良かった。
春を迎えられて良かった。」
穏やかなタケルの声に、ロゼが小さく頷いた。
「タケルさーん!」
桜吹雪の向こう側から声がかかる。
「タケルっ!遅えーよ!早く来いって!」
「そうそう、タケルとロゼが居なくっちゃ。今日の主賓なんですもの。」
「小母さんの弁当、旨そうだよー♪」
仲間達の声がタケルとロゼを招く。
その声に、2人は顔を見合わせクスリと笑った。
「すぐ行く!」
タケルの声が青空に届くように爽やかに響いた。
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あとがき。
桜吹雪の中に立つ、タケルとロゼ。
すっごく久しぶりに地球に帰って来たら、桜の時期だったと。
雪を思うと切なくなってしまうタケルですが。
今はもう大丈夫。
ロゼがいますもんね。
このお話は、震災後に自分の心の平衡感覚を取り戻そうとして書いたものです。
今年は桜を愛でる余裕が無い方達も多いでしょう。
そんな方々も、いつか、桜を愛でる時が来ますように。と、願ってやみません。